冷たい手 ---- 「ぎゃあっ!」 「うわ、色気ねー」 急に俺に触れた手の冷たいことといったらない。何つーの? 女なら確実にああコイツは雪女なんだなぁとか思っちゃう 冷たさ。……男は何だろう。雪男……だとただのオッサンだし。 まあなんだ、そういった冷たい手が急に、しかも首筋に押し 当てられた俺の気持ちになってください。寿命縮むから。 「当てるんなら自分の首にしやがれこの野郎」 「やだよ。寒いじゃん」 俺の体温は奪っても構わねーっていうのかこの外道。 「そんだけ冷たいんだもんな。心の底から冷たいんじゃないの お前」 「そんな今更なこと言うなよ。黙って体温奪われてなさい」 「文字通りヒトデナシだなお前……」 けれどその後俺をすっぽり包んだ身体は、まんべんなく 温かかった。 そういえば雪女が迷い込んだ男に出す料理は温かかった っけと思いながら、俺はまどろむように冷たい手の男に ゆったりと身体を預けた。 ---- [[冷たい手>8-769-1]] ----