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おかしい子」(2010/07/30 (金) 20:30:50) の最新版変更点

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「こ、こいつ、前から気持ち悪いやつだと思ってたけど……やっぱおかしいぜ! どっかおかしいぜ!!」 半狂乱になりながら、朱志香が廊下じゅうに響く声で叫んだ。 自分でも意識していなかった想い人を*され、その犯人がこの目の前の少女だと言わんばかりに声を荒げた。 「なぁ、おまえだろ! おまえなんだろ嘉音くんを殺したのはぁ!! 答えやがれぇッ!?」 朱志香はその少女に掴みかかり、溢れる怒りのたけをぶつけていく。 まだほとんど膨らんでいない少女の胸元をグンっと引っ張り、服のボタンを引き千切らんばかりにグイグイと力を入れていく。 「どうなんだよ、おい真里亞! 答えろ答えろ答えろぉぉぉぉッ!!!」 「………きひひひひ。 朱志香お姉ちゃん、なに本気になってんの?」 だが朱志香の訴えに、その少女……。 真里亞はただ薄気味悪く笑うだけだった。 まるで必死に声を荒げる朱志香を馬鹿にするように、ただ彼女をあざ笑うだけなのである。 「真里亞は殺してないよ? あれはベアトリーチェの魔法だよ。 きひひひひひひひひ。」 「うるせえ!嘉音くんをなんで殺した! おまえなんかに、なんで嘉音くんが殺されなきゃいけなかったんだよ! なぁ!」 「うー、だからちがうって。 ベアトリーチェがやったんだって言ってるじゃん、わっかんないやつだなぁ。」 「!?……こ、このやろおぉぉぉッツ!!!」 人一人が死んだ後とは思えない真里亞の言葉に、ついに朱志香はその拳を振り上げた。 今までに人など殴ったことがない彼女だが、その手にはっきりと悪意を含みながら……。 朱志香は幼い真里亞の顔めがけ、自らの拳を突き出した。 「…………なっ!?」 その場にいる誰もが凄惨な状況になるであろうと予想した、次の瞬間。 突き出した朱志香の手は、一人の女性の手によって止められていた。 さきほどからずっとこの状況を静観していた夏妃が、実の娘の愚行を止めに入ったのである。 「やめなさい朱志香。 そんなことをしても、あなたの手が汚れるだけです。」 「で、でも母さん、こいつはっ! こいつは嘉音くんをっ!!!」 母に止められても朱志香の怒りはおさまらなかった。 彼女にしてみれば、むしろなぜ自分の味方をしてくれないのかといった心境だろう。 だが朱志香のその考えは間違っている。 さきほどから夏妃も、この不謹慎なことばかり口にする少女にとめどない憤りを感じているのである。 だがだからといって、実の娘に暴力によってそれを解決させるわけにはいかない。 そうなると彼女にできることはもはや一つだけだった。 「……源次、この部屋は空いていますか?」 そう言って夏妃は、廊下に並んでいるある一室。 自分の立っているすぐそばの部屋に目をやった。 そこは、さきほど絵羽夫妻が見つかった部屋と同じ作りになっている客間の一室であった。 「空いておりますが……。」 主人の言葉に源次はどこか怪訝そうに答えると、彼はその部屋のドアを開いていった。 ギィっと音をたてそれが開くと、中はたしかに使われた形跡はなく、さきほどの凄惨な死体現場と同じつくりとは到底思えないほど綺麗に整えられていた。 「……真里亞ちゃん。」 「う~?」 夏妃は真里亞のことを呼ぶと、部屋の中に向かってクイっと首を向ける仕草をした。 彼女にこの部屋に入れ、と言っているのである。 「さぁ、入りなさい。」 「……う~。」 夏妃のその言葉に、真里亞はここにきて初めて躊躇した。 余計なことは一切言わず、ただ自分に入れと命令してくる夏妃。 説明も何もないその言葉だけが、かえって真里亞にとっては何よりも怖かったのである。 彼女の威圧してくる態度だけみても、自分がこの部屋でなんらかのお仕置きをされるのは明白だと感じたのだ。 「うー……。 うーうー。」 「何をしているのです? 早く、入りなさい。」 あくまでも凛とした声で、夏妃は真里亞に部屋へ入るよう命令する。 命令とはいえ、それはあくまで厳しいしつけを教える母親のようなもので、それでいて相手に拒否権は認めない厳しさも併せ持つものだった。 「…………ふん。 ま、いいけどね。」 観念した真里亞は、まるで反省していないふうにふてぶてしい態度でそれに従っていった。 どのみち幼い自分に拒否権はない。 ここで夏妃の言うことを聞かなければ、また朱志香お姉ちゃんにグダグダ言われるに違いないと思い、しかたなく部屋へと入っていくのだった。 真里亞が入るのを確認すると、続いて夏妃も部屋の中へと入っていく。 それに続き朱志香も入ろうとすると、夏妃は彼女の体をスっとせき止めた。 「!? か、母さん、何で……。」 「あなたは源次と一緒にリビングへ戻りなさい。 決して一人になってはいけませんよ?」 「そ、そいつと母さんが二人きりになるほうが危ないって! 私も一緒に!」 「……大丈夫、少しお灸をすえてあげるだけです。 源次、頼みましたよ」 夏妃がそう言うと、源次はかしこまりましたと朱志香の体を制した。 「さぁお嬢様。 ここは奥さまにおまかせしましょう……。」 「か、母さん……。」 「ごめんなさい、朱志香……」 いまだ納得できないといった朱志香の表情を見ながら、夏妃は部屋の扉をバタンと閉めた。 そして備え付けられている鍵をガチャリとかけると、取り付けられているチェーンもガッチリとかけていく。 絵羽夫妻が襲われた今となってはこれも無駄なことかもしれないが、それでもしないよりはマシだろうと。 そうして部屋を密室状態にすると、夏妃は部屋の中に向き直った。 すると真里亞はすでにベッドに腰をかけていて、これから自分が何を言われるのかを悟っているのか、どこか憮然な表情で笑っていた。 「きひひひひ。 なぁに伯母さん? 真里亞にお説教?」 「………………。」 真里亞の馬鹿にするような言葉にも動じず、夏妃はゆっくりと彼女の座っているベッドに近づいていった。 その眼光は鷹のように鋭く、もし真里亞が年相応の反応を見せたならおもわず泣き出してしまいそうなほど恐ろしいものだった。 「……言いましたよね。 これ以上不謹慎なことを言うと、伯母さんも本気で怒りますと……。」 そうしてギシギシとした威圧感を出しながら、夏妃は真里亞の体の目の前にまで近づいた。 すると彼女の頭の上にのっている王冠に手をやり、それをパシっと手に取る。 「!? うー、真里亞の王冠!」 すぐに真里亞はそれを取り返そうと手を伸ばすが、夏妃はわざと彼女が届かない位置にまでそれを掲げる。 「あなたにとって、大事なものですか? これは……。」 「うーうー! 返して返して! 真里亞のー!」 真里亞はベッドから立ち上がり手を伸ばすが、どうしても身長のある夏妃の手まで届かない。 しかたなくピョンピョンと跳ねると、夏妃は更に届かない上のほうにまで手を掲げてしまう。 「うー!!! 伯母さんイジワル! イジワルイジワル!」 「イジワルで結構。 これでわかりましたか? 大事なものを奪われる気持ちが……。」 諭すようにそう言うと、夏妃はあっさりと真里亞の手に持っていた王冠を返した。 彼女にとってこれが大事なものだと看破していた夏妃は、それを奪われる悲しみを彼女に教えようとしたのだ。 「うー……」 だがまだ子供であり、特殊な感覚をもつ真里亞にそんな想いが通じるはずもない。 真里亞はそれを、ただ夏妃が自分に対して悪意のある行動を取ったとしか受け止められなかった。 「……きひひひひひ。 伯母さん、まるで子供みたいなことするんだね? 真里亞がっかりだよ。」 「………………はぁ。」 真里亞に自分の心が届かないことに、夏妃は激しい頭痛を覚えた。 彼女のこの笑い声を聞くたび、頭の中をヘビがのたうつような気持ちの悪い感覚が襲ってくるのだ。 「きひ、きひひひひひひひ。 きひひひひっひっひっひっひ。」 それを知ってか知らずか、真里亞は更に気味の悪い笑いを続ける。 夏妃はおもわずその生意気な顔を張り倒したくなる衝動をグっと抑えると、代わりに別の方法で真里亞の笑いを止めさせようとした。 「きひひひひ。 ひっひっひ……。」 「その笑い声をやめなさい! 非常に不愉快です!」 自らの頭痛をかき消すほどの叫びをあげると、夏妃は目の前の真里亞の体をベッドに押し倒した。 小さく軽い体がパタリとそこに倒れると、彼女の着ている服が乱れに乱れる。 黒い短いスカートがめくれ、中からはまだ幼さを残すショーツが見え隠れしていった。 「……きひひ♪ なぁに伯母さん? 真里亞のこと、襲うの?」 だが真里亞はそれでも動じなかった。 あいかわらず嫌な笑みを浮かべながら、ベッドに押し倒された状態でも夏妃のことを余裕を持った顔で見つめていた。 そしてその全て見透かしたような表情もまた、夏妃の頭痛をより激しいものにしていく。 「痛っ……。 真里亞ちゃん、あなたは少し人の気遣いや優しさを感じるべきです……。」 「きひ、優しさ? 真里亞みたいな小さな女の子を押し倒すのが、伯母さんにとっての“やさしさ”なの?」 真里亞の言うことはもっともではあった。 つい乱暴に押し倒してしまったが、はたからみれば暴力を振るうことよりは背徳的な行為をしていることに夏妃は気づいていた。 だが次の瞬間、そんな倫理的なことはどうでもよくなるような驚くべき言葉を真里亞は口にしたのである。 「ベアトリーチェが言ってたよ。 伯母さんは昔から毎晩毎晩“大変”だねって。」 「……どういう意味ですか?」 「わかんない? 朱志香お姉ちゃんができるまで、十二年も叔父さんの上で腰を振って大変だったねってことだよ。 きひひひひ♪」 「…………!?」 真里亞の言葉に、夏妃は一瞬我が耳を疑った。 年の割にはおかしなことを言う子だとは思っていたが、まさかこんな低俗な言葉を吐けると思っていなかったからだ。 自分がこの家に嫁いでから長年感じている、心の奥底のドロドロとした劣等感……。 それをこの幼い少女は知っている。 見抜いている。 それが夏妃の中の大人として、女としてのプライドを引き裂いた。 「きひひひひ♪ ねぇ、毎晩どのくらい“や”ったの? どうして赤ちゃん“で”きなかったの? ねぇ、どうして?ねぇねぇねぇ?」 「…………りなさい。」 「え、なぁに? 聞こえないよ。」 「黙りなさいッ!!!」 激昂した夏妃は真里亞の言葉を止めさせようと、自らの唇を少女の唇にムチュっと重ね合わせた。
「こ、こいつ、前から気持ち悪いやつだと思ってたけど……やっぱおかしいぜ! どっかおかしいぜ!!」 半狂乱になりながら、朱志香が廊下じゅうに響く声で叫んだ。 自分でも意識していなかった想い人を*され、その犯人がこの目の前の少女だと言わんばかりに声を荒げた。 「なぁ、おまえだろ! おまえなんだろ嘉音くんを殺したのはぁ!! 答えやがれぇッ!?」 朱志香はその少女に掴みかかり、溢れる怒りのたけをぶつけていく。 まだほとんど膨らんでいない少女の胸元をグンっと引っ張り、服のボタンを引き千切らんばかりにグイグイと力を入れていく。 「どうなんだよ、おい真里亞! 答えろ答えろ答えろぉぉぉぉッ!!!」 「………きひひひひ。 朱志香お姉ちゃん、なに本気になってんの?」 だが朱志香の訴えに、その少女……。 真里亞はただ薄気味悪く笑うだけだった。 まるで必死に声を荒げる朱志香を馬鹿にするように、ただ彼女をあざ笑うだけなのである。 「真里亞は殺してないよ? あれはベアトリーチェの魔法だよ。 きひひひひひひひひ。」 「うるせえ!嘉音くんをなんで殺した! おまえなんかに、なんで嘉音くんが殺されなきゃいけなかったんだよ! なぁ!」 「うー、だからちがうって。 ベアトリーチェがやったんだって言ってるじゃん、わっかんないやつだなぁ。」 「!?……こ、このやろおぉぉぉッツ!!!」 人一人が死んだ後とは思えない真里亞の言葉に、ついに朱志香はその拳を振り上げた。 今までに人など殴ったことがない彼女だが、その手にはっきりと悪意を含みながら……。 朱志香は幼い真里亞の顔めがけ、自らの拳を突き出した。 「…………なっ!?」 その場にいる誰もが凄惨な状況になるであろうと予想した、次の瞬間。 突き出した朱志香の手は、一人の女性の手によって止められていた。 さきほどからずっとこの状況を静観していた夏妃が、実の娘の愚行を止めに入ったのである。 「やめなさい朱志香。 そんなことをしても、あなたの手が汚れるだけです。」 「で、でも母さん、こいつはっ! こいつは嘉音くんをっ!!!」 母に止められても朱志香の怒りはおさまらなかった。 彼女にしてみれば、むしろなぜ自分の味方をしてくれないのかといった心境だろう。 だが朱志香のその考えは間違っている。 さきほどから夏妃も、この不謹慎なことばかり口にする少女にとめどない憤りを感じているのである。 だがだからといって、実の娘に暴力によってそれを解決させるわけにはいかない。 そうなると彼女にできることはもはや一つだけだった。 「……源次、この部屋は空いていますか?」 そう言って夏妃は、廊下に並んでいるある一室。 自分の立っているすぐそばの部屋に目をやった。 そこは、さきほど絵羽夫妻が見つかった部屋と同じ作りになっている客間の一室であった。 「空いておりますが……。」 主人の言葉に源次はどこか怪訝そうに答えると、彼はその部屋のドアを開いていった。 ギィっと音をたてそれが開くと、中はたしかに使われた形跡はなく、さきほどの凄惨な死体現場と同じつくりとは到底思えないほど綺麗に整えられていた。 「……真里亞ちゃん。」 「う~?」 夏妃は真里亞のことを呼ぶと、部屋の中に向かってクイっと首を向ける仕草をした。 彼女にこの部屋に入れ、と言っているのである。 「さぁ、入りなさい。」 「……う~。」 夏妃のその言葉に、真里亞はここにきて初めて躊躇した。 余計なことは一切言わず、ただ自分に入れと命令してくる夏妃。 説明も何もないその言葉だけが、かえって真里亞にとっては何よりも怖かったのである。 彼女の威圧してくる態度だけみても、自分がこの部屋でなんらかのお仕置きをされるのは明白だと感じたのだ。 「うー……。 うーうー。」 「何をしているのです? 早く、入りなさい。」 あくまでも凛とした声で、夏妃は真里亞に部屋へ入るよう命令する。 命令とはいえ、それはあくまで厳しいしつけを教える母親のようなもので、それでいて相手に拒否権は認めない厳しさも併せ持つものだった。 「…………ふん。 ま、いいけどね。」 観念した真里亞は、まるで反省していないふうにふてぶてしい態度でそれに従っていった。 どのみち幼い自分に拒否権はない。 ここで夏妃の言うことを聞かなければ、また朱志香お姉ちゃんにグダグダ言われるに違いないと思い、しかたなく部屋へと入っていくのだった。 真里亞が入るのを確認すると、続いて夏妃も部屋の中へと入っていく。 それに続き朱志香も入ろうとすると、夏妃は彼女の体をスっとせき止めた。 「!? か、母さん、何で……。」 「あなたは源次と一緒にリビングへ戻りなさい。 決して一人になってはいけませんよ?」 「そ、そいつと母さんが二人きりになるほうが危ないって! 私も一緒に!」 「……大丈夫、少しお灸をすえてあげるだけです。 源次、頼みましたよ」 夏妃がそう言うと、源次はかしこまりましたと朱志香の体を制した。 「さぁお嬢様。 ここは奥さまにおまかせしましょう……。」 「か、母さん……。」 「ごめんなさい、朱志香……」 いまだ納得できないといった朱志香の表情を見ながら、夏妃は部屋の扉をバタンと閉めた。 そして備え付けられている鍵をガチャリとかけると、取り付けられているチェーンもガッチリとかけていく。 絵羽夫妻が襲われた今となってはこれも無駄なことかもしれないが、それでもしないよりはマシだろうと。 そうして部屋を密室状態にすると、夏妃は部屋の中に向き直った。 すると真里亞はすでにベッドに腰をかけていて、これから自分が何を言われるのかを悟っているのか、どこか憮然な表情で笑っていた。 「きひひひひ。 なぁに伯母さん? 真里亞にお説教?」 「………………。」 真里亞の馬鹿にするような言葉にも動じず、夏妃はゆっくりと彼女の座っているベッドに近づいていった。 その眼光は鷹のように鋭く、もし真里亞が年相応の反応を見せたならおもわず泣き出してしまいそうなほど恐ろしいものだった。 「……言いましたよね。 これ以上不謹慎なことを言うと、伯母さんも本気で怒りますと……。」 そうしてギシギシとした威圧感を出しながら、夏妃は真里亞の体の目の前にまで近づいた。 すると彼女の頭の上にのっている王冠に手をやり、それをパシっと手に取る。 