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「傲慢の果て」(2008/10/19 (日) 03:36:10) の最新版変更点
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ロノウェの用意したクッキーを摘みながら、戦人は紅茶を味わう。縁寿は色々としがらみがあるとかで、今はこの場にいない。
紅茶の銘柄など、英語以下に興味が無く覚えちゃいないが、それでもこの香りの良さはなかなかのものだと戦人は思った。
ただ、これも所詮は魔女と悪魔の用意した代物。実はこう見えておぞましい過程を経て生み出されている可能性もないわけではないが。
無言のまま、戦人は一人佇む。
深い絶望も、熱い憤りももはや表には見せない。だが消えたわけではない。それらはすべて青白い氷のように冷え、凝固しより堅牢なものへと転換されただけだ。
と、テーブル脇の虚空から不意に少女の姿が現れた。
黒く艶やかな髪は癖が無く、肩を覆い隠すほどに長い。赤い上着の中、桃色のネクタイが胸の膨らみに沿って緩やかな稜線を描いていた。
黒い水着のような服から白く長い脚が挑発的に伸びている。彼女は悪魔そのものだが、醸し出される淫靡さはまさに悪魔的だった。
「まったく……だから何でいつもこの私がこんな雑用を……」
苛立たしげに彼女は不満を漏らす。
「よお姉ちゃん。……何の用だ? クッキーならまだあるぜ。ロノウェからなら、お代わりはまだいらねえとでも言っておいてくれ」
静かな戦人の口調。
だが、それもまた彼女の神経を逆撫でる。深紅の瞳がより赤く燃えた。
「ルシファーよ。……前にも言ったでしょう? それなりの敬意を払わないと後悔することになるって」
「ああ……そういえばそんなこと言っていたな」
すっかり忘れていたと言わんばかりに、戦人は薄く笑い肩を竦める。
その表情を見て、ルシファーは決めた。殺す。また殺す。用件を伝えたら、今度こそ二度とそんな軽薄な態度が取れないほどに後悔させてやる。どこまでも惨たらしく、心の奥の奥まで恐怖を刻み込んでやる。
彼女は目を細める。
「ベアトリーチェ様から伝言よ。次のゲームの準備にはもう少し時間が掛かりそうという話よ」
「ああそうかよ。分かった……ありがとな」
それだけ言って、戦人は一瞥もくれずに再び紅茶へと視線を戻す。
それは明らかに、彼女を小間使いか何かとしてしか感じていない態度。
ルシファーは心地よいほどに怒りが湧き上がるのを感じた。にたりと笑みを浮かべる。
「……さっきも言ったのにもうそれ? ふふっ……。本当に馬鹿な子ね。そんなに私が忘れられないの? いいわよ? 遊んであげる。丁度退屈していたところなの。ベアトリーチェ様からの用事は済んだもの。たっぷり遊んで貰うわよ。……覚悟しなさい?」
ぺろりと唇を舐め、これからどうしてやろうかと彼女は夢想する。じっくりたっぷりと嬲って、骨を砕き肉を抉り眼球を潰し皮を剥いで血を啜って……ああ、堪らないったらない。
今なら邪魔な妹達もいない。自分一人で彼と遊べる。
「へえ……そりゃ奇遇だな。丁度俺も退屈していたんだ。相手してくれよ」
だが、そんな何の気負いもない口調が戦人から返ってくる。優雅にも紅茶を飲みながら……。
今度こそ、ルシファーの表情が歪んだ。
「減らず口を……っ! くっ……ふふ、ふふふふふふふふふふふふふふふふふふふあははははははははははははははははははは。…………死ねえええぇぇぇぇっ!!」
その直後、彼女の体が弾け飛ぶ。
目にも映らぬスピードで室内を駆けめぐり、何十回目かの反射の後、戦人へと突き刺さる。
戦人の体から、花のように血しぶきが舞う。
「な……んだと?」
そのはずだった。戦人の心臓を貫くはずだった。
あり得ない……と彼女に戦慄が走る。
鈍い音を立てて彼女が突き刺さったのは、つい数瞬前まで戦人が座っていた椅子だった。
では戦人はどこに?
