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俺の方が好きだよ! ---- セフレだったはずだ。 次の恋までの繋ぎ、俺も、向こうも。それがいつからこうなったんだろう。 体をつなげた後の、なんとなく別れがたい気持ち。 ぐずぐずとベッドの上からバスルームへ、体を拭いて着替え、キッチンへ。 今までなら、奴はシャワーを浴びたら、脱ぎ捨てた服をまた身に付け、「じゃあな」と言ってドアの向こうへ消えた。 今はキッチンで俺と一緒に、食事の用意をしている。 和食党の奴に合わせて、米を炊いて、魚を焼き、大根のみそ汁を作る。 奴は時々俺の背後から抱きつき、顎を肩に乗せてただ黙って俺の手を覗き込んだりする。 これではまるで、恋人同士のようだ。俺は少なからず動揺する。 好きという気持ちがあるのかどうかすら覚束ないのに、背中の温かみに胸が締め付けられるような気がする。 「案外手つきいいな」 奴が感心したように、耳元で囁く。 「居酒屋バイトを舐めんなよ」 言った途端、耳を舐められ、肩をすくめる。背中を電流のようなものが走る。 「舐めちゃった」 「バカ、危ないって」 「なあ」 「なに」 「俺たち、ちゃんと付き合わねぇ?」 「好きでもないのに?」 「好きじゃないの?」 「……」 「俺が他の奴とこうやってる所想像してみろよ」 想像してみる。……胸がぎりっと痛む。 「な? 俺はお前が好きだよ。俺のこと好きだろう?」 「…うん」 「こっち向いて」 体の向きを変えたら、キスされた。そう言えば、初めてのキスかもしれない。胸が震えた。 そうか、好きってこう言う気持ちだったのか。痛いような、泣きたいような、苦しいような。 身体の繋がりの方が先だったけれど、こう言う恋の仕方もあるのだ。知らなかった。 それならば、たぶん、俺の方が好きの度合いが大きい。 奴の顔は嬉しそうに笑っていて、俺の視界は、落っこちそうな涙で歪んで見えるから。 ----   [[俺の方が好きだよ!>19-159-1]] ----
俺の方が好きだよ! ---- セフレだったはずだ。 次の恋までの繋ぎ、俺も、向こうも。それがいつからこうなったんだろう。 体をつなげた後の、なんとなく別れがたい気持ち。 ぐずぐずとベッドの上からバスルームへ、体を拭いて着替え、キッチンへ。 今までなら、奴はシャワーを浴びたら、脱ぎ捨てた服をまた身に付け、「じゃあな」と言ってドアの向こうへ消えた。 今はキッチンで俺と一緒に、食事の用意をしている。 和食党の奴に合わせて、米を炊いて、魚を焼き、大根のみそ汁を作る。 奴は時々俺の背後から抱きつき、顎を肩に乗せてただ黙って俺の手を覗き込んだりする。 これではまるで、恋人同士のようだ。俺は少なからず動揺する。 好きという気持ちがあるのかどうかすら覚束ないのに、背中の温かみに胸が締め付けられるような気がする。 「案外手つきいいな」 奴が感心したように、耳元で囁く。 「居酒屋バイトを舐めんなよ」 言った途端、耳を舐められ、肩をすくめる。背中を電流のようなものが走る。 「舐めちゃった」 「バカ、危ないって」 「なあ」 「なに」 「俺たち、ちゃんと付き合わねぇ?」 「好きでもないのに?」 「好きじゃないの?」 「……」 「俺が他の奴とこうやってる所想像してみろよ」 想像してみる。……胸がぎりっと痛む。 「な? 俺はお前が好きだよ。俺のこと好きだろう?」 「…うん」 「こっち向いて」 体の向きを変えたら、キスされた。そう言えば、初めてのキスかもしれない。胸が震えた。 そうか、好きってこう言う気持ちだったのか。痛いような、泣きたいような、苦しいような。 身体の繋がりの方が先だったけれど、こう言う恋の仕方もあるのだ。知らなかった。 それならば、たぶん、俺の方が好きの度合いが大きい。 奴の顔は嬉しそうに笑っていて、俺の視界は、落っこちそうな涙で歪んで見えるから。 ----   [[俺の方が好きだよ!>19-149-1]] ----

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