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20-559 - (2011/09/30 (金) 22:07:17) のソース

期間限定の恋
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二月の澄み渡る空に、合唱の声が抜けていく。 
仰げば尊し、我が師の恩。 
練習をしているのは、卒業を来月に控えた三年生だ。 
ピアノの音色が心地よく私の耳に余韻を残す。 
彼が卒業した、ちょうど一年前を思い出した。 
あの日も、彼はいつもと同じ穏やかな笑顔で私に微笑んでいた。 
来月からは大学生ですね。 
私は模範的な教師の顔で微笑み返す。 
早咲きの桜が、彼の肩で舞っていた。 
先生、好きです。 
彼はまたそのときも、私に告げた。 
そういった彼と、在学中、戯れに唇を重ねたり、気まぐれに肌を重ねることもあった。 
いまとなっては、それらはまるで夢のようだ。

歌声が聴こえなくなった。 
授業の終わりを告げるチャイムが鳴る。 
彼とは、卒業式以降会っていない。 
彼の連絡先も進学先も、彼の担任であった私は知っている。 
けれどこの一年、私は彼に連絡を取ることをしなかった。 
彼もしてこなかった。 
先生、好きです。 
一瞬の静寂に、彼の声がまざまざと蘇る。 
記憶が、一年前に引き戻される。 
私は堪らず、両手で顔を被った。 
彼は今、きっと楽しいのだろう。 
強い彼は、私のことなど、石につまずいたくらいに思うことができるはずだ。 
それでいい。 
私のことなど、彼は忘れていなければいけない。 
彼と私は、生徒と教師という時間の中で夢を食っていたに過ぎないのだから。 
その限られた時間の中で、確かに私は恋をしていた。  
確かに恋だった。ただ、それだけのこと。
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[[命令違反>20-569]]
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