「夏妃、今夜は……」
今日はクリスマス・イブ。恋人達が見境なく、いちゃいちゃする性なる夜である。
この数十年、仕事の都合でいつもこの日は家を空けていた。
だから、今日が妻と過ごせる初めてのクリスマス。
おっさんきもちわるい、などと思われようが知ったことか。
バスローブは新調したし、ワインも夏妃の好きな銘柄を取り寄せた。
今すぐにもルパンダイブしたい気持ちを必死に抑え、蔵臼は妻に向き直る。

そして……

「なつ……えっ?」
「どうかなさいましたか、あなた」
そこに立っていたのは、間違いなく愛しい妻。

「そ、その格好は……その、どうしたのだね?」
真っ赤な帽子にコートとズボン、ついでに白い付けひげ。
「サンタクロースです」

ああ、確かに今の彼女の装いは、クリスマスに誰よりも忙しくなる老人のそれだった。

「では、私は朱志香にプレゼントを届けてきます」
「え、あ、ま、待ちたまえ!」
思わず止める蔵臼。だが、夏妃は勘違いをしてしまった。

「まあ……あなたも手伝って下さるのですね」
「は?」
「さ、こちらをどうぞ」
差し出されたのは、弟と同じような名前の動物の角。

「いや、夏妃」
「いつもあなたはこの時期、お忙しいですから……こんなもの、作ってもしょうがないって分かってたんです」
でも、今年は二人でプレゼントが渡せて嬉しいです、と笑う。夏妃の笑顔はどんな宝石にだって敵わない。
と、先程の発言に、聞き捨てならないことがあった。

「夏妃、この角は、君が?」
「ええ。初めて作ったものよりは、きれいにできてるとは思うのですが」
「そうか、ならば着けさせてもらおう」
夏妃の手作りという事実が、彼からまともな思考を消し去った。

頑張れ蔵臼、負けるな蔵臼。
朱志香にプレゼントを渡したら、夏妃がミニスカサンタにお着替えしてくれるぞ!

「外は冷えますから」


続く?

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