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22-529-1 - (2012/06/20 (水) 04:16:15) のソース

和と洋
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自分の親父は名門料亭の凄腕の板前だった。創業者の一人娘のお袋と結婚して自分が生まれた。名前は和(なごむ)だ
親父は料理人としては最高だったが、父親としては最悪な人間だった。とにかくどうしようもない女好きだった。
まず行きつけのラーメン屋の中国人店員に手を出した。腹違いの弟の中(あたる)ができた
次に懲りずにどうやって出会ったのかタイ人留学生とデキた。腹違いの弟の泰(やすし)ができた
親父はますます調子に乗った。今度は近所のカレー屋の夫と子供のいるインド人女性と不倫した。腹違いの弟の印(しるす)ができた
お袋は・・・親父に対抗するように不倫に走った。
まず行きつけの焼肉屋の韓国人店員と関係を持った。中絶という選択肢はお袋にはなかったようだ。種違いの弟の韓(かん)ができた
次にベトナムを旅行して現地の行きずりの男性と関係を持った。一度だけだったらしいが大当たり。種違いの弟の越(えつ)ができた
最後に出会い系サイトで出会ったトルコ人男性と関係を持った。これも見事に当たった。種違いの弟の土(つち)ができた
書いてて嫌になる。なんか横溝正史の小説の出来の悪いパクりみたいだ。この異様な七人兄弟が同じ屋根の下で暮らしている。
一番年上の自分が高校三年で、一番下の土が小学校一年生。非現実的な現実がここにある
父親は仕事と女に忙しく、母親は遊びと男に忙しく、ほとんど家には不在だ。自分としては居てくれなくて実に過ごしやすい
実は七人兄弟は凄く仲がいい。七人とも父親と母親の無責任で自己中心的な行動に振り回されたという意味で同志だ
このバカ両親に対抗するために兄弟で揉めている場合じゃない。ただし一つだけ団結が乱れることがある。それが食事だ。
自分は和食が大好きだ。中は中華好き。泰はタイ料理を食べたがり、印はカレー狂い。韓はキムチとゴマ油がないと怒り出す
越はいつもインスタントのフォーをすすっている。土は毎日のように屋台の羊肉のドルネケバブを買って来る
みんな味覚だけはナショナリストだ。家で出される食事に全員の希望を聞いてたら「会議は踊る。されど進まず」状態になる
七人で話し合ってある結論を出し、七人全員で両親に要求を出した。ネグレクト両親はあっさり承諾した
兄弟で要求したことはオレたちの飯を作ってくれる通いの洋食のシェフを雇うことだった。やってきたのは洋さん
パリ・ローマ・マドリード・モスクワを渡り歩いたという凄腕のシェフだ。昼間は料理教室の先生だ
夕食と夜食と翌朝分の朝食を作りに午後に来てくれる。いつも腰を抜かすくらいに美味しい
洋さんの父親は凄腕のフランス料理のシェフだったが、子供だった洋さんとお母さんを捨てて愛人と蒸発してしまったそうだ
その話を聞いたときは本当に吃驚仰天した。自分たちのために神が遣わしてくれた人としか思えなかった
洋さんには自分たちと自分の子供時代とがダブって見えるらしい。確かに洋さんから見ればそうかもしれない
いい臭いがするなあ。今日はビーフストロガノフかな。洋(よう)さんの作る煮込み系の料理は最高なんだよな・・・
洋さんは来年には自分の店を出す計画だそうだ。そうだよな。自分たちとしてはずーっと洋さんの料理を独占したいけどそうもいかない
自分は受験生だ。ずっと大学なんかどこでもいいと思っていたが、経営学を勉強できるところを目指すことに決めた
理由は・・・実現するなんて思ってないけど・・・ひょっとしたらサポートする機会もあるかもしれないじゃないか・・・
とにかく今は洋さんの料理に舌鼓を打とう。そして洋さんが用意してくれた夜食を食べながらしっかり勉強することにしよう

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[[ピロートーク>22-539]]
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