しばらく抱き合ったまま時が過ぎ、ふとベアトが口を開く。
「ここでは場所が悪いな。邪魔な執事がおるし、何より死体がそばにあっては興が削がれるのもいいところだ」
 ベアトに言われ、俺はようやくこの部屋にロノウェがいた事を思い出す。視線を向けると、奴はいつも通り口に手を当て苦笑していた。照れくさくて仕方がないので、俺はすぐ視線を明後日の方向へ投げやった。
「他の部屋へ移動するが、良いか戦人?」
「あ、あぁ」
 俺が頷くと同時に、周囲のあらゆる物が黄金蝶の群れへと砕け散った。辺りは一面真っ白な景色になる。そして、しばらくして無数の黄金蝶が壁や床や家具になり、気付くと周囲の光景は先ほどとは全く違うものになっていた。その中に、俺とベアトが抱き合ったまま二人だけでいる。
「ここは……何処だ?」
 辺りを見回すが、ほとんど見覚えのない場所だ。思い辺りがあるとすれば……前回のゲームで出てきた貴賓室か。荘厳なシャンデリアに、天蓋付きのベッド、見るからに座り心地の良さそうな豪華なソファー、絨毯……。そうだ、あの部屋にここはよく似ている。
 ……しかし、似ているだけで、ここが貴賓室ではない事はすぐに分かる。何故なら、窓が一つもないのだ。
「ふふふ……妾の秘密の場所だ」
 無邪気に笑って、ベアトは俺から離れる。そして、部屋の奥へと歩き始めた。
「おい、何処に行くんだ?」
 胸に少し寂しさを感じながら、俺は言った。だが、ベアトは何も答えない。
 仕方なく、俺もベアトに付いて部屋の奥へと歩を進める。
「……な、こ、これって……!」
 そして、俺は間抜けな声を上げた。いや、上げるしかなかった。
 何故なら、俺の目の前にある“それ”は……。
「そう、これこそが金蔵の隠した黄金の山よ」
 ベアトが自慢げに言う。
「実在したのか……」
 俺は、目の前にある正に黄金の山と形容するに相応しい、大量のインゴットを見て言った。規則正しく並べられたインゴットの一つ一つには、片翼の鷲がうっすらと刻印されている。ということはつまり、これは正真正銘祖父さまの隠し黄金なのだ。
 そう言えば、俺はベアトとの戦いにばかり夢中で、碑文の推理なんてまるでしていなかった。どうせ実在しないに決まっている。……そんな疑いが心の何処かにあったからかもしれない。だが、これで俺の疑いが、単なる決め付けに過ぎないと証明されちまった……!
「ベアト」
「何だ?」
「どうして、わざわざこんな場所に移動したんだ?」
「……ふ」
 ベアトはそう小さく笑うと、再び俺の元へ近寄り、抱きついてきた。そして、耳元で囁く。
「黄金の山のそばで淫らな行為をするのも、また乙なものであろう?」
「はっ、どうだかな。こんなご大層な物が近くにあったら、変に緊張して立つ物も立たなくなりそうだぜ……!」
「ほぅ……」
 ベアトは目を細めながらこちらを見た。そして、俺の背中に回していた片手を、俺の体に触れたままゆっくりと降ろしてゆく。それは腰、腹と辿り、最終的に俺の股間部に触れた。
「それはこれから妾がじっくり試してやろう」
 柔らかい手でゆっくり俺の股間をさすりながら、ベアトは言った。
「お、おいおい、お前が言ってたエロい魔法はかけねぇのか」
 内心、ベアトの大胆な行動に焦りながらも、何とか冷静さを装って俺は言う。
「くっくっく、そなたはせっかちだのう。何事も前置きは重要であろう? メインデッシュは前菜があるからこそ更に美味になる。極上の快楽に浸る前に、まずは前戯を楽しもうではないか」
 そのベアトの言葉を聞き、俺は生唾を飲み込んだ。何故か、ひどく淫靡な響きに聞こえたのだ。
 ベアトは俺の股間をさする力を徐々に強めてゆく。上へ、下へ、時おり指を使って器用に刺激しながら、徐々に徐々に強めてゆく……。
「戦人、そなたは嘘つきだな。もう硬くなってきおったぞ?」
「う、うるせぇ……」
 顔を紅潮させながら、俺はぶっきらぼうに言った。
「くっくっく。どれ、ずっと立っておるのも疲れるだろう。そっちのベッドへ座るが良い」
 そう言って、ベアトは天蓋付きのベッドへ俺を誘導した。
