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14-699 - (2009/03/24 (火) 23:47:46) のソース

渡せなかったプレゼント
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「あー、もう……」
携帯電話に対して百面相していた部下はついに大きなため息をついた。
「許してもらえなかったんですか?」
「えーそうですよ。ああーもう課長のせいですからね」
まだ年若い部下は、ふてくされながら携帯電話をスーツの内ポケットに
しまいこむ。それと同時に昼休み終了の合図がなった。
1時間程度の言い訳では、彼女には納得してもらえなかったらしい。
一年に一度、クリスマスイブのデートをすっぽかされたのだから無理もないが。
「しょうがないでしょう。残念ながらあの仕事は君にしか出来ない」
「わかってますよっ。俺と課長とでようやくこぎつけた案件でしたしね。
 納品トラブルが起こったのも課長のせいじゃないのはわかってますけど……」
みてくださいよー、と情けない顔でデスクから取り出したのは小さな小箱。
彼と彼女の将来を誓う、小さな銀の輪。
中身を見なくても知っている。これを買う際に彼の相談に乗ったのは他ならぬ自分だ。
「せっかく課長に斡旋してもらったショップで買ったのに、渡せなかったんですよー。
 俺の一世一代の決心が!って感じです。八つ当たりくらいさせてください」
「クリスマスは今日までですよ。今夜渡してしまえばいいじゃないですか」
さらっと言うと、彼は目を丸くした。
「えっ、だってどうせ今日も残業……」
「いいえ、今日は君は帰って構いません。あとは雑務ですから、私が請負いましょう」
「そんな、だって雑務って言っても」
「八つ当たりされるよりマシですよ。これは私からのクリスマスプレゼントということで」
「あ……ありがとうございますっ!今度、俺からも何かプレゼントしますから!!」
「必要ありません。では午後の業務、しっかり終わらせてくださいね」
何度も感謝の言葉を述べながら頭を下げる彼を制し、私は仕事に取り掛かる。
数瞬遅れて取り掛かった彼は、猛然とした勢いで業務をこなしていく。普段とは別人のようだ。
この調子ならきっと定時には全ての業務を終わらせて、彼女の元へ行くことだろう。

“彼女に指輪を渡せなかった夜”こそが、私の何よりのプレゼントとなるくらい
薄暗いこの感情を、彼は知らない。