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別れのあいさつ ---- ぐすぐすと泣きじゃくるアキをなだめるのは、これで何度目だろう。 「泣くなよ、アキ」 「シュウちゃぁん」 あぁ、本当に昔から変わらない。図体ばかり大きくなっても、中身はいつまでも泣き虫のままだ。 のしかかるように抱き着いてくるアキの背を、ぽんぽんと叩いてあやす。 「泣くなって。もう十七だろう?」 「だって、だってシュウちゃん。もう、会えないなんて、やだぁ」 既視感を覚えるのは、これが二度目の別れだから。だけど今度のはあの時と違って、もう二度と会うことはない。 鼻の奥がつんと痺れて、俺はアキの背をぎゅっと掴んだ。 「アキ。あの時俺が言ったこと、覚えてる?」 「え…?」 身体を軽く離して、アキの顔を覗き込む。 「今生の別れの時ですら、別れの言葉は再会を約束している。そう言ったよね」 アキ、俺はね。十年前のお別れの時、またお前に会えるなんて、思いもしなかったんだ。 だから、お前と再び会えて、お前と恋ができて、お前と愛を交わせて。それだけで、充分なんだよ。 「また、会えるよ」 例え、生きて会うことは叶わずとも。 「シュウちゃん」 「愛してるよ、アキ」 大切なアキ。大好きなアキ。俺の、生涯ただ一人の、愛しい泣き虫。  次は、神様のもとで。 囁いて、キスをして、一歩下がって。 俺は逃げるように、アキに背を向けた。 ----   [[割れても末に逢わんとぞ思う。>4-989]] ----
別れのあいさつ ---- ぐすぐすと泣きじゃくるアキをなだめるのは、これで何度目だろう。 「泣くなよ、アキ」 「シュウちゃぁん」 あぁ、本当に昔から変わらない。図体ばかり大きくなっても、中身はいつまでも泣き虫のままだ。 のしかかるように抱き着いてくるアキの背を、ぽんぽんと叩いてあやす。 「泣くなって。もう十七だろう?」 「だって、だってシュウちゃん。もう、会えないなんて、やだぁ」 既視感を覚えるのは、これが二度目の別れだから。だけど今度のはあの時と違って、もう二度と会うことはない。 鼻の奥がつんと痺れて、俺はアキの背をぎゅっと掴んだ。 「アキ。あの時俺が言ったこと、覚えてる?」 「え…?」 身体を軽く離して、アキの顔を覗き込む。 「今生の別れの時ですら、別れの言葉は再会を約束している。そう言ったよね」 アキ、俺はね。十年前のお別れの時、またお前に会えるなんて、思いもしなかったんだ。 だから、お前と再び会えて、お前と恋ができて、お前と愛を交わせて。それだけで、充分なんだよ。 「また、会えるよ」 例え、生きて会うことは叶わずとも。 「シュウちゃん」 「愛してるよ、アキ」 大切なアキ。大好きなアキ。俺の、生涯ただ一人の、愛しい泣き虫。  次は、神様のもとで。 囁いて、キスをして、一歩下がって。 俺は逃げるように、アキに背を向けた。 ----   [[「ともだちなのにおいしそう」>4-979]] ----

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