「!? うー、真里亞の王冠!」 すぐに真里亞はそれを取り返そうと手を伸ばすが、夏妃はわざと彼女が届かない位置にまでそれを掲げる。 「あなたにとって、大事なものですか? これは……。」 「うーうー! 返して返して! 真里亞のー!」 真里亞はベッドから立ち上がり手を伸ばすが、どうしても身長のある夏妃の手まで届かない。 しかたなくピョンピョンと跳ねると、夏妃は更に届かない上のほうにまで手を掲げてしまう。 「うー!!! 伯母さんイジワル! イジワルイジワル!」 「イジワルで結構。 これでわかりましたか? 大事なものを奪われる気持ちが……。」 諭すようにそう言うと、夏妃はあっさりと真里亞の手に持っていた王冠を返した。 彼女にとってこれが大事なものだと看破していた夏妃は、それを奪われる悲しみを彼女に教えようとしたのだ。 「うー……」 だがまだ子供であり、特殊な感覚をもつ真里亞にそんな想いが通じるはずもない。 真里亞はそれを、ただ夏妃が自分に対して悪意のある行動を取ったとしか受け止められなかった。 「……きひひひひひ。 伯母さん、まるで子供みたいなことするんだね? 真里亞がっかりだよ。」 「………………はぁ。」 真里亞に自分の心が届かないことに、夏妃は激しい頭痛を覚えた。 彼女のこの笑い声を聞くたび、頭の中をヘビがのたうつような気持ちの悪い感覚が襲ってくるのだ。 「きひ、きひひひひひひひ。 きひひひひっひっひっひっひ。」 それを知ってか知らずか、真里亞は更に気味の悪い笑いを続ける。 夏妃はおもわずその生意気な顔を張り倒したくなる衝動をグっと抑えると、代わりに別の方法で真里亞の笑いを止めさせようとした。 「きひひひひ。 ひっひっひ……。」 「その笑い声をやめなさい! 非常に不愉快です!」 自らの頭痛をかき消すほどの叫びをあげると、夏妃は目の前の真里亞の体をベッドに押し倒した。 小さく軽い体がパタリとそこに倒れると、彼女の着ている服が乱れに乱れる。 黒い短いスカートがめくれ、中からはまだ幼さを残すショーツが見え隠れしていった。 「……きひひ♪ なぁに伯母さん? 真里亞のこと、襲うの?」 だが真里亞はそれでも動じなかった。 あいかわらず嫌な笑みを浮かべながら、ベッドに押し倒された状態でも夏妃のことを余裕を持った顔で見つめていた。 そしてその全て見透かしたような表情もまた、夏妃の頭痛をより激しいものにしていく。 「痛っ……。 真里亞ちゃん、あなたは少し人の気遣いや優しさを感じるべきです……。」 「きひ、優しさ? 真里亞みたいな小さな女の子を押し倒すのが、伯母さんにとっての“やさしさ”なの?」 真里亞の言うことはもっともではあった。 つい乱暴に押し倒してしまったが、はたからみれば暴力を振るうことよりは背徳的な行為をしていることに夏妃は気づいていた。 だが次の瞬間、そんな倫理的なことはどうでもよくなるような驚くべき言葉を真里亞は口にしたのである。 「ベアトリーチェが言ってたよ。 伯母さんは昔から毎晩毎晩“大変”だねって。」 「……どういう意味ですか?」 「わかんない? 朱志香お姉ちゃんができるまで、十二年も叔父さんの上で腰を振って大変だったねってことだよ。 きひひひひ♪」 「…………!?」 真里亞の言葉に、夏妃は一瞬我が耳を疑った。 年の割にはおかしなことを言う子だとは思っていたが、まさかこんな低俗な言葉を吐けると思っていなかったからだ。 自分がこの家に嫁いでから長年感じている、心の奥底のドロドロとした劣等感……。 それをこの幼い少女は知っている。 見抜いている。 それが夏妃の中の大人として、女としてのプライドを引き裂いた。 「きひひひひ♪ ねぇ、毎晩どのくらい“や”ったの? どうして赤ちゃん“で”きなかったの? ねぇ、どうして?ねぇねぇねぇ?」 「…………りなさい。」 「え、なぁに? 聞こえないよ。」 「黙りなさいッ!!!」 激昂した夏妃は真里亞の言葉を止めさせようと、自らの唇を少女の唇にムチュっと重ね合わせた。 ---- #comment_num2 ----

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