「あ、あぁ」
 俺はされるがままにベッドへ座らされる。……男としちゃ、ここで逆にベアトを押し倒したいもんだが、何故だか俺の本能がそれをしては駄目だと警告してきやがる。どうやら俺は根っからの受け身属性らしい……。
「ほれ、足を開かんか戦人」
 言われて、俺は慌てて閉じていた足を開いた。
 ベアトは、俺の両足の間に膝を付く。……そして、俺の股間部にあるチャックをゆっくり下ろす。その瞬間、俺の肉棒が外界へと勢いよく飛び出した。ガチガチに硬くなり、ほぼ垂直に空中を突いているそれが、ベアトの眼前にさらけ出される。
「……そなた、少しはりきり過ぎではないか」
 ベアトに言われ、俺は声にならない叫びを上げた。普通の状態を見られるだけでも恥ずかしいってのに、思いっきり元気になっている上、それを指摘されるなんて……。
「ふ、いちいち恥ずかしがるなこの戯けが。どうせ、これからお互いに裸を晒し合うであろう?」
「わ、わかって……うっ!?」
 不意に来た急激な刺激に、俺は言葉を言い終わらない内に変な声を上げてしまった。見れば、ベアトが左手で竿の部分をガッチリ掴み、頭頂部を右手の人差し指でグリグリと撫でている。
「男というのは、確かここが一番弱いんであったな」
 ニヤニヤと笑いながら、ベアトは更に力を込めて亀頭部分を撫で回す。それは強すぎもせず、また、弱すぎもせず、丁度良い程度の刺激で、俺の体全体に鳥肌が立つほどの快楽が流れ込んでゆく。
「へっ……何だよやけに上手じゃねぇか」
「ふふ、魔女に知らない事などありはせん。それは男が何をされれば悦ぶかという知識も例外ではない。……例えば、こんな風にな」
 そう言うと共に、ベアトは亀頭から右指を離し、代わりに顔を近づけてくる。……そして舌を出し、さっきまで右指で撫でられていた辺りを、丁寧に舐め始めた。
「うぅっ……!」
 体全体をブルブルと震わせながら、俺はついうめき声のようなものを上げてしまう。ベアトはそれを意にも介せず、ゆっくりとしかし丹念に俺の肉棒を舐め上げている。
 部屋内に響くピチャピチャとした水音。その中心で、俺はただひたすら下腹部から湧き上がる快楽に身を任せていた。
「くっくっく、どうだぁ戦人ぁ?」
「ど、どうだと言われてもよ……。……はぁ、うぅ」
 時間が経つにつれ、徐々に興奮が高まってきたためか、息づかいが自然と荒くなる。
「さっきよりもガチガチに硬くなってきおったぞ? そこまで妾の舌が気持ちいいか?ふ、このままではすぐに精液が飛び出してしまいそうだ」
「ま、魔女様も意外とエロい言葉遣いをするもんだな。何処ぞの怪しい店にでも来ている気分だぜ……」
「それは勝手な偏見だ。魔女とてベースはニンゲン。時には肉欲に狂うのも良かろう?それに、妾との行為をニンゲンの作った俗な店での行為と一緒にするのは、失礼であるぞ? そなたは、これから決してニンゲンの世では味わえぬ快楽を得られるのだ。ニンゲンが絶対に得られるものを魔女から授かる事は魔術的な儀式の一種。すなわち今妾たちがしている行為も高尚な儀式の一つなのだぞ?」
「へっ、そうかよ。だ、だったら少しは高尚に見える努力をして欲しいもんだぜ……」
「ふっふっふ、儀式をどのように進めるかなど妾の勝手であろう? ……さて、ただ舐めるのにも飽きてきたな。そなたもこれだけでは物足りぬだろう?」
 ……正直、今のままでも十分に気持ちが良いのだが、それを言うとまたベアトに馬鹿にされそうなので、何も言わないでおく事にした。
「うぁっ……!?」
 しかし、その沈黙は次の瞬間簡単に破れた。股間部から、これまでにない刺激が流れ込んできたのだ。
 見れば、ベアトが俺の肉棒を口の中に頬張っている姿があった。俺の足の間に両膝を付き、片手を添えて自らの口の中へ肉棒を入れているその光景は、とんでもなく卑猥な物だ。
「……はぁ……ぁあ……」
