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でかいチワワ ---- フウ…と溜め息を付きながら 体育祭の喧噪を逃れオレはひと気のない校舎裏へ来た。 原因はさっきの仮装リレー。 受け狙いの競技のくせに、以外と得点が高いこの競技。 秘密兵器のアンカーとして送り込まれたアイツは凄かった。 なにせ可愛らしいぶかぶかのチワワの着ぐるみが 他のクラスの特撮ヒーローやら忍者やら海賊やらをごぼう抜きにして ぶっちぎりの1位でゴールしたんだから。 そのあと、着ぐるみの頭の部分をハズして「やったぜっ!」って手を振ったアイツの笑顔。 クラスの皆でそれを喜びながらも、オレは複雑だった。 そんな笑顔を、他の奴らに見せてほしくない。 これ以上、注目されてほしくない。 なんだかいたたまれなくなったオレは、逃げるように校舎裏へとやってきた。 ようやく少し落ち着いたとき、いきなり後ろからどつかれた。 「…ってぇ、何だよっ!」 半ば八つ当たり気味に怒鳴りながら、振り返ってみて驚いた。 そこには、まだ下半身だけ着ぐるみを着たままのアイツがいた。 背はオレよりも少し高いし、そこそこ筋肉もついてる。 でなければ、こんなものを着てあんなに早く走れるわけがないだろう。 想いが叶わないのに、男としても負けているというのがまた悔しい。 「…ずいぶんでかいチワワだな」 悔しいから精一杯のイヤミを言ってみたが、まったく通じなかった。 「ふふん、見たかオレの勇姿を。ってかおまえ、せっかくのオレの勝利を祝ってくれないのかよ」 「別にクラスみんながさんざん祝ってたじゃねえか」 「みんなじゃなくて、オレはおまえに祝って欲しかったんだけどな~」 「!」 うそだ。 こんな都合のいい展開があるわけがない。 ただの言葉のアヤで特別な意味ではないんだと、必死で自分に言い聞かせる。 驚きで言葉を返せないでいると、アイツが悪戯っぽい目で笑った。 「おーい、聞こえてるか。こないだオレが1位とったら何でもおごってくれるって言ったよな?」 「…覚えてたのか」 「あったりめーだろうが。その為に頑張ったんだから」 やっぱりな、そんなことだろうと思った。 けどまあ、約束を覚えておいてくれただけでもよしとしよう。 「仕方ねえな、何がいいんだよ」 「オレ、ずっと前から欲しかったものがあってさ」 「え?」 次の瞬間、オレの唇はアイツの唇で塞がれていた。 ----   [[ゲームに夢中で話を聞いてくれません>19-729]] ----

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