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ペットボトルと缶
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私はペットボトル。
何回もリサイクルされてるから場数は踏み慣れてるが、昨日飲み干された私は誤ってアルミ缶のゴミ箱に捨てられた。
『んだぁおめー。来るとこ間違ってんでねえのか』
『ここは…貴方は?……ぷっ。ああ、持ち運ぶにも不便な私の先駆者様方でしたか』
周り中に転がる缶の群れ、群れ、群れ……そこからが地獄の始まりだった。
「あああっ……嫌だ………もう嫌だぁ…止めてください………っ!!」
「だとよーおめーら。石油系は軟弱な上に綺麗好きでいけねーな」
「そうっすねえ大将」
「……あヒっ!」
リーダー格だろうその赤い缶の言葉に、上から下から、周りの缶が私にのし掛かってくる。
言葉通り軟弱な私の体はそれだけで押し潰されてしまう。
「ペットボトルさんよ。俺達ぁ容器だぜ?蓋なんか開けっぱなしでなんぼだろうが」
赤い缶が笑う。
「なーんも不自然じゃねぇ。おめーみてーに始終蓋着いてるのが正しいわけじゃあねーのよ」
……ダメだこの顔は……まただ、また来る……!
「うわあああああ!!!」
周りの缶は一斉に開きっ放しの飲み口から、かすかに残った夏場に異臭を放つ醜悪な液体を私の全身に注いだ。
昨日から新入りが来る度にこうして汚され
、透明だった体は今や何色だったのか判別出来ようもない。
「おっ新入り早速入ったみたいだぜー。じゃ、第二波いっきまーす」
「いっ、やっ、止めてくれえ!!休ませ…………っ」
「……誰がそんな口きいていいっつった?」
「ぐッ!」
その覇気に、最早潰れた体が更に萎縮する。
いや違う。事実更に押し潰されているのだ。何かしらの意図を持ってのことなのは明白。
「今ので気が変わった」
体が萎み、蓋が弛む。それは則ち、マズイ。マズイ所ではなくマズイ!!!
「次は、おめーの中にぶっ放すことにする」
――先駆者を侮ることは、ここまでに罪が重いのか?
必死に隣に設置されたペットボトル専用ゴミ箱を見ようとするが。アルミの壁を透かして外を見ること叶わず。
「た…たたたた助け………うあぁぁぁぼぐうぼぼごおおっ…かはアっ!」
「ほらほらどうした。オレらよりもよっぽど容量あんだろ?」
「ぐうう!」
私を飲み干した男児よ。
私が貴方に何をした。
ペットボトルが次のゴミ収集日に正しく分別されるまで、あと五日。
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[[ペットボトルと缶>19-209-1]]
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