スレ内で頂きましたアイディア
「ベアバトとウィル×理御をザッピングさせた物語」を自分なりに作ってみました。
●エロいところがなかなか出てこない
●無駄に長い
などの問題が多いことをあらかじめ記しておきます。


※冒頭の文章は、こちらのSSにインスパイアされたものです。素晴らしい文章の劣化パロディですみません。

【0】
「……………………」
「………何か、言いたげだな」
「……………………ええ、山ほど」
「そんなに恨みがましい目で見るんじゃねぇ」
「………ないがしろにしないと言ったのに………」
「………あ。……い…いや、悪かった、…って、泣くな、すまねェって」
「う……。泣いていません。………反省してください、心の底から」
「ああ、する………ってッ、こここここら抓るな、痛ぇッて」
「私はもっと、痛かったんですが」
「これよりか。……………悪かった」
「その間が不愉快ですが、まあいいでしょう。大体、あなたはその……大きいのですから、もう少し慎重さというものをですね…」
「ん?……………でもお前かなり濡れてトロトロだったじゃ…………いっ………たたたたたッ!」
「本当に言葉を選びませんね! とにかく、痛いものは痛いんです。………止めてくださいと何度も言ったではありませんか」
「いや、なんというか、お前、顔真っ赤にして、とろけた顔して、おもいっきり締め付けてきて、そんなこと言われても途中で止められねぇというか、……そういうもんだろ」
「どういうものですか、…さっきから、まったく反省の色が見えません! ………しかも、………乱暴にするし…な中にですね、……だ…出したのかとおもったら、その、…何度も…」
「多いのはいい事だろ」
「良くありません! いくら何でも6回は多過ぎです! 非常識です! 大体、そうするのなら……その、もっと……優しく扱ってくれても……あんなに力任せに動かれたら……壊れてしまうではないですか」
「………………悪かった」
「………………」
「それならな、それなら俺にも弁明させろ」
「………む。…聞かせていただきましょうか」
「お前がなかなか服を脱がないのが悪い」
「なっ………、意味がわかりません。関係ないじゃないですか、大体そんな事言って最後には脱がせてくるじゃないですか」
「いいや、関係ある。全部見ないで終われるか。それをさしおいても、やり残した事が多すぎる。それにだ、なんでいつも背中を向ける。後ろからされるのが好きなのか?」
「そんなわけないでしょう!! 何を考えてるんですか。………そんないいものではないでしょうに、…胸だって小さいし」
「小さいのを育てていくのがいいんじゃねぇか」
「!!!、何考えてるんですか!…なななななんですか、育てるって、何をする気だったんですかっ」
「お前、言ったら抓るだろ」
「………」
「真顔で手をわきわきさせるな。もちろん貧乳は貧乳でいい。感度もいいし、だけどもな、こう、俺色に染めた感があってだな………ってェな!…」
「………確かに、…教育の必要が有りそうですね…そのような非常識な事を言い出さないように、……あなたの考えを、矯正した方がよいでしょう」
「……そ、そう言えばだ」
「なんですか」
「大きいって、何と比べてなんだ」
「うっ………せ、世間一般のその…標準とです」
「そんな事を言って、本当は興味があっていろいろ勉強してるんじゃないのか、優等生」
「……………………」
「ねだるのが恥ずかしいからって押し倒してくるしな」
「言いがかりです…っ」
「やる気があるのかないのかはっきりしろ。しかも、普段おくびにも出さない奴が、「離さないでください」って言ってしがみついてきたらそりゃあもう頑張るだろうが、男として」
「そ、それはそう言う意味じゃありません。何を自分の都合良く解釈しているんですか。それから、貴方の行動で一番訳が分からない事が残ってます。これだけは言わせていただかねば腹の虫が収まりません」
「何だ、言ってみろ」
「………………どうして、首を……………噛むんですか」
「うっ…」
「一般的なんですか、世間の常識なんですか?あのような異常なこと…どうしても理解できなくて調べてみましたけど、意味が分かりません」
「………調べんな」
「ああ、ただ一つだけわかる事がありましたよ、ネコ科の生き物が交尾をする際に雌を大人しくさせる為に噛むんでしたっけね」
「よく、調べたな…人間でも噛むヤツは居ると思うぞ、うん」
「獣ですかあなたは!」
「だがな…」
「なんですか?」
「そんな猫の耳を生やしているヤツに言われたくない」
「えっ、あ…だからこれは魔法で」
「しかも、尻尾まで有りやがる」
「ちょっ…強く掴まないで…くだっ……さ………〜〜〜〜っ」
「さっきは散々抓ってくれたじゃねェか……鏡を見るのが恐ろしいぞ」
「本当に……ぁ……駄目……です………っ」
「普段はかっちり着込んで性別不祥なくせに、そんなスカートの割れたメイド服まで着て脚を見せ付けやがって」
「だから、これには理由が…あるんですってば……ちょっ、耳……、噛まないで………」


【1】
暇つぶしに右代宮家の書斎を訪れたウィルが見つけたのは、品のよい内装に重厚な家具と、古今の蔵書たちと、頭を抱えて机に突っ伏している次期当主の姿だった。
このご時勢、20年近くそれで突き進んでしまいもはや軌道修正は困難かと思われていた末期の頑固生真面目優等生・右代宮理御のキャラ崩壊を目の当たりにし、最初は今後の円滑な友好関係のために見なかった振りをしようと思っていたウィルだが、5分ほど経過してもぴくりとも動かないのでとうとう諦めて声をかけた。
「おい、生きてんのか?」
「!!!」
カッと目を見開いた理御がはじかれたように起き上がると、机の上にちらばった本と文房具たちをきれいに並べてノートをきちんと参考書の一番下に隠し、ついでに乱れた髪を整え、すっと椅子を引いてさわやかに輝く笑顔で隣の席を薦めた。腕が4本くらいに見えた。
「みっともないところをお見せしました、失礼しました」
「本当にな」
言葉を選ばない事に定評のある相棒の一言に、理御の口が引きつった。わざとらしく咳を一つし、穏やかに微笑む。
「それで、何かご用…」
「で、何々「ベアトリーチェは言った「久しぶりにゲーム盤を作ってみたくなったのだ…」何だこれは」
理御の話など全く聴いていないのか、あごに手を当てて、眉間にしわを寄せつつ、ウィルはちゃっかり手にしていた大学ノートを開いていた。
「わざわざ隠したのに!空気を読んでください」
もう涙目である。
「空気は読むものじゃねェ、吸うものだ」
もっともらしい間違った事を言って、ウィルは再び棒読みの朗読に入る。
大学ノートの表紙にはマジックで「happiness of golden witch」と書かれていた。


【2】
「ベアト、とりあえず降りなさい」
右代宮戦人がその日貴賓室に進入して、腕を組んだまま空中に浮いたまま腕を組み片足の指で器用にコマを挟み器用に上体をねじり、考え事をしている嫁の姿を見て一言目に発した言葉がそれだった。ウィルより早かったのはとにかくうちの子はやくどうにかしないとという身内感覚のなせる業で、やさしさや気遣いとは次元の違う話だった。
「おお、戦人ではないか」
駒を器用に脚で打ち上げ、くるんとドレスの裾を優雅にさばいて、カウチソファにゆったりと足を組む。
手にした金のキセルを逆さに軽くテーブルに打ちつけ、ソファと同じデザインの小さなテーブルにベアトとともに宙に浮いていたゲーム盤を着地させると、行儀よく駒たちが並ぶ。満足げに喉をそらして、かろうじて優雅な笑みといえなくもないドヤ顔でふんぞり返る。
「へぇ、珍しいな。領主は引退したんじゃなかったのか?」
戦人が向かいの席に腰を下ろし、盤を覗き込んだ。見慣れない駒を見つけてひょいと摘み上げる。
「ん、なんだこの駒は。今まで使ってた駒じゃないよな?」
水晶でできた白の駒。冠の部分に銀色の片翼の鷲が彫刻されている。
「理御の駒だ。今回はこの駒を使用する」
「ん、それだと魔女幻想が使えないんじゃねーのか?」
ベルンカステルのゲームを思い出して、戦人の表情が翳った。
真実と呼ばれた記録。そのことを思い出しているのだろう。
「そなたが何を心配しているのかはわかる。…妾は別に残酷な殺し合いのゲームを作っているわけではない。あとついでに言えば」
ベアトリーチェはニヤリと笑うと一つの駒を駒置き場にぽいっと投げた。
あ、とつぶやいて戦人の目が見開かれる。
「今回はそなた出番ナシであるぞ。悔しいか、悔しいであろう。ふふふふ…、はははは、くっひゃっひゃひゃひゃひゃひゃ!」
ヒロインの風格を忘れさせてくれる、見事な三段笑いだった。