 訳の分からないうめき声が自然と零れた。何せ、股間部からは淫靡な刺激が絶え間なく流れ込んでくる。ベアトの口の中は暖かく、そして何より柔らかかった。それだけでも気持ちが良いというのに、ベアトは更に口内で俺の肉棒に舌を這わせ、縦横無尽に動かし、更に喉奥の方まで入れてみたり、逆に戻してみたりとピストン運動を加えている。それは、先ほどの規則的な舐め方とはほど遠い。しかし、だからこそ快楽の大きさは今までと比較にならず、気を抜けばあっという間に白濁液をぶちまけてしまいそうだった。
「ちゅぶ……ちゅ……びちゃ……ちゃ」
 下品な音を立てながらベアトは上目遣いでこちらに目を合わせてくる。少し含み笑いをした小悪魔的な表情だ。彼女の言葉は勿論聞こえてこない。だが、その表情からは、“どうだ気持ちいいだろう?”というベアトの声が今にも聞こえてきそうだった。それが俺の倒錯的な何かを刺激したのか、ベアトの顔を見ているだけで興奮が際限なく膨れあがっていきそうだった。
「……はぁ……あぁ……く……ぁあ」
 俺は肉棒に与えられる刺激をひたすらに傍受していた。何か言葉を出す余裕なんて微塵もない。第一そんな事より、この快楽を少しでも楽しむために全神経を股間部に集中させたかった。
 ……そして、あっという間に射精の兆しが見えてきた。もはや何も考えられない。呼吸をするのも忘れてしまいそうだった。
「……ぁあ、……くぁ……! ……で、出る……!」
 我慢の限界を超え、俺は恥も忘れて一息に叫んだ。……が、ぽんっという間抜けな音が聞こえたと思ったら、それっきり嵐のような下腹部への刺激がぴったりと止まった。まるで台風の目が来たかのようだった。
「……あ……れ……?」
 出したいといくら願っても、あと一歩の刺激が足りず、どうやっても射精する事ができない。……これでは拷問でもされているようなものだ。
 見れば、ぼんやりとした視界の向こうに、反り返った俺の肉棒があった。ブルブルと小刻みに震え、今にもその先端から白い液体を噴出させそうだった。
 そして、その先にベアトの顔があった。口元から唾液がだらしなくしたたり落ちている。……いや、もしかすればそれは唾液だけでなく、俺の肉棒から零れた体液も混じっていたかもしれない。
「……ふぅ。くっくっく、辛そうだなぁ戦人ぁ。だが、まだまだ射精などさせるものか。もう少し妾に遊ばせろ」
 口元の液体を拭いながらベアトは言った。息が上がったのか、それとも向こうも興奮してきたのか、顔が少し紅潮している。
「……はぁ……はぁ……。ち……、人の大事な物をオモチャ扱いかよ……。これを高尚な儀式呼ばわりしたら、かえってバチが当たりそうな気がしてきたぜ……」
 呼吸を整えながら、俺は苦笑いをした。
「ほぅ、ではこの儀式はここで中断という事にしようか。どうやら、そなたはこの儀式のやり方が気に入らないようだからな。そんな状態で儀式を続けるのは、妾も少し抵抗がある」
 ベアトは目を細めて言う。
「……お、おいおい冗談だぜ冗談。悪かったから、そんな中途半端な事は勘弁してくれ」
 そのベアトの言い方が少し本気に聞こえたので、俺は慌てて謝った。こんなところで行為を中断させられちゃ、この先俺は永遠に自分の軽口癖を恨み続けるだろう。
「ふっふっふ、こっちこそ冗談だ。しかし、この程度の冗談も通用しないとは、相当に溜っていると見た。何処ぞの中学生かそなたは。……くっくっくっくっく」
 そう言われて、俺はようやくベアトの瞳の奥に、相変わらずの小悪魔的な笑顔の色がある事に気付いた。
「……あ、あぁ、そうだよ悪ぃかよ。こちとら、この妙なゲームに巻き込まれて以来、一度もマスかきしてねぇんだ。エロイ事に関しちゃ必死になって当たり前だろ」
 俺はもはや弁解が不可能と悟り、真っ赤になりながら開き直ってみせた。
「結構結構、素直でよろしい。雄とは本来そのような生き物だ。下らんプライドを無様に守っていても損をするだけであろう。正直になった褒美として、そなたの一番好きな部位を使って一度目の射精をさせてやる」
 ニヤニヤと顔を崩しながらベアトは言う。その表情を見ていても、不思議と苛立ちは感じなかった。……むしろ、妙な興奮を覚えたくらいだ。その証拠に、俺の肉棒はさっきよりも激しくその身をビクビクと震わせている。