……無表情に、戦人は彼女を椅子の背もたれから抜く。いつのまにか、彼は椅子の脇に立っていた。
ルシファーが再び人へと姿を変える。丁度、戦人によって後ろから首を掴まれた格好だ。
「くっ……お、おのれ……人間風情が……」
彼女は唇を噛む。
嘉音のときといい、戦人といい。何かが間違っている。そうとしか思えなかった。何故だ? 何故自分がこんな屈辱を味わわされなければならない?
「じゃあ……遊んで貰おうか」
「何? 何だと?」
遊び? 人間がこれ以上何をするというのか?
予想もしない台詞に、ルシファーは困惑する。戦人がこの手を離した瞬間、今度こそ彼の胸を貫くつもりだった。
「ああ。前に言っただろ? 忘れたのかよ?」
「…………何の……事だ?」
彼女の返答に戦人は軽くため息を吐く。彼女が覚えてなかったことに対して呆れたが、それならそれで構わない。どうせ彼女らにしてみればそんな程度の意識だったのだろうし、所詮は些末ごとだ。
「言っただろ? 『押し倒して同じ台詞を言ってやる』ってよ。二度と忘れられないくらいに思いっきり俺をお前の奥の奥までねじ込んで、抉ってたっぷり楽しませてやるよ。俺もいい加減、こんなところに閉じ込められて苛々が溜まってんだ」
「なっ!?」
驚愕に彼女は目を見開く。犯すだと? 人間風情が? 悪魔の中でも有数の力を誇り、煉獄の七杭の長女たるルシファーを?
「ひっ!?」
彼女の背後から戦人が抱きつく。
両腕でがっちりと胴と胸を抱き締めていて、ルシファーは必死に藻掻くがその拘束から逃れることが出来ない。両腕の外から抱き締められているので、腕を動かすこともままならない。
「へえ。……なかなか可愛い声も出せるんじゃねえかよ」
「ひぅっ!? んな? あ……くっ」
戦人は彼女の耳を口に含む。
ぬらりとした感触がルシファーの耳を嬲る。
「やめ……止めろ。そんなこと……」
今まで経験したことのないその妖しい刺激に、彼女は恐怖を感じ身悶えする。必死に戦人から逃れようと顔を背けるが、それを逃がす戦人ではない。
「くっ……んんっ……んんんんんんんっ」
目を瞑りながら、ルシファーは耐えることしか出来ない。
と、戦人の右手がルシファーの上着の胸元を掴む。
「なっ!? あっ!? あああああぁぁぁ~~っ!?」
派手な音を立てて上着が引き千切られていく。
ボタンが弾け飛び、胸が大きく開かれた。
「止めろ……くそっ!! くそっ!!」
開かれた隙間から蛇のように戦人の腕が入り込み、ルシファーの左乳房を掴んだ。
欲望の赴くままに弄ぶ。
戦人の手から僅かに零れる豊かな膨らみは、若々しく張りのある弾力に溢れていた。
「殺す。……殺してやる。殺してやる……殺してやる……」
並の人間ならば聞いただけで逃げ出したくなるほどの怨嗟と殺意を込めてルシファーが吠えるが、戦人は平然と彼女の胸を揉み続ける。
「……いいおっぱいしてるじゃねぇか。さすがは太股姉ちゃん達の長女だけあるな」
「殺してやる……殺してやる……殺してやる……ううぅ……」
あまりの悔しさに、彼女の目から涙が浮かぶ。
けれど、どんなに嘘だと頭の中で繰り返しても、胸を揉まれるおぞましい感覚は消えて無くなってはくれない。それどころか、意識すればするほどかえってその感覚が大きなものへと変わっていくかのようだった。
戦人の手は荒々しく彼女の乳房を嬲り、弄び、そして貪るように蠢く。
自分の腕の中で体を屈め、肩を震わせるルシファーを見下ろしながら、戦人はほくそ笑む。
