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-[[傲慢の果て]] ----  ベアトリーチェはぼんやりと彼女らを眺める。  同じ作業を毎度自らが執り行うのも面倒な話なので、今回はゲームの準備を家具……七杭の姉妹達に任せることにした。  彼女らが手順に沿って一つ一つ作業を進めるごとに……盤に駒が乗るごとに、ベアトリーチェは次の勝負に期待が膨らむ。さて……次はどのように戦人と戯れようか?  もっとも、姦しい姉妹達はいっかな作業に集中しようとはしないので、なかなか完成に至らなかったりするのだが。どうせまた戦人を玩具にすることばかりを考えているのだろう。  ルシファーが戦人のところに行ったきり帰ってこない。  おそらく、彼とまた戯れているのだろう。そしてそんなルシファーに対する嫉妬混じりの陰口が姉妹達から漏れる。  遅々とした作業進行とその作業態度にベアトリーチェは半ば呆れるが……まあそれならそれでいい。その分、ゆっくりと優雅に紅茶を飲んで次の勝負の手順を考えていればいい。  もっとも、戦人が何をどう足掻こうと、このゲームは彼女の勝利で決まっているのだが……。 「失礼します。お嬢様」 「……ロノウェか」  ベアトリーチェが座るテーブルの脇にロノウェとルシファーが姿を現す。  そしてその途端、ベアトリーチェの目が驚愕に見開かれる。 「何だそれは?」  ルシファーはロノウェの胸の前に抱きかかえられていた。だがそれだけでは驚くようなことではない。問題は、彼女の衣服が千切られ、ほとんど全裸となっていることだ。しかも彼女は気を失っている。 「どうやら、戦人様と激しく遊ばれたようですな」 「……………………なるほどな……」  彼女はため息を吐く。  合点はいった。なるほど、だからこんなにも帰りが遅かったのか。 「それと、戦人様から伝言です。絶対にベアトリーチェ様には屈しないと仰っておりました」  それを聞いて彼女は薄く笑みを浮かべる。 「ふっ。……そうか…………」  彼女の家具の破壊。それこそ、まるで自分を拒絶する彼のメッセージのようだとベアトリーチェは思った。  だが自慢の家具をここまで壊すとは……その力、確かに無視していいものではない。これでは次の勝負はどうなることか? ……想像が付かない。  いやいや、結構なことではないか。想像が付かないとは、実に退屈しない。 「ロノウェ。ルシファーを床に置け」 「はい。承知いたしました」  命じられるままに、ロノウェはルシファーを床に置く。  この様子に他の姉妹達が気付かないわけがない。ロノウェとルシファーが部屋に現れた瞬間には姉妹達は作業を放棄し、ベアトリーチェらの周囲に集う。  無惨な姿へと変わり果てたルシファーを見下ろしながら、彼女らは表情を歪ませる。 「きゃははははははははははははっ!! ルシファーお姉様ったら人間なんかに犯されてるー。なっさけな~い」 「本当に口だけなのよルシファーお姉様は。こんなのが長女だなんて、恥ずかしいったらないわね」 「まったく……姉妹の恥曝しだな」 「ほらほら見てよ。ルシファーお姉様のあそこから人間の精液が零れてるわよ。一体何回出されたのかしら?」 「あれじゃない? 気を失うほどよかったって事よね? この分じゃあ……くすくすくす……ひょっとしてルシファー姉様も相当乱れてたんじゃないのぉ?」 「人間如きに? うっわダサ過ぎ」  けらけらと姉を嘲笑う姉妹達。同情や憐憫といった感情はそこには一切無い。 「……どくがよい」  静かにベアトリーチェが言って、姉妹達は長女から離れる。  そしてベアトリーチェは詠った。 「さぁさ思い出してご覧なさい。あなたがどんな姿をしていたか――」  彼女の持つキセルから流れる煙がルシファーを覆う。すると、形を成していなかった服が時間を巻き戻したかのように修復されていく。裂け目がくっつき、再びルシファーの体を覆った。  彼女の長い睫毛が震える。  その様子を無言で彼女らは見詰める。  