「……一番好きな部位?」
「そうだ。確かそなたは乳房が好きであったな?」
「あ、あぁ……まぁ」
 俺は生唾を飲み込みながら頷いた。胸を使って一体どのようにベアトは射精に導いてくれるのか。想像がつかない分、期待は大きく膨らんだ。
「くっくっく。膣の中よりも乳房に幻想を抱く青っぽさが実にそなたらしい。……では、このような事をすると嬉しいのではないか?」
 そう言って、ベアトは依然勃起状態を維持している俺の肉棒を掴み、自分の右胸にドレスの上から押しつけた。
「ぅ……あ」
 ……口内とはまた違った柔らかさと気持ちよさが、亀頭の部分から伝わり始める。
「触れさせただけでとろけそうな顔をしおって。やはりそなたは面白い。どれ、もっと遊んでやろう」
 ベアトは、ゆっくりと右胸に肉棒を擦り始める。上下左右、円状、ジグザグなど、様々な動き方で肉棒がベアトの柔らかい乳房をなぞり、その度にあらゆる方向からの刺激が俺の下腹部を襲った。ドレスの上からでも、十分な柔らかさが伝わってくる。時折、場違いな感触を感じるが、それが僅かに硬くなったベアトの乳首であると気付くのに、さほど時間はいらなかった。
「はぁ……はぁ……ぅ……く」
 たちまちの内に、俺の呼吸は再び乱れてきた。
「乳房で遊ばれるのがそこまで嬉しいか。見ろ、そなたから出た体液でドレスが汚れてしまったぞ」
 見れば、確かにドレスの右胸の部分が液体によって濡れ、ほのかに光を反射させている。明らかに俺の先走り汁によるものだ。しかしそれを見ても罪悪感は全く湧いてこず、むしろ豪華なドレスを俺の卑猥な体液で汚している状況に、妙な興奮を覚えていた。
「何だ、口の中に入れているときよりも硬くなってきたぞ? ドレスの上からだというのに、そこまでこんな脂肪の塊が好きかこの変態め。では、直接触れさせたら、そなたはどうなってしまうのだ?」
 言って、ベアトはドレスの上半身の部分だけを器用に脱いだ。少し大きめの二つの乳房が、俺の目の前に現れる。官能的な曲線美を描いた双丘の先端には、桜色の突起がぷっくりと付いていて、それがベアトの呼吸に連なって微かに揺れている。俺は、その様子を舐めるように凝視した。
 その突起に、俺の肉棒の尿道口辺りが直接押しつけられる。瞬間、全身が痺れるかのような強い刺激が走った。ドレスの上から味わった感触よりも、遥かに柔らかい。何より彼女の吸い付くような肌の感触が、先ほどとは比べものにならないくらい心地よい。
「どうした? これは以前そなたが牛チチと言い放った乳房だぞ? それが、そこまで気持ち良いのか?」
 言いながら、ベアトは乳房に凹みができるくらいに力を込め、俺の亀頭を中心に何度も乳首で擦りつける。
 しばらくして、乳首の感触がさっきより更に硬くなってゆくのを感じる。見れば、俺の体液で濡れた桜色の乳首の先端が、明らかに勃っていた。同時にベアトの表情を伺うと、彼女が赤面しているだけでなく、少し息を荒くしているのが見てとれた。……そう、余裕を見せているベアトも、何だかんだ言ってこの淫靡な状況に興奮しているのだ。
「……はぁ……戦人ぁ、そなた今にも射精しそうな顔をしておるぞ?」
「ぁ……ぅぁあ……はぁ……! ……い、いっひっひ……てめぇも、気持ち良さそうな顔をしているように見えるが……はぁ……俺の見間違いか……?」
 指摘してやると、途端にベアトは顔中を赤く染める。耳の先まで真っ赤だ。
「な、何をこの、調子に乗りおって……。え、えぇい、茶番は終わりだ……! そなたの精液を徹底的に絞り上げてやる……!」
 言うと同時に、ベアトは二つの乳房の間に俺の肉棒を挟み込んだ。そして、亀頭めがけて唾液を何滴か垂らす。唾液は亀頭から流れ落ちて竿の部分をしたたり、最終的に乳房の間の肉棒が収まっている辺りを艶めかしく濡らした。
 ベアトはその様子に満足すると、両手で二つの乳房を左右から押し込み始めた。
「う……っくぁ……はぁ……!」
 当然、乳房に挟まれた俺の肉棒にその圧力が全てかかる。肉棒の左右の方向から急激に柔らかさの波が襲いかかってきた。
