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<p>ピアノとチェンバロ</p>
<hr /><p>彼はとても淡々としている。<br />
いつも静かに、黙々と自分の仕事をこなしている。<br />
周りは彼を「いつも同じ調子」「無表情でつまらない」「愛想が無い」と言う。<br />
でも俺は知っている。<br />
彼の内面が本当はとても複雑で繊細だという事を。彼が音楽をどれほど愛しているのかという事を。<br /><br />
だから「君の方が彼より優秀だ」と言われる度に、俺はどうしようもなく苦しくなる。<br />
そんなことはありませんと言い返しても、周りは「君は優しいな」と笑うだけだ。<br />
違う。俺は優しくなんかない。<br />
彼を舞台から追いやったのは周りの皆ではない。他でもない、俺だ。<br />
俺が彼から光を奪ってしまったのだ。<br />
きっと、彼は俺を怨んでいるだろう。許しを請う資格は俺には無い。<br /><br />
それでも。<br />
それでも、この名を誇る事だけは許してくれますか。<br />
名前でだけでも貴方と繋がっていたいと思っている俺は、浅ましいでしょうか。<br /><br />
-----------------<br /><br />
彼はとても感情豊かだ。<br />
いつも、笑ったり泣いたり怒ったり、表情をくるくると変えている。<br />
彼の周りにはいつも誰かがいて、彼が皆に愛されているのが遠目でもよくわかった。<br />
それを見て、僕はとても嬉しい気持ちになる。<br />
その気持ちを、顔には出さないけれど。……いや、出したくても出せないのだが。<br /><br />
彼の仕事振りを見ていれば、彼が音楽を好きな事はよくわかる。<br />
思うように音楽を奏でるという事は幸せなことだ。幸せなことは、良いことだ。<br />
ただ、彼が僕のことを気にしているのが、少しだけ気がかりだ。<br />
周りが彼に、僕と比較するような事を言っているのを、僕は知っている。<br />
きっと、彼は優しいのだ。<br />
褒められているのだから喜べばいいものを、僕を気にしてか悲しそうな顔をする。<br /><br />
その名前に縛られなくて良い。<br />
君は最初から自由なのだから。そして僕も自由だ。それだけのこと。<br />
君はいつも笑ったり泣いたり怒ったりしているけど、僕は君の笑顔が一番好ましい。<br /><br /><br />
※楽器「ピアノ」の名称の由来は、イタリア語の「クラヴィチェンバロ・コル・ピアノ・エ・フォルテ」<br />
「弱い音と強い音の出るチェンバロ」という意味らしいです。Wikipediaより。</p>
<hr /><p>共犯者</p>
<hr /><p> </p>
<p>ピアノとチェンバロ</p>
<hr /><p>彼はとても淡々としている。<br />
いつも静かに、黙々と自分の仕事をこなしている。<br />
周りは彼を「いつも同じ調子」「無表情でつまらない」「愛想が無い」と言う。<br />
でも俺は知っている。<br />
彼の内面が本当はとても複雑で繊細だという事を。彼が音楽をどれほど愛しているのかという事を。<br /><br />
だから「君の方が彼より優秀だ」と言われる度に、俺はどうしようもなく苦しくなる。<br />
そんなことはありませんと言い返しても、周りは「君は優しいな」と笑うだけだ。<br />
違う。俺は優しくなんかない。<br />
彼を舞台から追いやったのは周りの皆ではない。他でもない、俺だ。<br />
俺が彼から光を奪ってしまったのだ。<br />
きっと、彼は俺を怨んでいるだろう。許しを請う資格は俺には無い。<br /><br />
それでも。<br />
それでも、この名を誇る事だけは許してくれますか。<br />
名前でだけでも貴方と繋がっていたいと思っている俺は、浅ましいでしょうか。<br /><br />
-----------------<br /><br />
彼はとても感情豊かだ。<br />
いつも、笑ったり泣いたり怒ったり、表情をくるくると変えている。<br />
彼の周りにはいつも誰かがいて、彼が皆に愛されているのが遠目でもよくわかった。<br />
それを見て、僕はとても嬉しい気持ちになる。<br />
その気持ちを、顔には出さないけれど。……いや、出したくても出せないのだが。<br /><br />
彼の仕事振りを見ていれば、彼が音楽を好きな事はよくわかる。<br />
思うように音楽を奏でるという事は幸せなことだ。幸せなことは、良いことだ。<br />
ただ、彼が僕のことを気にしているのが、少しだけ気がかりだ。<br />
周りが彼に、僕と比較するような事を言っているのを、僕は知っている。<br />
きっと、彼は優しいのだ。<br />
褒められているのだから喜べばいいものを、僕を気にしてか悲しそうな顔をする。<br /><br />
その名前に縛られなくて良い。<br />
君は最初から自由なのだから。そして僕も自由だ。それだけのこと。<br />
君はいつも笑ったり泣いたり怒ったりしているけど、僕は君の笑顔が一番好ましい。<br /><br /><br />
※楽器「ピアノ」の名称の由来は、イタリア語の「クラヴィチェンバロ・コル・ピアノ・エ・フォルテ」<br />
「弱い音と強い音の出るチェンバロ」という意味らしいです。Wikipediaより。</p>
<hr /><p><a href="http://www19.atwiki.jp/910moe/pages/1042.html">共犯者</a></p>
<hr /><p> </p>
