「15-859」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る

15-859 - (2009/03/30 (月) 20:56:01) のソース

年下純情攻め×年上淫乱受け  
---- 
真夜中に携帯の液晶が青白く光って、あの人からの着信を知らせる。 
僕はわざと、今起きましたよという声を作って、電話に出る。 
もちろん、僕は、この電話が来るのをじっと待っていた。 
「――よう、今来れる?」 
酒焼けと、その他僕の知りたくないいろんな理由で、かすれた声が僕の名前を呼んだ。 
電話の向こうはひどく静かだ。 
「どこにいるんですか」 
「青山の、いつものホテル」 
ああ、俺の家に寄って着替え持ってきて。お前もちゃんとした格好で来いよ。 
それからシャーベット食べたい。 
「何味が良いんですか」 
僕は少しあきれながら、でも子供をなだめすかす様にやさしく、尋ねる。 
「びわのシャーベット、なんてね」 
彼のためだったら、存在するのかどうかも怪しいびわのシャーベットを、夜が明けるまで探し続ける。 
そんな僕の性格をあの人はよく知っているのに、こうやってからかうのだ。 
「わかりました。30分で行きます」 
鼻にかかった少し眠そうな声が、ぞんざいな口調で部屋番号を告げて、通話は勝手に切れた。 


糊が程よく落ちた白いシャツ。まだ封を開けていない買い置きの下着。 
それから、途中コンビニで買い込んだあらゆる種類のシャーベットが、袋の中でごろごろと重なっている。 
びわのシャーベットなんてあるはずもなくて、僕は仕方なくレモンとマンゴーとオレンジのシャーベットを買った。 
告げられた部屋に入ると、あの人はベッドの上で、しわだらけのシーツに包まって眠っていた。 
シーツは腰から下を隠していなかった。胸は片方はだけて、鎖骨のくぼみに影が見える。 
しっとりと肌理細やかで、触るともしかしたらほのかに汗ばんでいるかもしれない、 
なまめかしい足を投げ出して、僕の目に訴える。 
片足を腹側にひきつけて曲げ、太ももから尻にかけて引き締まった線を見せ付ける。 
その先は、上手くシーツに隠して見せない。 
間接照明だけ付いた、オレンジ色に暗い部屋で、濃密な生き物の気配が立ち上っていた。 
「起きてください」 
すると、乱れた髪の間から、ぎょろりと目玉だけを僕に向けて、少しつぶやく。 
「シャーベットは?」 
僕は広いベッドの片隅に腰掛けて、目を細めた。 
むき出しの足、噛み跡のついた胸を隠すように、シーツを引き上げてやる。 
そうするだけで、さっきまで僕を縛り付けていたセックスの残り香が急に薄れて、穏やかな夜の空気が訪れる。 


「びわのシャーベットなんて、売ってませんでした」 
買って来た三つを見せる。それじゃレモン味がいい、と言うが手を伸ばそうとしない。 
「食べさせてよ」 
大きな枕を重ねて凭れ、半身を起こす。 
一度掛けたシーツがまためくれて、へその下にわだかまった。 
僕はそれを見ないようにして、木べらで掬ったシャーベットを口元へ運んだ。 
親鳥から餌をもらう雛のように、従順に口をあけて、僕の手からシャーベットを食べるこの人が、いとおしかった。 
セックスで嗄れた喉に冷たい感覚が気持ちいいのか、もっととねだって何口か続けて食べる。 
「なあ」 
不意に僕の手首をつかんで、にやりと不敵な笑みを見せる。 
弾みで僕の手から木べらがシャーベットごと、みぞおちの辺りに落ちた。 
「お前も、食えよ」 
体温と同化して溶け始めたシャーベットをさして、笑う。 
僕の後頭部にやさしく、けれど有無を言わさない強さで手を置いて、唇を寄せさせる。 
僕は、うやうやしく肌に口付け、脇腹に流れた一滴も余すことなくそれを舐め取った。 
舌を這わせると堪えきれないといったように、足をすりあわせた。なんて、淫らで、いじらしい。 
「おれを、食べたいとは思わないのか」 
僕の髪を乱しながら、熱っぽいささやきを耳元に落とす。 
ほんの数十分前まで、淫らに喘いでいただろうその唇が憎らしい。 
本当は、すべてをこの目におさめて、この指で触れて、唇で愛したかった。僕だって本当は。 
――この人が他の誰かのものであると、まざまざと見せ付けられる土曜日の深夜。 
僕は、僕の知らない誰かとセックスした体からゆっくり離れて、新しいシャツを着せ掛ける。 
「だって、あなたは僕だけじゃ、満足できないんでしょう」 
甲斐甲斐しく面倒を見るのは、こうしていることで万に一つでも、 
この人が僕だけにすべてを許してくれる日が来るかもしれないと、僕が夢見ているからだ。 
----   
[[攻めに尽くしまくるワンコ受と受けの態度に若干引き気味な攻め>15-869-1]] 
----