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煙草の匂いのするマフラー ---- 猫みたいだなと言われた。 あいつ言うところの同棲、俺言うところの同居生活の部屋に、俺は一か月の内、半分帰らない。 ばれてないと思ってたのに、あいつは夜勤のバイト先から家に電話して確かめてるらしい。 でもあいつだっていないんだから、誰もいない部屋にいる必要ないし、改める気はない。 あいつの指が髪を梳いたり背を撫でたりすると、逃げたくなる。 熱い指に身体の中を冷たくしときたいのに、溶かされそうになるからだ。 だけど糧は貰う。 あいつが一生懸命考えたんであろう俺への台詞とか、ふいに寝言で呼ぶ俺の、普段呼んだためしのない敬称なしの名前なんか、もう栄養になりまくってる。 けど、そういうあいつの嬉しくなるようなことうっかり言ったら、絶対、俺を膝の上に上げて抱きしめるに違いない。 そんなことされたら心臓が持たない。 前に一回された時だって、口から心臓出そうで、もがいて引っ掻いて、離れた。 そんなこんなことしてたらあいつが言ったんだ。 猫みたいだな。 あいつが言った時、ちょっとドキリとした。 けど、あいつが言った「猫みたい」の理由を聞いて、ホッとした。 ばれてないんだ、ああ、良かった。 猫を飼う時、眠る場所に飼い主の匂いのついたものを置くといいって話、つい最近、あいつがしてたから、ばれたのかと思ってた。 なあ、去年から無くなってる煙草の香りがついたマフラー、もう諦めた方がいいと思う。 随分探してたけど、もう、帰ってこないよ、あれ。 内緒だけど。 本当、内緒だけど。 あのマフラー、猫の寝床に入ってるから。 その猫、あのマフラーないと眠れないから。 だけどそれは内緒。 ----   [[痴漢(…ふぇ?こ、こいつまさか…男!?)>4-799]] ----

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