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15-279 - (2009/03/29 (日) 15:53:08) のソース

機械化
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僕は此処が大好きだ。 

時折流れる機械音、鼻を突く薬品の匂い。 
壁際に乱雑に置かれた、試作品達。 

外ではいつも“独りきり”であったが、この部屋に帰ると組み立てた機械が、「おかえり」と言ってくれているような気がする。 
そして、最近僕の帰りを待ちわびる子が一人増えたんだ。 


「…おかえり」 

ほぉらね、この子はちゃんと僕の事を待っててくれている。 
最初はなかなか素直になってくれなかったけど、一度関係ない所を弄ってやったら大人しくなった。 


「ただいま、愛しい実験体。身体の調子はどうだい?」 

僕は荷物をそこら辺に投げ、可愛い可愛い機械を見つめた。 
うん、いい具合に顔色が悪いじゃないか。でも昨日組み入れた機械は正常に動いている。 

やっぱりアレかな、機械になりかかっているとはいえ半分は人間なんだし、ちゃんとご飯もあげた方がいいのかな。 
でも必要な栄養は点滴で補給させてるんだけどなぁ。 


「…おい」 
考え込んでいた僕に、半分機械の子が呼び掛ける。 

「…今日は改造しないのか?」 
遠慮がちな声。僕はすぐさま首を振った。 


「ううん、今日も改造してあげる。期限が近いからね、早くしないといけないんだ。 
本当はもっと、君の体調を見ながらゆっくり仕上げたかったんだけどね」 

「でも、珍しいねえ。君が催促するなんて」 
僕がそう言うと、もうすぐ機械になる少年は不快そうにそっぽを向いた。 


「別に…早く機械と化してしまった方が、お父様は喜ぶからな」 
少年はそっぽを向いたまま喋る。 
えらく辛そうだ。 


「うん、依頼人のお父様ね。確かに、早く仕上げた方が嬉しがるからねえ。 
…でも、君のお父様も馬鹿だよね。息子が病気で死ぬ姿なんて見たくないからって、何処の人間かも分からない僕に、機械にしてくれだなんて頼むなんて」 

「確かに、機械になったら“永遠”を手にいれる。 
でも、形ある物はいつか壊れるよ。いくら手間かけたからって、すぐ壊れて終わりさ」 

あー、おかしい。 
いくら天才の僕でも、壊れる事のない機械を造るなんて無理だよ。所詮、永遠なんて手に入らないのさ。 


クスクス笑う僕に、気分を害したのか少年は眉間に皺を刻みながら吐き捨てた。 


「分かっている。…だが、お父様が死ぬまでは持つようにしてくれ。 
そのあとは壊れてもいいから」 

――あらあらまぁ、どうしても大好きなお父様を悲しませたくないんだね。 

しょうがないから、何十年も持つように頑張ってあげましょ。 
永遠は無理でも、それなら天才の僕ならいけるでしょ。
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[[大事な事なので二回言いました>15-289]]
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