曇天 雷 そして夕立 ---- 「センセってさ、恋人いんの?」 いい加減重く空に垂れ下がるようだった曇天が、とうとう決壊する。ゴロゴロと世界中が不機嫌 だと言わんばかりの雷、そして夕立。 「いるって言ったら、どうするんだ?」 だらしなく机に腰掛けた成績優秀問題生徒は、足を組み替えてフンと鼻を鳴らす。随分と、 つまらなそうに。 「ウラヤマシーって、言って終わる。そんだけ」 恋人なんていない。 けれど、好きな奴なら。 目の前にいる、ふてくされた表情の。 ツンツン爆発頭に、窓を叩く雨粒の光がぱらぱらかかる。 「いない」 「ふーん……そっか」 不機嫌がさっと笑顔に溶け消える。雷の光すら、暗い影を残せない、素直な笑顔。 「俺のことなんて良いから、お前のことだ。志望校、変える気はないのか?」 俺のことなんてどうだって良いから。 お前の進みたい道、お前の夢、お前の好きなことをもっと話せ。 振り返らないお前の背中は、それを語ってはくれないだろう? 「無いよ。俺は心変わりなんてしねーよ」 夕立に雷。早く去ってくれないか。 傘を忘れた事をまた、後悔する。こいつの思わせぶりな口調に、胸の嵐が吹き荒れる。 「美容師になったら、センセの髪、いじらしてよ?」 ツンツン頭が疑問系と共に揺れる。 また、雷が光った。 ---- [[攻めを泣かせる受け>7-499]] ----