「若」と呼ばれるキャラ ---- 「斉木、馬を出せ」 「先の週も外にお出でになった様ですが」 「こんな屋敷にいると息が詰まって仕方ない」 「詩学はどう為されたのです」 「あれは好かん」 「殿がお嘆きになりますぞ」 「構わぬ。歌ばかり詠んで政を蔑ろにするお方だ」 「若!」 「独りではない、椎名を付けてゆく」 「ですが……」 「退け、これは命だ」 「……お気をつけて往ってらっしゃいませ」 「まったく、斉木は煩くて敵わぬ」 「若がお可愛いのですよ」 「もう童ではない」 「この椎名がお供するのも、若がいっとう大切だからです」 「よせ、気が重くなる」 「失礼致しました」 「椎名、例の物は持って来たか」 「此処に入っております」 「見られてはおらぬだろうな」 「城の者の目を盗んで参りました」 「さすが椎名だ。腕が立つ」 「勿体のうお言葉で御座います」 「馬が来るよ」 「馬?」 「お侍さんかしら?」 「いや、若様だ!」 「若様!」 「若様がいらっしゃるの」 「椎名様もご一緒よ」 「お師匠様、お外に出てもよろしい?」 「其の書写を終えてからに為さい」 「あーい」 「かしこまりました」 「みな良い子にしておったか」 「若様ァ!」 「若様、椎名様、お久しゅうございます」 「豊川、筆子らはどうだ」 「みな賢い子でございます」 「あら、お師匠様いつもは褒めてはくださらないのよ」 「康孝、手習いは進んでおるか」 「おいら此れを書きました」 「百人一首か。見事なものだ」 「若様、此れあたしの」 「どれ、見せてみろ」 「とよは顔が丸くなった」 「非道ォい」 「はは、違いねえ」 「歳を取れば美しくなるぞ」 「とよ、椎名様に娶っていただけ」 「いや、私が貰ってやろうか」 「えらい玉の輿だ」 「さ、並べ。順々だ、押すのではないぞ」 「城に届いた大福餅だ。礼を言えよ」 「わァい、椎名様、有難う御座います」 「若様の計らいであるぞ、若にも申し上げよ」 「若様、有難う御座います」 「どうだ、美味いか」 「甘ァい」 「頬っぺたが落ちそうだ」 「おや、きよは食べぬのか」 「持って帰ってお父様とお母様に差し上げたいのです」 「優しい子だ、もう一つやろう」 「その一つは若様と椎名様でお召し上がりください」 「何を申すのだ」 「きよはお二方にも召し上がって戴きたいのです」 「では3つに割ればいい。此れできよも食べられる」 「おお善道、素晴らしい案だ」 「……豊川、この寺子屋の筆子は真に賢いな」 「有難う御座います」 「そなたのお陰だ」 「お気遣い、感謝致します」 「若、何故此のことをお隠しになるのです」 「表沙汰にしなければならぬことでもなかろう」 「殿や斉木が喜びます」 「それが気に食わぬ」 「若、あなた様は良い殿になられます」 「よせ」 「若は椎名の誇りで御座います」 「其れは当たり前であろう。お前と私は一蓮托生だ」 「……嬉しゅう御座います」 「さあ飛ばすぞ、日が暮れると斉木が煩い」 「畏まりました」