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3-029 - (2009/05/31 (日) 22:00:13) のソース

出版社営業×本屋バイト 
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また来てるよこの人。このクソ暑いのに背広着ちゃって。 
あーあ、顔なんか真っ赤。背中もぐっしょり。見苦しいなあ。 
客もイヤな顔してる。レジの前邪魔だよ。どけって。暑苦しさがうつるんだよ。 
どうせまた追い返されるだけなのに、まったく迷惑な人だ。 

「暑いですねえ」 
なんで俺に話しかけんだよ。なんだその笑顔。 
顔見知りになったからっていいことないぞ。俺はただのバイトだ。誰にでも媚売るなよ。 

ていうか、アンタだっていい加減分かってるんだろう? 
聞いたことも無いようなドマイナー作家のエッセイなんて売れるわけないって。 
そんなヤツのために走り回って、頭下げて。笑顔振りまいて。なにやってんだよ。 
アンタ本当にそんな仕事がしたかったのか? 

「キツイですね」 
彼は困ったように笑った。しまった。いつのまにか声に出していたらしい。 
「…最初は正直つまんなかったですよ……でも……」 
社員が事務所からやってきた。彼は言葉を切る。 
そしてなぜか意を決したように、俺を見た。 
「だんだん好きになってきたんです。……本が」 
照れくさそうにそう付け加えて、彼は赤い顔のまま社員の元に近寄っていった。 

今日もきっと、すげなく追い返されるだけだろう。 
なら次もまた来る。まったく迷惑な人だ。暑苦しさがうつるんだよ。  
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[[出版社営業×本屋バイト>3-029-1]] 
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