「4-829」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

4-829」(2010/10/21 (木) 13:40:42) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

お前の小さな台所で寝かしてくれ ---- 夜中に喉が渇いて目が覚めた。 積まれた本の隙間、かろうじて床が見える場所を選んで歩き、台所へ向かう。 毛布にくるまった物体につまづきかけて、口の中で「おっと」と呟いた。 三畳程度しかない狭い場所に、無理矢理長い体を折り曲げて眠っているのは、中学時代の同級生だ。 (何でわざわざこんなところで寝るかなぁ) もちろん、本がみっしり詰まった1DKの安アパートで、人が寝られる場所はここしかないから、だが。 (家に帰りゃいいのに) 寝入る客をまたぐようにして、水道からコップに水を汲む。 よっぽど疲れているのか、足の間にいる男は目を覚ます気配すら見せない。 こんなところで良く眠れるもんだと、そろそろと足を引っ込めながらため息をついた。 別に付き合いが深かったわけではない。 母親が女優だかモデルだかで、見た目も育成史もひときわ注目の的だったこの男は、同じクラスというだけの関係だった。 それが同窓会で顔を合わせた日、「泊めてくれ」といきなり言い出したので驚いた。 寝るとこないよ、寒くて小さい台所くらいしか。それでいい。 そんな会話の後、本当にこの男は家にやって来て、台所で眠って、何を話すわけでもなく帰って行った。 それからちょくちょく同じことがあり、今ではもう、合鍵を渡して、勝手に来て寝ていけばいいと言ってある。 (何かに似てると思ったら、あれだよ。半野良猫。ふら~っと来てふら~っと帰ってくアレ。血統書つきの半野良ってのも何だけど) 昔家に来ていた猫も、台所で眠ってたなぁと思いながら、男の頭を撫でてみる。 さらさらした髪は、やっぱり猫の毛より固かった。 彼は気付いていない。派手な見た目とうらはらに奥手なこの元同級生が、10年越しの片思いを抱えてひたすら寝たふりを続けていることに。 ----   [[跡継ぎ×父の代から仕えている彼>4-839]] ----

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: