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滅びを予感する軍師 ---- 彼は暴君だった。 欲望のままに全てを欲しがり、手に入れたものを飽きては捨てる。 軍師である私は、この国を正しい方向に導く役目にも関わらず、国王の暴走を止められないまま国は荒れていくばかりだ。 この国はいずれ滅びる。 その責任は誰にあるのか、彼の欲しがるままに与えた私か、全てを欲しがり捨てる彼なのか。 いくら頭を悩ませようが、この国が母なる大地の怒りに触れるのは時間の問題だろう。 私ができる事は、せめてその時を遅らせる為に、この国を神の目を逸らす事くらいだ。 しかし今、王は私の制止も聞かずにその扉を開けようとしている。 「シュウ君、ふすま開けちゃ駄目!」 「や!」 「ふ・た・り・と・も!!なーにやってるのっ!」 「あ、ママあのね、いま二人でお片付けしようと思ってたの」 「こんなに散らかして!あー壁に落書きしちゃ駄目って言ってるでしょ!シュウ君、めっ!」 「うー……ごめんなしゃい……うわぁぁぁぁん」 「泣いても駄目っ!」 「ママ怒らないでシュウ君まだ小さいんだから!」 「お兄ちゃんも甘やかさないのっ!」 私は駄目な軍師だ。 彼の笑顔を見たい一心でこの国を築いてきたというのに……。 結末は暴走すら止める事が出来ず、崩壊を予感しながらも傍観している事しかできなかった。 そして今は泣き崩れる彼を見守る事しかできない。 せめて共に泣き、この国の残骸を拾い集めよう。 それが私にできる唯一の贖罪なのだから。 ----   [[滅びを予感する軍師>19-019-1]] ----

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