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コスモスなど優しく吹けば死ねないよ ---- 「君はコスモスのような人だ」 会うたび彼は俺に言う。 厳つい男だ。堅気とは思えないような顔をしているくせに、武骨なその手で花を愛でる。 そして同じ手で、まるで大切な宝であるかのように、俺の頬に触れるのだ。 「僕のかわいいコスモス」 「やめろよ」 そのたび俺はいたたまれない。 だって、男娼の俺にコスモスだなんて似合わない。 知らないと思ったのか。あんたが花屋だと聞いた時に、コスモスの花言葉なんてすぐ調べたさ。 「俺はコスモスじゃない」 「君はきれいだよ」 「どこが」 彼の言葉はまるで本心のような声音で、だからこそ泣きたいくらい信じられない。 ばかげている。 金で縁取られた時間と空間の内側で、吐き出されるのは熱だけでいい。 「あぁ、いっそ手折ってしまおうか。僕だけのものにならないのなら」 そうして欲しいと、切実に願う。 あんたになら殺されたって本望だ。 「愛しているよ」 やめて、そんな風に言わないで。 この醜い傷だらけの手首を、まるでやさしい風が吹くように愛撫されたら、そんなことをされたら俺は。 「僕の美しい花」 この薄汚い身体さえ失うのが惜しくて、死ねなくなるじゃないか。 ----   [[ギタリストとピアニストの恋>4-779]] ----

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