三十秒ほどしたくらいか……ほどなくして、ルシファーは意識を取り戻した。  目を開けて焦点の定まらない視界で周囲を見渡す。 「…………ふ……。どうやらまだご自分の状況がよく分かってないようですな」  何が面白いのか、ロノウェは笑みを崩さない。 「……え? あ? …………あ…………ああ……っ?」  だがそれも所詮は短い時間のこと。  ゆっくりと戦人による陵辱の記憶が彼女の中で再現されていく。呆けていた表情に理性の色が戻るにつれ、彼女の瞳に涙が浮かぶ。  その涙は断じて彼から解放されたことによる喜びではない。その逆だ。怯えた眼差しを周囲に向ける。  その哀れっぽい仕草に、ルシファーを除く姉妹達に再び哄笑が巻き起こる。楽しくて仕方ないのだ。こんな面白い出来事をどうして笑わずにいられるというのか?  嘲笑の渦の中で、よろめきながらルシファーは立ち上がった。どうせ妹たちには無様にしか映らないのだろうが、それでも床に這い蹲っているよりは心の痛みが少なくてすむから。  テーブルに両手をつき、肩で息をしながら俯く。  その様子をベアトリーチェは静かに見詰めた。じっくりとルシファーを観察し品定めする。 「……ふ……。よもやここまで完膚無きに壊そうとはな。戦人め、なかなかやりおるわ」 「左様でございますな」  ベアトリーチェは薄く笑った。忌々しげに、かつこの上なく楽しそうに。  その笑みに、ルシファーは背筋が凍る。目が覚めても終わらない悪夢に、彼女は絶望した。 ----  まるでタイミングを見計らったかのように、彼が丁度クッキーの最後の一枚を口に入れたところでロノウェは姿を現した。 「お待たせしました戦人様。クッキーと紅茶のお代わりをお持ちいたしました」 「ああ、ありがとよ」  満足げに笑みを浮かべる戦人の前に、ロノウェはクッキーと紅茶の替えを用意する。その動作は淀みない。  そしてそれ故に、その異常は戦人にとっても見逃せなかった。 「……それで? これはいったいどういうことだ?」 「それは一体どういう? ……いえ、冗談ですよ。分かっております」  目を細め、若干鋭い視線を向ける戦人に対し、ロノウェは涼やかに笑みを返した。  ロノウェの背後にはルシファーが立っていた。だがそれだけなら別に異常ということもない。つまり異常とは……彼女は全裸だった。  羞恥に顔を赤く染め、ルシファーは彼らか顔を背けて胸と秘部を手で覆い隠す。 「お嬢様より伝言です。『ゲームの再開には今しばらく時間が掛かる。この家具が気に入ったなら、その間思う存分戯れるがよい』……だそうです」 「へえ……なるほどな」  合点がいったと、戦人は肩を竦める。 「それでは、私はこれで失礼いたします。いつまでもお邪魔していても、気が散るでしょうから。……ごゆっくりお楽しみ下さいませ。ぷっくっくっくっ……」  笑みを残して、ロノウェは部屋から姿を消した。  つい数秒ほどまで彼が立っていた虚空を戦人はつまらなさそうに見詰める。 「いらん世話だっての」  聞こえないのを承知で、彼は溜息を吐いた。  そして、残されたルシファーに視線を向ける。彼女はびくりと震えた。  無言で戦人はジャケットを脱いだ。その意味が、ルシファーにとっては恐怖だった。  けれど、彼女は逃げ出すことは出来なかった。その場に立ちつくす事しか出来ない。  逃げるとして、一体どこに逃げるというのだ? この部屋に残され人間の慰み者になるのが主の意志ならば、それには逆らえない。逆らうことは許されない。不可能だ。そして彼から逃げることもまた、不可能だ。 「…………え……?」  思わず目を瞑り、身を竦ませたルシファーの体をジャケットが包み込む。  彼女が顔を背けたまま視線だけを戦人に向けると、彼はつまらなさそうな顔をしていた。 「それ着て部屋の隅にでもいろよ」  素っ気なくそう言って、戦人は踵を返した。  それは、彼女にとって信じられなかった。 「……どういうつもり? あんなにさっきは……わ、……私を……」 「別に? ただ、あの野郎の思い通りっていうのが気に食わねえ。