【3】
「なるほど、偽書を作んのか」
小学生の作文の朗読にも劣る心のこもらない朗読っぷりを披露したウィルはノートから顔を上げた。
「ええ、ベアトリーチェの笑顔が見れる話を」
理御は胸の前で手を組んでつぶやいた。
はずむ声とその輝く瞳は乙女のようで、漫画であればその顔の横にはおそらく雲のような吹き出しで中に少女マンガ的に目に星を入れたベアリーチェの微笑む顔があるに違いない。
「…ベアトリーチェは言った「碑文殺人はしません、戦人さん、私はあなたが好きだったんです」…」
無表情のままそこまで読んで、ウィルの眉がピクリと動いた。
「…キャラが崩壊してんぞ」
「「いいベアトリーチェ」なんです。私の物語のベアトは殺人なんかしませんから」
理御の目はまっすぐだった。ウィルの頬が引きつった。
「「当主は蔵臼さんに、銃は海に流して、爆弾は黄金で得た資産で業者に撤去していただきました。のこりは、親族全員で山分けしてください。管財人は源次さんにおまかせします」」
ウィルの目が泳ぎ始めた。
「…………………」
いろいろな言葉がウィルの中で生まれた。
下を向いてじっと考え、頭をかき、遠く視線を彷徨わせたり、腕を組んだりしつつ、心を蔑ろにしないように考えたりしながら、
「……………………あと5ページぐらいで、終わりそうだな。」
最大限の譲歩もって、それだけ、言った。
沈黙。
理御の額から、冷や汗がこぼる。笑顔が引きつり、眉尻が垂れ、…再び、机に突っ伏した。
「そう、私には壊滅的に、文才がない…」
人間、なんでもできるわけではないのだ。
「い、いや、なんだ、その、アイディアは悪くないんじゃねェのか?この、ベアトリーチェが今回はベアトは人殺しをしないゲーム盤を作ろうとしているところとかだな、…ん?」
その違和感に最初に気づいたのは、ウィルだった。


【4】
ベアトが楽しそうにゲーム盤を組み立てていく。新たな片翼の当主が、幸せな物語を作るゲーム盤。ここに彼女が新たなアイディアを、加え、見立て殺人を組み入れていくのだろう。
最後にどんでん返し、誰も死んでいなかったのだ。
戦人も、その楽しそうな後姿をテーブルにひじを突いてにこにこと見守る。
優雅に脚を組み変え、時に紅茶に口をつけ、時に花のように微笑み、小悪魔のように微笑し、たまにきひひひひと変な笑いをもらしたりしてゲーム盤作りに集中…
「飽きた」
「はええな!」体制が崩れて戦人の顎が落ちた。
すっくと立ち上がるベアト。
「どこ行くんだ」
「少々の気晴らしよ、なに、慣れぬことをしているのでな、…ゲーム盤に悪戯するでないぞ」
早口でまくし立てて、ついでにひらりと金色の蝶に姿を変えて、姿を消した。
「どうしたんだあいつ、なんか落ち着きがないっつーか」
戦人はゲーム盤を見渡す。自分の駒がない代わりに、ウィラードの駒が置いてあった。そして、見慣れたクイーンの駒に目が留まる。
クイーンはベアトリーチェの駒…。
「……結局は、猫箱なんじゃねーか」
一緒に存在できないはずなんじゃねーのかよ、と呟いて戦人は駒を戻す。殺し合いは確かにないだろうが、結局、それでは何も変わらない。
戦人の表情は険しくなる。
何かを思い出すように、目を閉じ、歯をぎりっと噛み締めた。
暫くの沈黙の後、頭を左右に振り、閉じた目を見開き、不敵に口の端をつりあげ、笑った。
「………………悪戯するなって言われてしないやつはいねぇよな。…駄目だぜ、ああ、全然駄目だ!」
戦人の手が白の駒をつまみあげた。


【6】
参考書と辞書と、教科書が折り目正しく並んだ机の上で、
パジャマ姿の右代宮理御は、上体を倒し腕の上に頭を載せて、大きくため息をついていた。
(結局、上手く書けなかったな…)
「理御」
誰も死なない物語なんて、結局無理なのか。
「なあなあ、もっと話を聞かせろよ〜」
先ほどから何かうるさい。此れは幻聴なのか。
「愉しい話題を独り占めするなんてずるいではないか。いまは楽しい楽しい夜の時間。甘い茶菓子と甘い話題はみなで分け合うべきだと思わぬか」
やはりこの間のベアトリーチェの葬儀が影響したのか。勉強机に取り付けられた本棚の間から見える窓に、しかめっ面の自分と、黒いドレス姿の魔女が並んで見えるのだ。
「何だよもう。理御、妾の話をきけよ〜」
ジタバタと暴れるベアトを半眼で眺める理御、
「明日の予習がありますので」
ノートに向き直る。
「がーん!」口調はフランクに、しかし上品に口元を押さえて魔女が嘆く。
「退屈プラス無視プラス存在否定とな。もう妾死ぬしかないじゃん。ううむ、なんと手強い…。そなたは、魔女狩りなのか?いや、それはそなたの想い人のほうであった筈…」
「誰が想い人ですか。勝手な事を言わないでください!」
かわいらしく小首をかしげ、人差し指を頬に当てるベアトにくってかかる理御。
ベアトはニヤリと笑うと空中で上品にターンし、理御の背後に回りじゃれついた。
しまった、釣られた。
「なんだよぅ。ぎゅうううって抱きかかえられて、『離さないでください』なんて顔真っ赤にして言っちまったんだろ?好きじゃなきゃ言えないよな~」
首に抱きつきながらほっぺをぷにぷにとつつかれた。
「顔を真っ赤になんてしていません!捏造はやめてください」
歯をむき出しにして言い返したところまではいいのだが、顔が真っ赤である。
「…まったくあなたは、猫みたいなひとですね」
ため息をついて、額を押さえて首を振る。
「くっくっく。そなたの目下最大のライバルはたしか猫であったな」
「ダイアナと張り合ってどうするんですか」
「お、認めたな、認めたなー!!そうだ、そなたにかわいらしい猫耳をつけてみようか。あやつもイチコロやもしれん」
両手をかわいらしく打ってにっこり顔。
「…………………………」
シャープペンシルを机に置いて、ひざに握りこぶしを乗せてじっと虚空を見る。窓ガラスのベアトリーチェと目があった。
「………悪いことは、しませんね?あと、猫耳も駄目です」
「もちろんだとも」
胸を張って、人懐っこく笑ったベアトリーチェは魔女というよりも無邪気な子供のよう。
彼女の背後に見えるテーブルの上にはアフタヌーンティー用のスタンドに色とりどりのお菓子が山と積まれ、それらを眺めていると、月曜日の予習への興味はさっぱり薄れてしまった。

