持ちつ持たれつな関係 ---- 「あんた昨日風呂入りました?」 「入ってない」 「メシは?」 「食べてない」 「……いつから」 「メシは一昨日から、風呂は日曜日、いや土曜日かな」 「今すぐなんか作るからシャワー浴びてきてください」 「面倒だから明日入るよ」 「あんた今マジでくさいんスよ! 同じ部屋にいんの耐えられないから浴びてください」 「その言い方は人権侵害だなァ」 「公衆衛生を無視してる人が何言ってんすか、はいこれタオル」 2LDKのオートロックのアパートは、バストイレベランダ付。 ルームシェアの相手を募集していた生活能力ゼロの男と知り合い、 共に暮し始めてから数ヶ月が経った。 現在は彼が家賃を全額払い、俺がすべての家事をこなしている。 最初は居候のようで居心地が悪かったが、要するに家政婦代わりなのだと気付いてからは、 俺もあまり遠慮しなくなった。 「研究で家空ける度にこんなことになられちゃ困るんスけど」 「うん、だからなるべくマメに帰ってきてね」 「いやそういうことじゃないって」 「これ美味いね、しょうがが効いてる」 「餓死する前にカップラーメンでも何でも勝手に食っといてくださいよ」 「君は口は悪いけど優しい子だよね」 「あんた人の話聞いてます?」 「君よく怒ってるけどさ、僕のこと嫌いじゃないじゃない」 「はァ?」 「僕が心配だから怒ってくれるんだよね」 「だって家賃払ってもらってますから」 「君さ、僕のセックス好きでしょ?」 「ちょっと! メシ食ってる時にそういう話しないでください!!」 「ごめんごめん」 「……ごちそうさまでした」 「ねえ、さっき風呂ためておいたから君も入っておいでよ」 「珍しく気が利くじゃないスか」 「僕ね、昼は色々と迷惑かけるけど夜は奉仕する派なんだ」 「それは結構です」 断りはしたものの、風呂からあがって自室に戻るとベッドの上で男が待っていて、 俺はまさに奉仕され、ぐずぐずにされてしまった。 悔しいことに彼の手は肌に馴染んでひどく心地良い。 与えられたら拒めないし、それに満足している自分もいる。 認めたくはないけれど、ひょっとしたら持ちつ持たれつの関係なのかもしれない。