しかも自分に仕える奴を進んで差し出すなんてな。ちっ、どこまでもふざけた野郎だ」  その言いぐさに、ルシファーは唇を噛む。 「……何よそれ。同情のつもりなの? 巫山戯ないで……あんたが……あんたが私を…………るから、私は……みんなにも……うっ……うぅ……」  彼女の口から嗚咽が漏れる。  てっきりまた彼に乱暴に汚されるものだと思っていたが、そうじゃなくて……気が緩んだ。同時に涙腺が緩む。  戦人は彼女の泣き声など聞こえないかのように、テーブルへと戻った。  どうせ彼女の涙など、そもそもが戦人を抉って楽しもうなどという身勝手な欲求が原因なのだ。同情してやる義理など無い。  ルシファーは戦人の言葉に従い、部屋の片隅へと向かった。  戦人は目を瞑りながら、彼女が遠ざかるのを感じた。そして彼女には聞こえないよう、小さく舌打ちする。  はっきりと、彼は不機嫌だった。  ベアトリーチェの外道や非道が気に食わない。それがそもそもの理由だった。その憂さ晴らしと、彼女への復讐のつもりで七杭の長女を犯した。消えない憤怒を込めて……。  だが結局のところ、そもそもそういった行為が許せない彼だ。そんな彼が、悪魔が相手とはいえ少女を陵辱したところで気が晴れるわけもない。雄の生理現象として、癒されるものや潤うものも感じたが、それ以上に虚しさや苛立ちを感じた。  ルシファーに同情する義理など無い。それも分かっている。だがそれでも、彼女が救われるどころか更に悪辣な状況に落とされるというのは、なおさら戦人の心をささくれさせた。  自分でも、そんなことを考えてしまうというのはどうしようもなく甘いと思っているが……。  ふと、自分と同い年にまで成長した妹の姿を思い出す。妹の言うとおりだ。自分はどうしようもなく甘い。お人好しだ。  でも同時に思う。そんな妹の目はどうしようもないほどに哀しげだった。実家にいた小さな子供の頃の面影はもう無い。かつての彼女にもあった、お人好しさや甘さが抜け落ちていた。  ……なら自分も今はあんな目をしているのだろうか? 果たしてそれでいいのだろうか?  戦人は首を横に振り、雑念を追い払う。  兄として、妹にそんな目をさせることは出来ない。  だから……今度こそ、魔女を破るのだ。例えどんな手を使ってでも。自分があんな目になったとしても。  目を開き、無言で戦人はロノウェの焼いたクッキーに手を伸ばす。まだほのかに温もりが残ったクッキーは、美味だった。 (……さっきから何してるんだあいつは?)  ふと、戦人は眉根を寄せた。  部屋の片隅でルシファーは戦人に背を向け、蹲って座っている。だが、それだけじゃない。様子が妙だと戦人は思った。 「…………んっ…………くっ……うぅっ」  時折、彼女からくぐもった声が漏れてくるのが聞こえた。  最初は泣き声だとばかり思っていたが、そうではないようだ。それにしては、声が熱っぽく艶を帯びている。 「……ぁっ……んっ……」  戦人は席を立ち、ルシファーへと近付く。  足音は立てていないが、彼女がその様子に気付く様子は無い。規則的に、小刻みに彼女の背中が揺れる。  彼女の背後に立ち、戦人は数秒彼女の背中を見詰めた。 「……何しているんだ? 姉ちゃん」  戦人が声を掛けた瞬間、ルシファーの体が大きく跳ね上がり、反射的に彼女は振り向く。 「あっ……その。ちが…………これは……違う。私は、そんなつもりじゃ……」  その顔が羞恥に赤く染まる。  彼女は堅く目を瞑り、首を横に振る。 「違う……違うから……見るな…………見ないで……お願いだから」  しかし、彼女の懇願を聞くことなく戦人は彼女を見下ろす。  けれど、見下ろされているにも拘わらず、彼女はその行為を止めようとしない。左手で胸を揉み、右手で秘部を弄び続ける。  彼女は自らを慰めていた。 「ベアトリーチェ様が……その…………だからぁ……ひぁっ……ぁぅ……んっ……」  それに対し、戦人は再び舌打ちする。