「ふっふっふ、もう軽口が叩けなくなったか? だが、まだまだこれで終わりではないぞ?」
 そう言って、ベアトは更に力を込め、まるで乳房の間ですり潰すかのような勢いで俺の肉棒を挟み込み、上下に擦りつける。しかし、痛みなんてまるで感じない。むしろ、力が込められれば込められるほど気持ちが良い……。
 肉棒には、乳房の柔らかさだけでなく、ぬるぬると濡れた感触も伝わってくる。それは最初ベアトの唾液だけかと思った。だが、よく見れば俺の肉棒の先端から大量にあふれ出た先走り汁や、ベアトが谷間にうっすらとかいた汗も混じっているようだ。それが立てたにちゃにちゃという音が、俺たちの息遣いと共に部屋中に響き渡る……。
 ベアトの体液と俺の体液が一緒になり、俺の肉棒に塗りたくられる。それを想像すると、俺の体中が熱を持ったかのように熱くなった。
「……ふぅ……っく、そなたのそれが……、妾の胸の中でビクビクと脈打っているのを感じるぞ。……大きさも硬さ熱さも、これまでで一番だ……。」
 ベアトの乳房が、俺の肉棒に沿って柔らかく形を変えている事から、彼女の言葉が本当である事を理解した。
「はぁ……ぁあぁっ……く……はぁっ……!」
 もはや言葉など出なくなっていた。俺の口からはただただ激しい呼吸音のみが零れている。
 そして、激しい尿意によく似た感覚が、俺の底から急激にせり上がってきた。
「……べ、ベアト……! はぁ……ぁっ! で……出る……!」
 自然と、獣のような叫びを上げた。羞恥心も何もない。ただただ、俺は目の前の快楽の波に溺れていた。
「だ、出すが良い……。今度は邪魔せぬから……はぁ……好きなように出せ……!」
 ベアトは言うと共に、更に強く肉棒を擦り上げ、自動的に俺に伝わってくる快感も強くなった。にちゃにちゃとした卑猥な音が、一層大きく部屋中に響き渡る。
 そして、自分で意識するまでもなく、強制的に限界を乗り越えられた。
「はぁ……ぁああっ……はぁ、はぁ……! ………………うぅっ……!!!」
 瞬間、脊髄を貫くような快感が走った。同時に、俺の肉棒から無茶苦茶な量の白濁液が飛び出す。それは、ベアトの胸の中だけに留まらず、顔、肩、果ては下半身など、様々な場所へほとばしり、それぞれを白くぬらりと汚した。
「そ、想像以上に出したな、そなた……」
 ベアトは頬に付いた精液を片手で拭った。粘液が白い糸を引くのが見える。
「……はぁ……はぁ……」
 俺は深い呼吸を何度も繰り返した。体全体に強烈な脱力感と疲労が襲いかかり、意識が朦朧としてくる。けれども、股間の肉棒からだけは、いつまでも性的な刺激が流れ込んできていた。見れば、それはベアトの胸の中で嬉しそうにヒクヒクとうごめき、時折思い出したかのように先端から精液を零している。まるで、自分とは別の生物のように見えた。
「ふっふっふ、まったく、妾の自慢のドレスをこんな風に汚したのはそなたが初めてだぞ」
 半ばぼやけた視界の向こうで、ベアトがにぃっと笑うのが見えた。その下には、精液に濡れたドレスのスカートの様子が確かにあった。それはまるで、黄金の刺繍の中にもう一つの白い模様を縫ったかのように見えた。
「そ、そりゃ……光栄なこって……」
 気を抜けばすぐに飛びそうな意識の中、俺は何とか言葉を返す。
「待て待て、何を眠そうな顔をしておる。これはまだ前戯に過ぎぬぞ?」
「そ、そう言われてもな……男ってのは出すもん出したら嫌でもこうなるんだよ」
「ほう、しかしそなたのこれはまだまだ快楽を得たがっているようだが?」
 言って、ベアトが精液まみれな俺の肉棒を舐め回した。敏感になっている股間に、再び甘い刺激がまとわりついてくる。途端、まるで底から這い上がってくるかのように、俺の中で肉欲が燃え上がり始めた。……どうやら、本能は極上の快楽とやらを得たくて仕方がないらしい。それに気付くと共に、体に残っている僅かな理性は、本能によって飲み込まれていった……。
「くっくっく、オルガルスムを経て尚ここまで妾の体を欲するとは。嬉しいぞ戦人」
「そうかよ……だ、だったら、早く魔法をかけてくれ……!」
 もはや、羞恥心もプライドも全て理性と共に何処かへ流されてしまっていた。あるのは、ただベアトの肉体という名の極上の快楽を欲する本能のみ。
「そなたは本当に可愛い奴だな。言葉も仕草も体も心も全てが妾の物欲を刺激してならぬ。……ここまでニンゲンのままにしておくのが勿体ないと感じたのは初めてだ。やはりそなたは妾の家具になるのが一番相応しい。
 悦べ戦人、妾がこれほどまでニンゲンを褒める事など滅多にないことだ。それは、あのゲーム盤から死者が出ぬ事よりも尊い。正に奇蹟と言っても過言ではない。そなたは、その奇蹟の体現者となったのだ」
 ベアトの言葉は、ほとんど俺の頭に届かなかった。当然だ、今の俺の中には欲望しかないのだから。
「くっくっく……言葉すら理解できなくなったか。妾は本当に嬉しいぞ戦人ァ?」
 ベアトが何かを言ったと思った途端、俺の体はベッドに押し倒されていた。見上げれば、ベアトが俺の胯間の上に膝を立てて跨っていた。……そして、ゆっくりとドレスのスカートを両手でたくし上げる。膝が見え、白い腿が見え、……やがて、俺が待ち望んでいたベアトの膣が目の前にさらけ出された。金色の茂みの向こうに、艶めかしい桜色の入り口が見える。
 その入り口がゆっくりと着実に俺の肉棒の先端へ近づいてゆき……そして、遂に接触した。金色の茂みが、俺にくすぐったさに似た刺激を与えてくる。
「……べ、ベアトぉっ……!」
 俺は獣のような咆哮を出し、ベアトの中に入るために腰を上げようとした。
 ……しかし、動かない! 全力で筋肉を動かそうとしても、眼球すら満足に動かす事ができない。まるで、金縛りになったかのように体中を得体の知れない痺れが襲っている。
「慌てるな戦人。そなたに魔法をかけるには、少し条件が必要なのだ」
 ベアトが、諭すような口調で語りかけてくる。……いや、語りかけてきているのではない。俺の心の中に直接言葉が送り込まれてきている。だから、俺は嫌でもその内容を理解する事ができた。
「な、何だよ条件って……!? そんなのどうでも良いから、早く入れさせろよっ!!」
 俺は唯一動かす事ができた口を使って、精一杯に吼えた。
「妾としてもそなたと一緒になりたいのは山々なのだが、そなたの心がそれを邪魔していてな」
「心っ? 何言ってんだ、俺はお前をこんなにも求めているんだぞ!?」
「いや、そなたは未だ心の底で魔法を否定している。魔法を体現させるのは、奇蹟を信じる純粋な心。軽い魔法程度なら多少それが足りなくても実現できるが、今から妾がかけようとしている魔法は、そなた自身の体に変化を及ぼすという高度な魔法だ。そなたが少しでも魔法を否定していては、満足にかける事などままならん」
「じゃ、じゃあ俺は一体どうすれば良いんだ!?」
「安心せよ、小難しい事は必要ない。ただ“魔女を認める”と言葉を発せばそれで良い」
「……え?」
 魔女を認める。その言葉を聞いた途端、何故だか俺の体に寒気が走った。今更魔女を認めるなど何も難しい事ではないはずなのに、実際にその言葉を発しようとすると、ひどく抵抗がある。
 ……本能が警告しているのだ。欲望に染まってなお、その防波堤を越えてはならないと、俺の深層心理が必死に止めているのだ。
「お、俺は……」
「どうした戦人? 極上の快楽を得たくはないのか?」
 言ってベアトが俺の肉棒へ更に力を込めて膣口を押しつけてくる。亀頭の一部が、既にベアトの中に入っているのが見えた。それだけだというのに、俺の全身に快感の波が込み上げてくる。それは、これまで体験した事のない、正に極上の快楽と言えた。
 ……少し入れただけでこんなに気持ちいいのだ、完全に挿入してしまったら、どんな快感が得られるのだろうか。それを想像しただけで、本能の警告は雲のように薄くなってゆく。
 そして……。
「お、俺は……“魔女を認める”。だ、だから、早く中に入れさせてくれ!」
 わずかな天秤の揺れが、俺にそう叫ばせた。



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