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4-699 - (2010/05/24 (月) 23:24:52) のソース

裏切り者 
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ホテルで会ってるという設定で読んでください

ここは、人目を忍んで逢瀬と言うにはふさわしいのかもしれない。
乗りなれたであろうエレベーターを降り、指定された部屋に足を運ぶ。ノックをすると意外に
早くドアが開いたのでびっくりした。それに気付いたのか、
「私も今来たところだ。」
と、声がする。本当にそうなんだろう。まだコートを着たままだし、触れた指先が冷たかった。
「忙しいんだな。」
部屋に入りながら、いつものように素っ気無い会話を交わす。ふと、視線を下に落とし、
目に留まったこいつの左手には、何時もなら外してある薬指の指輪が光っていて、俺の胸は
チクリと痛んだ。俺はその小さな物が目に入らぬ様に、眼鏡を外しバスルームに向かう。
こんな風に逢うようになってから、俺に気を使っているのか、一度も見た事がなかった指輪を
あいつは今頃、外しているだろう。指輪と共に永遠の愛を誓ったはずなのに・・・
あいつを裏切り者に仕立ててしまった罪悪感がシャワーの音と共に溢れてきた。
今どんな思いでいるのだろう。・・・きっと、俺には想像ができない。
俺がここに来ることを止めれば、あいつを裏切り者にしなくて済むのに。
「泣いているのか?」
不意に後ろから声をかけられ、俺は顔を上げた。
「気のせいか」
と、呟きながら俺を抱きしめたこいつの指に指輪の感触はもうなかった。
「・・・すまない・・・」
微かに聴こえた声を遮るように、俺は深いキスをした。
きっといつか罰が当たる日が来るだろう。
こいつが誰かを裏切っているならば俺は世界に背いた裏切り者だ。もし神様がいるなら、
どうか俺にだけ罰を与えてくれ。こいつは俺のために裏切り者になってしまったんだから・・・

 ・・・けれど、もう少しだけ、あいつが誰かに与えた永遠を一瞬でいいから俺に与えてください。  
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[[裏切り者>4-699-1]] 
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