「19-149-1」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

19-149-1」(2010/08/23 (月) 10:44:04) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

俺の方が好きだよ! ---- 「あ、猫!」  俺の隣を歩いていたツレが、突然足を止めて声を上げた。  振り返ると、道の隅に丸くなってまどろむキジトラの猫。  ツレは猫から1m程離れたところにしゃがみこむと、猫に向かって手を伸ばし、ちちち、と舌を鳴らした。  それに気付いた猫が目を開け、億劫そうにツレを見上げる。 「エサもねぇのに、野良猫が寄ってくるわけ……」  言いかけた俺の言葉が、途中で切れた。  のっそりと起き上がった猫がツレに歩み寄り、ふんふんと手の匂いを嗅いだ後、その掌に顔を擦り寄せる。 「うわー、かわいい。人に慣れてるんだね」  満面の笑みを浮かべるツレと、その手に撫でられて満足そうに目を閉じている猫を見て、ただ呆然。  いやいやいや、ねぇから。  学校の行き帰りに何度も見かけたその猫を、俺が何回撫でようとしてシカトこかれたと思ってんだよ。  最後の手段と煮干を用意した時ですら、煮干だけ食って一度も触らせてくんなかったっつーの!!  畜生、俺が嫌われてただけかよ。 「……お前、猫に好かれるんだな」 「うん。動物には懐かれるんだよね。人間には全然好かれないのに」  さりげなく言われた台詞に、なんかムカついた。  なんだそれ、どういう意味だよ。 「僕も、動物に生まれればよかったかもね。……ん? お前も僕のこと好き? 僕もお前のこと、好きだよ」 「ざけんなよ! そんな猫より、俺の方がお前のこと好きだよ!!」 「え?」 「……え?」  自分で言った台詞に、自分で驚いた。  ツレも、驚いた顔で俺を見上げてる。  え? 俺今、なんかとんでもねぇこと言わなかったか?  互いに顔を見合わせて、数秒。  ツレが猫へと視線を戻す。 「……ふぅん」  そしてまた、止まっていた手を動かして猫を撫で始める。  撫でられた猫は、ゴロゴロと喉を鳴らした。  おい、それだけかよ。  無意識とは言え、一世一代の告白だぞ。  つーか、言うつもりなんてなかったのに。  猫に焼餅焼いて告白なんて、すっげぇかっこわりぃ。  そのまま何も言わないツレに腹が立ってきて、このまま置いて帰ろうかと思ってふと見ると、髪から覗く耳が赤くなっているのに気付いた。 「……そうなんだ。……ありがと」  小さく呟かれた言葉に、そっとツレの顔を覗き込む。  慌てたように逆の方を向いたけど、しっかり見えた。  赤い顔で、嬉しそうに笑うお前の顔。  なんだよ、もしかしてお前も俺のこと好きなのかよ。  段々と、俺の顔も赤くなっていくのが自分でわかった。  あー、なんかすっげぇ情けねぇ。  こんな道端で、勢いで告白なんかしちまって。  でもまぁ、なんか上手くいきそうだし、結果オーライってヤツ?  なぁ、お前もいつまでも猫なんか構ってないで、俺の方を向いてくれよ。 ----   [[優しい手 >19-159]] ----

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: