寝不足です ---- 向かいの机で仕事をしている先輩が、さっきからこめかみを押さえて眉をしかめている。 「大丈夫ですか?」 思わず尋ねると先輩はこめかみに当てていた手をひらひらと振って見せた。 「たまに痛むんだ。心配いらない」 「先輩、寝不足してるんじゃないですか?」 「まあ…納期近いからね、仕方ないよ」 油売ってないで仕事に戻ろう、と促されて僕も作業の続きに戻る。 こんなときいつも、切実に思う。 (ああ、仕事のできる男になりたい) 先輩が遅くまで残業した上に家まで仕事を持ち帰っているのを、僕は知っている。 今はまだ足手まといになることのほうが多い僕だけれど、早く仕事を覚えて先輩に負担をかけないようになりたい。 そしていつかは。先輩が、僕の隣で安心して寝顔を見せてくれる日がくればいい。 ---- [[その時触れられたのは指先だけで>7-029]] ----