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やっぱすきやねん ---- 「やっぱすきやねん」 一体、今度は何ですか。 いつものようにフローリングに正座し、無表情で年末年始お約束のお笑い特番を見ていた奴が急にこちらを向き、 人の両足首をクソ冷たい両手でガッシリ掴みながら、嬉々として繰り返す。 「やっぱすきやねん」 「何ソレ」 ちょっと動揺してしまったのを隠すために、奴が掴んだままの足を閉じる。 と、奴はバランスを崩したらしく俺の膝に額を強打した。やっぱアホだ、こいつ。 ―――って、なんかこっちもじんじんしてきたじゃねーか!アホ!! 2人で悶絶していると、付けっ放しのテレビからちょうどいいタイミングでお笑い芸人が「いってーー!」と叫んでいた。 芸人たちの気持ちがわかるのが、なんだか妙に悔しい… なんでこいつはクスリとも笑わないクセにいつもお笑い番組を見てるんだ。 今見てたのが『なんじゃこりゃああーーー』とかだったらヒーロー気分を味わえたのに。CMでしか見たことないけど。 「………やっぱすきやねん」 お前涙目の上、額真っ赤だぞ。 そんな状態で言うことか? 「………だから、何なんだよ、ソレ」 そんな頑張り見せられたら、俺も答えなきゃいけない気がするじゃないか。 ぜってー俺も涙目になってるぞ。 「うわあお!成功!?むちゃくちゃ成功じゃない??」 「ああ?………てめえ、わざとやったのか………」 「もちろん!わざとわざと!!」 奴は瞳を輝かせて満面の笑みで大騒ぎだ。まあ、目がキラキラして見えるのは痛みのせいかもしれんが。 つか俺が涙目で痛がっているのがそんなに嬉しいのか。 この赤デコを黙らすのに、コレで軽くぐらいなら平気だろうと、傍にあった酒瓶(中身入り)に手をのばしたところで アホの発したわけのわからない言葉が耳に飛び込んできた。 「そんな感動してもらえるなんて嬉しいなあ!すげーや、関西弁!!」 何言ってんですか、このアホは。 俺らの間に必要だったのは翻訳こん〇ゃくだったとか、そんなオチですか。 「関西弁が、何だって?」 「いやーさすがだなって!関西弁様様だよね!」 「だから、関西弁のドコがさすがで、様様だって?」 「だってすげーじゃん!一言でお前を涙が出るくらい感動させるなんて!」 そうだ、こいつはアホだった。 なんだか脱力してしまい座っていたソファに倒れこむ。 奴が俺の首筋に顔を寄せてきたので、奴の赤デコを押さえて引き離した。 「痛い痛い!なんでー!?こんないいムードなのに!!」 「どこがだよ!」 「だってお前は俺の愛の言葉に感動して目うるうるさせてるし!ねっころがってるし!!」 「あー、ハイハイ。お前がアホなのはわかった。で、なんで関西弁だって?」 「アホって失礼だなー。………ダチが、関西弁最高!って。関西弁にしびれない男はいないって。」 ああ、言った奴が思い浮かぶ………。 類は友を呼ぶって言葉を納得させてくれたアイツね。 「アイツさあ、誰が関西弁話してるのがいいって?」 「え?ええーと。………んん?」 「可愛い女の子が、とか言ってただろ」 「………なんてこった。」 こっちのセリフだよ。 普通そっちに重点置くだろうよ。そこを忘れるか、このアホは。 「なんてこった!せっかく大好きなNH●我慢して、つまんねーお笑い番組見て関西弁を研究したのに!」 なんてこった。 なんだ今の言葉は。 俺の為に、アホみたいにN●K大好きなお前が、ソレ我慢したって? 恋は盲目ってホントなんですね。 なんか胸にズカーンときちまったよ! 「マ、マスターしたとか言って一言かよ。つか、いきなり『やっぱ』っておかしいだろ」 ぐあ!声に動揺が! 吃るな俺!赤くなるな俺!! 「ああ、そうかも。『ずっと』すきやねん、『何よりも』すきやねん、『永遠に』すきやねん、とかのが一言目にはいい?」 なんなんだ、このアホは。 俺を動揺死させる気ですか。 ああ、耳が熱い。 ----   [[別れのあいさつ>4-969]] ----

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