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あいつなんかより俺を選べよ
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体育くらいしか取り得の無い俺でもこの時期は辛い。
昼飯前の空腹と蒸し暑さで頭がフラつく。
だけど俺の顔色が冴えないのはそのせいばかりでもない。
「二人組みで柔軟してそのままパスの練習」
いつも通りの教師の言葉で俺の視線は勇樹を探すが、彼の視線は他の所に向いている。
「佐々木、組もうぜ」
クラスでも目立たない、口数も少ない佐々木がどこか居心地悪そうに頷いている。
勇樹は子供の頃から正義感が強くて人が良い。
一人で孤立している奴がいると放っておけないくらいに。
そろそろ授業が終わる頃、
運動音痴の佐々木がボールを取り損ねて派手に転んでいた。
俺は心の中でざまあみろと呟いた。
吐き気がする。
そんな自分にも、誰にでも優しい勇樹にも、ボールを取り損ねた佐々木にも。
「お前、熱あんじゃね?」
わざわざご丁寧に佐々木を保健室まで連れて行き、
昼飯を買いそびれたお人好しが俺の残した弁当を頬張りながら覗き込む。
「へーき」
そう答えた声はかすれていた。
そうか俺は体調が悪いのか。
弁当を半分残したのも、佐々木に意地悪な気持ちになるのも
勇樹にイライラしてるのも全部体調が悪いからなのか。
「またエアコン付けっぱなしで寝てたんだろ」
「うるせー」
「ま、お前は健康だけが取り得だもんな」
「それより帰りにどっか行かね?」
「うーん、どうしようかな」
「何か予定あんの?」
「いや、佐々木が足挫いただろ?悪そうなら送ってやんなきゃと思ってさ」
「何でお前が?」
「だって怪我させたの俺だしさ、ちょっと心配じゃん?」
「勝手に転んだんだろ?ガキじゃねーんだから放っておけよ」
「まあ、そう言うなよクラスメイトじゃん」
俺だって具合悪いんだけど。
その言葉を飲み込んで机に顔を伏せた。
気付いて欲しい。心配して欲しい。一緒に帰りたい。
今日くらい、あいつなんかより俺を選べよ。
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[[親友を好きなAとAを好きな親友の彼女>19-319]]
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