変わろう 変えよう 気仙沼

「変わろう 変えよう気仙沼」

―元気な気仙沼を目指して―

<現状の把握>

 

 サブプライム問題による経済不況はグローバリゼーションの名の下、瞬く間に世界中に広がり、派遣社員、期間労働者、パートタイマーの解雇など未曾有の経済危機に陥っている。生活においても国家を超えて世界規模で資本、情報、人の交流や移動が行われるグローバリゼーションと都市化が進み、都会の生活に憧れ、生活の便利さと、食への便利さへと進んでいる。国内産より安い輸入物、手間のかかる生産より簡便な輸入食品へ。グローバル化されたしたたかなアメリカの食物戦略により多くの国々で自前の食物生産のシステムが崩れてしまった。日本においても米の一人当たりの年間消費量が昭和37年をピークに減り続けて、平成18年にはピーク時の57.3㎏(365日毎日茶碗8分目)減の61.0㎏となり、さらに減反政策により田畑があれ、自然や、国土保全機能にも影響が出ている。供給熱量総合食料自給率は平成18年に40%を割り先進国の中でも最低の国である。食の殆どを輸入に頼り安心安全より価格が優先され、その結果が現在の食の安全神話の崩壊である。食料の供給、国土の保全、環境の維持、文化の伝承、教育の機能などの重要な社会的な役割を果たしてきた「漁業、農林業地域」の位置付けが低下し続けている。

 その原因を国のせいにするだけでなく、解決策を国に求めるだけでなく、「漁業農林業地域」は都市の後追いをすることなく、社会的役割を自覚し個性ある社会づくりを進めなければならない。幸いにも日本にはまだこの現状から立ち直る力がある。「市町村合併」の過度な期待に陥ることなく、目先の優遇政策に惑わされず、問題の先送りをせず、しっかりと地に足を着け現状を認識し、地域住民の主体的活力を生かし、「漁業農林業地域」と都市との連帯と共生をめざし、環境保全と循環型社会を柱とし「漁業農林業地域」の活性化を図らなければならない。

«気仙沼»においても例外ではない。都市化が進み暮らしそのものはほとんど遜色がない。しかし、インフラストクチャー(社会基盤)は公共下水道の普及率20.7%、雨水処理機能の普及率2.1%、市道の改良率は42.8%都市計画道路の整備率は53%となっている。水産加工品生産量が県全体の20%を占め、「人と自然が輝く 食彩豊かなまち」を謳っている気仙沼としてはあまりにも低い普及率ではないだろうか。ごみ処理においてもリサイクル率は国・県の平均を下回り循環型社会、とは程遠い現状である。

 気仙沼が将来においても、子々孫々まで気仙沼であり続けるための基礎的な条件は経済の確立です。気仙沼は市土面積のおよそ7割が森林という自然環境条件等により大規模な企業誘致を行うこともできず、また経済情勢の低迷により公共事業の導入政策や、公共投資への依存型経済からの方向転換を余儀なくされている。この時期こそ「漁業農林業地域」の経済を本来の姿に戻し、「漁業農林業地域」の持つ豊富かつ限られた自然資源を有効に生かし地場資源活用型の資源循環型社会を実現しなければならない。

 昨今、大きな代償を払いながら食の安全性の問題、環境への問題など、自然との共存・共生が重要視され、「漁業農林業地域」への評価も重要視されてきているが、厳しい経済状況の中で社会のニーズに対応できていないのが現状である。気仙沼においても「漁業農林業地域」の社会の特性を踏まえ再構築しなければならない。

 しかし現在の気仙沼においては行政の視線がすべて内向きで役所のための仕事をしている。明らかに住民と行政が乖離している。何よりも危機的財政に対する緊迫感を感じ取れない。2007年の仕事納めで鈴木昇市長は、「100点あるいはそれ以上の一年だった」と総括した。あまりにも現状の認識にギャップがありすぎる。これこそ内向き行政の象徴であろう。建物の外壁の大きなひび割れに目もくれず、室内のクロスを張替え満足している。職員の能力は優れ、首長の意向・方針を完璧に企画・遂行できる力を持っていると思われる。それは300頁あまりの「第一次気仙沼市国土利用計画」・「第一次気仙沼市総合計画」と言う企画書にも大いに発揮されている。しかし、この企画書が次の市長選へのPRではと思うのは考えすぎだろうか。それにつけてもよくこれほどの著名人を並べたものである。さらに合併特例債を充て唐桑小立替工事も進む、しかしこれも対象事業費の33.5%は市の負担である。建て替えは望ましい事であろう、けれども首長をはじめ市の幹部は「安易に依存すると結果的に財政危機の単なる先送りになる」と云う危機感を持っているのだろうか。更にこのスタンスは気仙沼市と本吉町の合併協議会において市長は「小さい町が合併後の施策を不安に思うのは当然であり、自治区は必要。経費削減の問題は将来の課題としたい」と述べた。当然二重体制となり区長がおかれ人件費も掛かる。この場においても財政危機の先送りである。気仙沼の人口65,255人が一人890,000円の借金をしていることをよもや忘れているわけでもあるまい。合併という既成事実にケチをつける気は毛頭ない、しかしそこに、共に気仙沼、これからも気仙沼、全てを共有し新しい気仙沼を作り上げるというポリシーを感じ取れない。合併後の不安を払拭できないような首長であるなら初めから合併をしなければよい。合併後、国からの交付金が減額されるのは当然のこと、可能な限り歳出を切り詰め将来に備えなければさらに負の遺産を増やすことになる。それでも先送りをするのだろうか。首長にとって合併はステータスを上げることだけなのか。状況は日々厳しさを増してきている。今ここで浸水した水をかきだし、応急処置を施し、動き出さなければ船は沈む。財政の弾力性を示す指標である「経常収支比率」は94.2%で弾力性を失い財政運営は硬直化している。この状況を打破し元気な気仙沼に変えるのも1200余名の人材力、最大の財政力、高度な情報力を持つ市内で最大の組織「気仙沼市役所」である。この財政力、人材力、情報力を生かすも殺すも首長しだい、果たして今まで生かしてきたのだろうか、方向付けは正しかったのだろうか。庁舎内の雰囲気は推察の域を出ない、職員一人一人の意識は知る由もない。しかし、出来る職員であることは疑う余地が無い。

