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「ん?」 ---- 「なーなー、聞いてんのかよ」 「ん?」 「だから!明日の最終の夜行列車!発車時刻はわかってるよな?」 「ん」 「なにその適当な返事。ホントにわかってる?」 「最終」 「そうだよ最終列車だよ!でもなんか今の言い方ですげー不安が増した!逆に!」 「ん?」 「今の、耳に入ってきた単語を適当に繰り返しただけだろ?アンタやる気あんの!?」 「ああ」 「その『ああ』はどっちへの『ああ』だよ!」 「後者」 「本から目ぇ離さずに言われても、全然説得力ねーんですけど!?」 「ああ」 「だから『ああ…』じゃねえっつーの!自覚してるんなら改善しようぜ改善!」 「ん」 「心こもってねえ……いいやもう。とにかく!明日の最終の夜行列車だからな!」 「ん」 「発車時刻は二十二時、五十三分!脳髄に刻み込めよ!?」 「ん」 「あーもー…知ってるけどな!アンタの性格が万事柳に風だって!くそー。……その本、面白いかよ」 「ああ」 「ほんっと、いつもいつでも、動じねえよな。……ったく」 「……」 「……なあ。アンタが三度の飯より何より本が好きなの、よーく知ってるけどさ」 「ん」 「そうやって、でもちゃんと俺の話聞いてくれてるのも、わかってるけどさ」 「……ん?」 「わかってるけど、やっぱ不安になるんだよ……なってもいいだろ、こればっかりは」 「……」 「明日の、最終の夜行列車」 「……」 「一度きりなんだ。失敗したら次は無い。わかってるのかよ」 「……ああ」 「やっと顔上げやがった。おせえよ、バカ」 「分かってる」 「本当にわかってんの?捕まったらアンタもタダじゃ済まない」 「分かっている」 「風に逆らうどころか立ち向かう柳の木なんて、聞いたことねえよ」 「そうだな」 「……。ここの本、全部置いてって平気なのかよ……本の虫の癖に……」 「構わない」 「本当に?」 「ああ。明日の最終の夜行列車、二十二時五十三分発」 「うん」 「必ず駅で待っているから」 「……ん」 「大丈夫、私達はずっと一緒だ」 ----   [[手が触れた>19-129]] ----

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