どうやらあの魔女は目の前の少女に性的な衝動を誘発する呪いを使用したらしい。 「……あの野郎。一体何を考えていやがる」  知らず、戦人は拳を握りしめていた。  もし魔女が目の前にいたというなら、まず間違いなく殴りつけていただろう。自分も所詮、彼女を汚したという意味で魔女と同類だと分かっているが。  戦人は一旦しゃがみ、彼女の右腕を上げて脇に頭を通し、彼女と一緒に立ち上がった。ルシファーは戦人に肩を貸されて無理矢理立たされた格好だ。 「……はぁっ………………ぁぁっ……」  ルシファーは抵抗しない。その脚に力を込めることなく戦人に従う。 「しっかりしろよ姉ちゃん。今あっちのテーブルに連れてってやる。紅茶でも飲んで気を落ち着けな」  もっともそんなこと言いながら、戦人にもそんなものは気休めにならないと思っているが。けれどそれでも、部屋の片隅でしゃがみ、あるいは転がって悶えられるよりは、まだ座っている方が格好としてましな気がした。  だが……。 「……おい……?」 「はぁっ……はぁっ…………んんっ」  戦人の足が止まる。いや、ルシファーによって止められる。それも、部屋の隅から一歩も進まないうちにだ。  彼女は荒い息を吐きながら戦人に抱きついた。戦人の耳元に彼女の熱い吐息が吹きかけられる。 「んっ…………はぁっ…………はぁっ……」  戦人の左半身に身を委ねながら、彼女は彼の脚に秘部を擦り付けていく。  艶めかしい温もりが戦人に押しつけられた。  戦人は目を瞑り、深くゆっくりと息を吐く。  発情した女の喘ぎ声を聞きながら、戦人はしばし黙考する。  三十秒ほどそうしていただろうか? やがて彼は意を決した。  無言で体を捻り、戦人は彼女を自分の体から引き離す。そして彼女の両肩を掴み、壁に押しつける。  彼がルシファーの瞳を覗くと、そこには怯えと期待が入り交じっていた。 「やっ……あっ」  戦人は彼女の唇に自分の唇を押し付ける。ルシファーの口からくぐもった呻き声が漏れるが、決して抵抗はしない。戦人の胸に手を当てながらも、押し返そうとはしなかった。  ルシファーは目を瞑り、戦人の唇を受け入れる。その重なりは、決して乱暴ではなかった。むしろルシファーの方こそ、彼を貪っているくらいだ。  戦人の唇が僅かに開く。それを待ち望んでいたかのように、彼女もまた唇を僅かに開いた。舌の先で互いに触れ合う。  ルシファーは戦人のシャツを強く掴む。  やがて、戦人はルシファーから唇を離した。名残惜しそうに彼女は舌を伸ばす。彼らの口の間に、とろりとした糸が結ばれた。 「ふぁっ……」  戦人の手が彼女の肩から下りていく。その感触に彼女は身悶えする。 「…………んんっ」  戦人の手が彼女の左の胸を掴むと、彼女はまた身を震わせた。  彼の手によって胸が撫で回され、揉まれるたびに切ない吐息が漏れる。彼に乱暴にされたときはあれほど嫌だったというのに……。  体が熱い。燃えるように熱い。  口に出しては言えないが、戦人にもっと強く求めて貰いたいと彼女は願ってしまう。それこそ、自分を陵辱したときくらいに激しくと……。  今度は彼女から彼の手から逃れた。  その場に膝立ちになり、戦人のスラックスからベルトを外し、ファスナーを下ろす。そして少し彼のスラックスを脱がした形で、その奥にある男性器を露出させた。  戦人の硬くいきり立ったものに少女は手を添え、舌を這わせる。飴か何かを舐めるように愛撫し、そしてときには口に含んで強く吸い付く。  そのぬらりとした感触に戦人のものがびくりと脈打つ。 「んんっ…………ふぅっ……んっ……」  彼女を見下ろしながら、戦人は子犬が骨で遊んでいるようなイメージを思い浮かべる。  彼女の奉仕を受けながら、戦人はネクタイに手を掛け、外していく。  外したネクタイを床に落とし、今度はシャツのボタンを外した。微かな衣擦れの音がルシファーの耳にも届き、それは更に彼女の体を火照らせる。  高級なシャツが音もなく床へと舞い落ちるのと同時に、ルシファーの頭に戦人の手が置かれた。  意地を張るように、猫のような鋭さと……そしてそれを和らげる、どこか陶然としたものが混じった眼差しで、彼女は戦人を見上げた。  彼はその眼差しを乾いた瞳で見詰め返す。けれど、そんな彼の目の奥にも、それだけではない感情の揺らめきがあった。  彼女の頭に手を置いたまま、戦人はその場に跪く。  両手を肩に置き、戦人はルシファーをゆっくりと床に横たえた。そしてそのまま彼女の上に覆い被さる。  右手を自分のものに添えて、戦人はルシファーの入り口にその先を当てた。  軽い呻き声と共に彼女の体が小さく撥ねる。 「あっ…………ふぁっ……あっ……あぅっ」  ルシファーの歓声を聞きながら、戦人は自分を彼女の膣内に埋め込んでいく。熱く濡れぼそった秘部は待ちかねたように彼を受け入れた。  荒い息を吐きながら彼女は戦人の背中に腕を回し、強く抱き締める。戦人の厚い胸元の下で、ルシファーの胸が柔らかく彼を押し返す。  逞しい戦人の体……その力強さにルシファーは溺れる。それこそが彼女の密やかな本性なのか、蹂躙されているように感じながらも、それを心地いいと彼女は感じた。 「やぁ…………あぁっ……だめ…………って……」  彼女の膣内をそれこそ味わうかのように、戦人は腰をゆったりと動かす。その焦らすような動きに、ルシファーは抉られたときとは違った意味で、濃厚に彼の存在を感じる。  彼のものが奥に届くたび、彼女は喘ぐ。  彼女は自然と戦人の腰に脚を絡めていた。  互いの温もりを……互いの存在を確かめ合うかのように、二人は交わり続ける。 「うっ……くっ」  戦人の顔が僅かに歪む。  犯していたときとは違う、柔らかな興奮は思った以上に戦人の射精感を強く刺激した。  戦人の中で何かが折れそうになる。折れるべきではないと思いながら、折れた方がよいと思う冷たい感情が……。  その心地よさは、彼も望んだものだったが。 「んっ……はっ……あぅっ」  背中を弓なりに反らしながら、ルシファーは戦人の熱い迸りを受け止めた。悦楽に浸りながら体を震わせる。  やがて、彼女はくったりと脱力し戦人に絡めていた腕と脚を解いた。  肩のすぐ下あたりにある彼女の頭を、戦人は子供にするように軽く撫でてやる。細く癖のない艶やかな髪の感触が、心地いい。 「……少しは落ち着いたか?」  その問い掛けに少女は答えない。拗ねたと言わんばかりに、戦人とは反対方向に顔を背けた。  その反応に、見られないことに安堵しながら戦人は薄く笑みを浮かべる。 「か……勘違いしないことね。わた……私は、ベアトリーチェ様に…………だから……それだけ…………で……。これは……違う……から」 「ああ、そんなことは分かってる。安心しろ」  戦人もまた素っ気なく伝えてやる。  そして彼女の膣内から自分のものを抜き、体を引き離す。  無言でその場に立ち上がり、近くに投げ捨てた衣服を拾う。ファスナーは上げずに、スラックスは左手でずり落ちないように掴んでおく。 「どこに行くの?」  そのまま立ち去ろうとする戦人の背中から、ルシファーの呟きが漏れる。 「……テーブルに戻るんだよ。せめて紅茶でも使って洗わないことにはな。下が穿けないっての」  彼女はぼんやりと、戦人の背中を見詰める。  彼の掛けたジャケットを強く握りしめる。姉妹から、そしてベアトリーチェから離れた心細さの中で、自分を覆うその感触だけが温かかった。そんな温もりは、少女にとっても生まれて初めてだった。 「……………………ん……私も行く……」  力無くルシファーも立ち上がり、戦人の背中を追った。自分の体から、再び果てることのない疼きがぶり返すのを感じながら……その温もりにすがりつきたいという誘惑……その感情を否定しようと思いながら……。 ----  ベアトリーチェの目の前では、相も変わらず姉妹達が姦しく騒ぎながら次のゲームの準備をしている。遅々として作業が進まない。仮にもまとめ役を担っていたルシファーがいないせいか、まさに船頭多くして船山登るといった具合だ。  どれだけ時間が経とうと、無限の魔女であるベアトリーチェにとっては関係ないのでそれほど気にしてはいないが……。ひょっとしたらシエスタの姉妹兵あたりの方がまだましだったかも知れない。 「ロノウェ、お代わりを」 「畏まりました。お嬢様」  空になったベアトリーチェのカップに、ロノウェが紅茶を注ぐ。 「……何か訊きたそうだな、ロノウェ。どうした? 何でもいい、言ってみよ」 「はい。それでは僭越ながら……。どうしてお嬢様はルシファーを戦人様のところに? あれでは、ますます彼女が壊されるだけでは?」 「ああ、それか」  傍らに控えるロノウェに、ベアトリーチェはにやりと笑みを浮かべる。 「なに、壊されるといってもまた直せばよい。どこまで壊れようとな……。どのみち、あそこまで壊れていては姉妹ともども記憶を丸ごと消去して『無かったこと』にする必要がある。だがどうせ直すなら、今の内でももう少し役に立って貰おうって思ってなあ」 「と、仰いますと?」 「少なくとも妾が知る限り戦人は甘い男だ。どうしようもなくな……。ルシファーを犯したところで、それで自ら苛むような奴よ。なら、ルシファーに何の救いもなくあやつに送り返したらどう考える? ……同情するだろうなあ、憎しみが薄れるだろうなあ。抱けば尚更か?」 「つまり、頑なになった戦人様をルシファーが解きほぐす……と?」 「……ふっ、そんなところよ。ルシファーの奴も、今頃は妾の魔法でさぞかし魅力的で可愛い雌になっているはず。……ゲームが再開される頃には、二人ともさぞかし仲良くなっていればいいぜえ。そして、再開の直前でルシファーを元に戻せば……」 「なるほど、そうやって戦人様の傷を抉るおつもりでしたか……。ぷっくっくっ」  僅かばかりにでも育ったルシファーに対する情を戦人から根こそぎ抉り出す。そのとき戦人はどんな表情を浮かべるだろうか? ベアトリーチェは想像すると楽しみで仕方なかった。 「ですが万一、戦人様の心が揺らがなかったときはどうするおつもりですか?」 「そのときはそのときで、戦人の覚悟のほどとやらが見て取れる。探りを入れる分には無駄では無かろう?」  それだけ言って、ベアトリーチェはカップを口に運んだ。  退屈しない……実に退屈しない。 (戦人……絶対に妾はお前を逃がさぬぞ)  口に広がるその味は、実に美味だった。 ―END― ---- <おまけ的ボツ展開>  椅子に座る戦人の上に、更にルシファーが腰を下ろした格好で彼らは抱き合う。戦人の肩に額を押し当てながら、ルシファーは腰を振る。 「ひぁっ……あっ……んっ……んんっ」  ルシファーの体がまた撥ねる。これで達したのは何度目だっただろうか……。  熱い息を吐きながら、彼女は戦人にしなだれかかる。 「……失礼いたします」  と、その場にロノウェが姿を現す。  もっとも、それに大して戦人は動じないが……。 「お前、何だそれ?」  彼は冷めた視線をロノウェに向けた。  鈍い音を立てながらロノウェは胸の前に抱きかかえたそれらをテーブルに置く。 「鞭、ロウソク、ローターに荒縄……手錠に首輪……。あとはネコ耳カチューシャやそういったオプションです。もしよろしければお使い下さい。ご希望とあれば各種コスチュームの他に三角木馬なんかもご用意させて頂きます」 「いや……何というか、いきなりそんなもん持ってこられても……。というか、冷静に抱えてくるなよ」  言われながらもロノウェも同感なのか、彼は苦笑する。  そしてそんなやりとりを聞きながら、ルシファーは戦人の腕の中でごくりと喉を鳴らし、秘部は彼のものを締め上げた。 「……おいおい、姉ちゃん」  小声で彼女にしか聞こえないように戦人が呟く。 「ちが…………。う……あうぅ」  同じく戦人にしか聞こえないように、恥ずかしげにルシファーは呻いた。 &counter() ---- #comment_num2 ----

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