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手が触れた ----  携帯が鳴ってる。俺のじゃない。こんなセンス悪い着メロ、断じて違う。 「あ、奥さんからだ」  何だっけな、メロディ。聴いたことあるぞ。  ていうかお前、自分の母さんを奥さんって呼んでるのかよ。 「メール?」 「うん。仕事が終わったから帰るよって」 「仲いいな」 「だろう」  ふふん、と得意気に笑う。マザコンか、こいつ。  違うな。多分母親思いなんだろうな。こいつの口から父親の話なんて出てきたことがない。  だから、きっとこいつの家庭は…。いや、やめとこ。  ぱちん、と携帯を閉じる音。返信はえーな、おい。 「お前さん、夏休みに入ったら何をするのかね?」 「何だよ、その口調は」  呆れた。 「いいじゃないの教えなさいよ。母さんとあんたの仲でしょ」 「誰が親子だよ。同い年だろ。電車来るぞ」 「はい、黄色い線の内側に下がりまーす」  手をぴしっと上げて宣言する姿は、選手宣誓のようだ。 「でも何で黄色い線って言うんだろうな? 俺の目には点字ブロックに見えます」  うるさい、黙って降りる人に道を譲りなさい。 「お前、あの着メロ何?」 「お、俺のセンスに驚いて感動してる?」 「俺の発言のどの部分を聞いてそんな言葉が出た?」  この時間、町の中心から離れる電車の中はガラガラだ。  だからと言って俺たちの他に誰もいないって、切ない。 「昔子供向け番組で流れてたの。俺のお気に入り」 「お前、マイペースすぎんだろ。それが学校で流れたら爆笑もんだぜ」 「俺、最近の流行とか知らんわ。興味ないし」  何よ、何が流行ってんのよ、教えてごらんなさいな。  おいこら、何で迫って来るんだよ。仕方ねぇなあ。 「じゃあ、俺の携帯に入ってるの聴かせてやるよ」  ポケットから取り出して、操作する。  これこれ、とボタンを押そうとした手に、手が触れた。止められた。 「優先席付近では電源を切るかマナーモード!」  お前周り見える? 俺とお前の二人で、誰もいないんですけど。 「皆様のご協力をお願いいたします!」 「……分かったよ」  携帯をポケットに入れて、ため息をついた。  で、何でお前こっち見てんの。 「お前の手、ごつごつしてんのな。奥さんのとは違うわー。やっぱ男だね」  何だそりゃ。ああ、そっか。お前んちやっぱ…。  ちょっと可愛いとか思っただろ。どうしてくれんだ。 ----   [[好きな人に似た人>19-139]] ----

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