4年後にあの場所で ---- 『四年後に、あの場所で』 非道なことに、俺がその言葉を思い出したのは、まさにその当日が終わる三時間前だった。 「っていうか、行って良かったモンなの? ホントに居た訳?」 更に非道なことに、最早過去形で語ってます俺。正に外道だね俺。まぁ三時間切ったしね。仕方ないんじゃね? だって四年後とかイキナリ言い始める奴がおかしいよな。四年後だよ? 国際的なスポーツの祭典ですか? そんでその二週間後に別れたワケです。鉄のような俺たち。熱しやすく冷めやすく、おまけにしょーもないことに利用されがちな俺たち。鉄は鉄でもクズ鉄だったね。お互いが別々の磁石に引っ張られていく形で、ごくアッサリとお別れ申し上げました。 で、二時間も切る頃に、俺はその場所に向かっていた。 や、ホント馬鹿だよね俺。だって四年前に、別れた奴とした約束を守ろうとしてんの。律儀でしょ? 損な奴でしょ。涙でそうだよ俺。カッコ悪っ。 ……意地も張らずに正直に言うと、俺は心底そいつに惚れていたんだ。そんで、今でもずっと焦がれている。 ただ、俺たちこのまま付き合ってたら、お互い駄目になっちゃうかもね? ってあいつが言って。 んー、お前がそういうなら、そうかもしれねーな。って応えて。 じゃあさ、別れよう。 そうか、じゃあな。 って。今思えば何だかよく分からない最後だった。ただ、その少し前に、あいつが俺じゃない、別の奴に惚れているらしいとうわさが立って。そうなのかな、と少し疑問に思って。 「遅いだろ、馬鹿」 約束の日が終わる一時間前に、その場所に行ったら、あいつが泣き笑いの顔をしていた。 「何でいるんだ?」 訊ねたら、あいつは昔みたいにただ笑ったりせず、「馬鹿野郎!」と怒鳴りながら、思いきりどついてきた。 「約束したろ! 四年したらここで、って!」 「その後すぐに別れたじゃねーか!」 「当たり前だ! あのまま付き合っていられる訳なかっただろ!」 「何でだよ!」 「だって、俺とお前は!」 言われて、久々に気づいたけれど。 こいつって教師だったっけ。 「だから四年って言ったんだ! 生徒たぶらかした上にそいつが同性だなんて、世間様にバレたらお前も俺も終わりだったんだからな! この馬鹿生徒!」 で、四年前にそんなこと言われたら、ただ「ごめん」って言っただけの俺だったけれど。 「もう生徒じゃねーよ。学生ですらないんだぜ?」 四年ぶりに抱きしめた小柄な身体は、相変わらずいい匂いだった。 ---- [[好きで好きでどうしようもない それとこれとは関係ない>6-689-1]] ----