頭で考える時期がきている。頼まれると断れない優しさ、言葉を心で受け止め反応してくれる一本気な性格、何よりも情を重んじ独特な人情味のある気仙沼、頭より心で考え答えを出そうとする優しき気仙沼。しかし今大きな岐路に65,225人の住民が立っている。このまま内向き行政の路線を支持するのか、痛みや、リスクを恐れず血と汗と涙の税金に応えるべくしっかりと住民の方を向きニーズに対応する住民主体の行政を選択するのか。じっくりと頭で考えなければならない。

 「第一次気仙沼市総合計画」。実に良く出来た計画書である。現況の説明に於いても第三者的立場にたち冷静に判断し忌憚のない評価をしている。然し、この計画書が総花的に思えるのは財政的裏づけが全く見えてこないためだろうか。歳出総額に対する積立金現在高の割合である「積立金現在高比率」、この比率が高いほど将来に対する蓄えがあるということだが気仙沼においては7.6%と危険エリアにあり、「将来にわたる財政負担比率」も将来財政の硬直化が懸念される303.3%で危険エリアにあり、これといった財政再建策が示されていないのが現状である。経営健全化に関する施策においても抜本塞源とは言えない。「第一次気仙沼市総合計画」においてはすべての項目が、図ります・配意します・推進します・促進します・進めます・努めます・構築します、の文字で終わっている。気仙沼の将来に亘る問題点を全て網羅しており、図らずも今までの鈴木市政の問題点を浮き彫りにしている。いわゆる現況において百点の事例など一つもないと言うことだ。

 このほど気仙沼のバランスシート(貸借対照表)が公表された。それによると、市民一人当たりの有形固定資産は140万円、資産、投資等は12万円、流動資産14万円、資産合計は166万円、負債は89万円、正味資産が77万円。この数字に何を語らせようとしているのか。まだ資産は77万円あると言うのか、77万円しか無いというのか。受け止めるのは市民であるが、バランスシートを作成した市当局は、この数字の羅列の説明責任を果さなければなるまい。

 一つの目安がある。正味資産÷有形固定資産合計×100=これまでの世代による社会資本の比率(高いほど良い)これによると気仙沼は77÷140×100=55%  負債合計÷有形固定資産合計×100=将来の後世代による社会資本の比率、低いほど後世代の負担が少ない。気仙沼は89÷140×100=64%  になる。参考までに記しておく。

 このほど、宮城県市町村課が平成19年3月31日現在の「市町村ごとの財政指標」を公表した。市町村財政の現況を表すものとして①経常収支比率、②実質公債費比率、③起債制限比率。市町村財政の将来の姿を予測するものとして、④地方債現在高比率、⑤将来にわたる財政負担比率。さらに、現時点及び将来にわたっての財源的な蓄えを、⑥積立金現在高比率とし、各財政指標の分類を、2(健全エリア)、1(準警戒エリア)、0(警戒エリア)、-1(危険エリア)に区分し数値化している。この6項目を単純に合計し仙台市を除く12市を比較すると一番悪いのが気仙沼、次が大崎市となる。ちなみに、市長の給料が一番高いのが大崎市で、二番目が気仙沼市となる。詳しくは別紙に譲るが、気仙沼市民一人が89万円の借金を抱え、気仙沼市の経常収支比率が-1の危険エリア、積立金現在高比率もー1の危険エリア、さらに将来にわたる財政負担比率もー1の危険エリアであることを認識していて欲しい。         

以上私的考察ではあるが気仙沼市の現状である。この現状をいかにすべきか。

これからも気仙沼であり続けるためにおおいに議論しあい醸成し間違いのない進路を定めなければならない。 

 

文責:未来(あす)の気仙沼を考える会 代表 髙野 暢                 

参考文献

   宮城県公表の資料・「自治分権と市町村合併」・「新版市町村合併」・「小さくても元気な治自体」・「改革の行方特区を診る」・「その気になれば「ムラ」は変わる」・「矢祭町に学べ」・「内省不疚の心でまちをつくる」・「図説日本の財政平成19年度版」

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最終更新:2008年12月28日 16:36