「ふむ。それでそなたは、ウィルのことが心配なのか」
「幻想の人だとは、知っているんです。だから、いつかどこかに行ってしまう、」
ダックワーズをくわえたまま、「ふむふむ」とうなづくベアト。
「それはいいんです。永遠に同じものなんてあるわけないですから」
理御の表情が、険しくなる。
「彼の腕を、私が奪いました…そして、私の人生にそこまでの価値があったかを、私はまだ、彼に示していない」
「ひて」
ぶんぶん、首を横に振る。軽く噛んで咀嚼して、紅茶を一口、ナプキンで口元をきれいにぬぐうと、
「失礼。して、そなたは、ウィルに言ったのか」
「何をですか?」
「決まっておろうが、想いを伝えたのか、一拓であろうが」
「そ、そんな。大体かれは恩人であって、その…」
理御の後ろ毛がぴょこんとはねる。もじもじと口ごもった。
「…彼にとって、よい相棒となれれば、いいなー、と。本当にそ、それ以上は何も…」
「何も?」
ベアトの声から先ほどまでの愉しげな色が消える。
不意に訪れた彼女の変化に、理御は言葉を飲み込んだ。
それはガラスのような瞳。美しく澄んではいるが、光を感じない。心が見えない。
「…ハッピーエンドを見せる、と言ったのにな」
その呟きは紅茶の香りに溶けて消えてしまいそうなほどささやかで、聞き取れるかを試すかのような呟きだった。
「ベアトリーチェ?」
ベアトは静かに目を閉じた。何かを反芻するように、下を向いてテーブルに置かれたティーカップの水面を見つめる。理御の位置から見えない飴色の水面にもう一人の少女の表情が浮かび上がった。
「妾からはそのようには、見えぬぞ」
今までの態度から信じられないくらい、それは淡白な表情だった。
「で、でも彼の言う「ハッピーエンド」は別にそういう意味で言ったものでは、ないのでは…」
「それでは、妾がにとってのハッピーエンドとは何なのか、そなたは考えたことはあるのか?」
ベアトと自分は表と裏。
「妾の唯一の希望の光。妾とそなたは表裏。」
『さあさ、思い出してごらんなさい。あなたがどんなな女の子だったのか。それはそれはとても    な姿』
どこかで聞いたことのある魔法の言葉。
「ベア、ト…」
いつの間にか手をつながれていた。つないだ手から、幻のように光があふれ出す。そこから流れてくる。暖かなもの。
赤毛の男の子。これは
「ばと、ら…君?」
その瞬間、心が跳ねた。
「………っ!」
息が詰まる。ぎゅっと締め付けられるような、何か。
笑顔、涙、怒り。さまざまな出来事の記憶が猛スピードで意識を通り過ぎていった。
捕まえられない。記憶にすら残せない。残せないんじゃない、残させないんだ。あらゆる記憶が、理御の理解を拒絶している。ただただ圧倒的な情報量が、一つ、彼女が彼を想っていたことだけを示す。
「ベアト、リーチェ…あなたは…」
何も残らないのに、ただ、目頭が熱くなった。涙が、抑えられない。

「失ったものは、還らない。人の想いも変えられない」
ベアトが続ける。
「できることは自分を変えることだけなのだ。妾には、それができなかった。妾には足りなかったのだ」
この島から出ることも、
真実を尋ねることも、
決別することも。
何一つできなかった。
可能性に取り残された自分の目の前にあったのが、あの運命のルーレットだったのだ。
そして理御は理解してしまう。
自分はすでに選んでしまったのだ。ベアトリーチェでない道を。
「私は…もう、あきらめないと、決めてしまったんでしたっけね」
「そなたが…選ぶがいい」
べアトは理御の両手を掴むと。にこっと笑った。
二人の声が重なる。知らないはずの言葉が自然と口から滑り出た。

「さあさ、思い出してごらんなさい。あなたがどんな幸せな女の子だったのか」

魔法、幻覚、思い込みなのかもしれない。現実逃避なのかもしれない。
ここにいるのは全てから開放された彼女と、生きる目的を新たにした自分。
だから、間違えることはない。迷う必要なんてないのだから。
自分に素直になる。ただそれだけの魔法なのだ。

「ありがとう、ベアトリーチェ。ごめんなさい、ここまでさせてしまって」
ベアトは黙って頷いた。
「だけど…、猫耳は頭が悪すぎます。引っ込めてください」
不許可だといったのに。理御は頭の猫耳を引っ張って見せた。
「えー、かわいいではないか。きっとウィルの奴も胸キュン、となるに違いないぞ」
「猫耳は猫についているからかわいいんです。猫好きの人ならなおさらです」
ピン、と猫耳が立った。
「ふん、そこまでいうなら、妾にも考えがある。…くっくっく、そなたの、みすぼらしい姿を思い出させてくれるわ!」
きひひひ、と悪戯っぽく笑いながら立ち上がるベアト。やっぱりこちらのほうが魅力的だ。
「え?」
にやっ、とベアトが笑う。キセルを振った。体の内側から、軽くポン、と何かがはじけるような感覚。
「こっ、これは…!」
白いエプロン、ふんわりした帽子。太股の大きく開いたスカートの間から片翼の鷲…
「うちの、メイド服…」
「よいよい、似合っておる。その衣装はニンゲンのものだ、文句はあるまいな?」
「で、ですけれど、これ、足が見えて…」
「ふっふっふ、後はわかるなガァプ?」
「もっちろーん☆」
天井からするりと現れる金髪たてロール。
「チラリズムいいじゃない、じゃ、がんばってねーん」
不可視の力で膝が崩れる。視界が暗転した。


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