手の平で丹念に彼女の胸を撫で回し、指先で彼女の乳首を摘み、転がす。
「う……うぅ……絶対……殺して…………やるぅ」
その台詞に応えるように、戦人はルシファーの乳首を少しだけ強く潰し、引っ張った。
その痛みに、ルシファーはくぐもった声を漏らす。
「……そんなに胸が嫌なら、もう止めてやるよ」
「………………え……?」
戦人の手が彼女の胸から離れた。
ようやくこれで終わりかと、ルシファーは安堵の息を吐く。あまりにも突然のことだったので、すぐに彼を殺すということすら一瞬忘れてしまったくらいだ。
だが……。
「…………ひっ!?」
すぐに彼女は自分の甘さを思い知る。
この人間は自分をまだ解放する気ではなかったのだ。
戦人の手は、今度は彼女の股の間へと潜り込んでいく。
「やめ……やめろ……」
慌てて右手で戦人の手を押さえようとするが、遅かった。二の腕から先は幾ばくか自由が利くとはいえ、やはり思うようには動かせない。戦人の指は彼女の股下を掴んでずらし、そして露出した秘肉をなぞり始める。
「くっ…………うぁ………………あぁっ……」
敏感なところをまさぐられ、ルシファーは思わず背中を仰け反らせる。くすぐったいだけのようで、それでいてどこか苦さと甘さをもった刺激に、今度は秘部に神経が集中する。
その神経の集中は熱い疼きとなり、ルシファーの秘部を充血させていく。
「……………やめ……………やめ……」
羞恥に顔を赤らめながら、彼女は必死にこの感覚に飲まれまいと抵抗する。自分ではない誰かの手によって秘部を弄ばれる。……その生まれて初めて味わう未知の感覚は、彼女にとって恐怖だった。その恐怖は胸を弄ばれていたときの比ではなかった。
しかし、どれだけ彼女が身をよじらせようと、戦人はルシファーへの愛撫を止めない。執拗に彼女の秘唇をなぞり、そして……。
「……………くぁっ……」
ルシファーは若干の甘みを含んだ呻き声を漏らした。
戦人の指が彼女の秘裂へと入り込んだのだ。
「何だよ。これだけ抵抗しておいて感じてるのか姉ちゃん?」
「違う……違う……そんなわけ……ない……」
目を瞑りながらルシファーは首を横に振る。
だが、それでも彼女の秘部は僅かとはいえ確かに湿っていた。戦人の執拗な愛撫によって、熱い疼きは蜜へと姿を変えていく。
もし気持ちいいかどうかと問われたなら、絶対に気持ちよくなんかないと彼女は言い切っただろう。実際、快感だとは思っていない。けれど、無意識や本能というものは理性の司る領域ではない。故に体は意識とは別に反応してしまう。
「いい……加減にしろ。……今止めれば、許してやらないこともない。……だ……から……ひぁっ……」
彼女の入り口を戦人の指先がかき回すたび、湿っていたそこに新たな蜜が溢れだしていく。
じんじんとした疼きが伝わるたびに……理性の壁はまだ強固なつもりだが、それが少しずつ矧ぎ取られていくような気がする。
「本当だ……。嘘じゃ……ない……からぁっ! やっ……あぁっ!?」
それは彼女の本心だった。
ひょっとしたら、後でまた彼を殺すことはあるかも知れない。けれど、今この陵辱から解放してくれるなら、それをここで復讐するつもりはない。
数秒の沈黙。
その沈黙に、彼女はすがる。見下している人間の慈悲にすがる。
しかし、戦人の返事は酷薄なものだった。
“ダメだぜ? 全然ダメだぜ? 俺はまだお前を『抉って』ねぇんだぜ?”
「…………や…………ああ……」
そして戦人は一旦彼女の秘部から手を離し、自分のスラックスへと移動させる。
ジッパーが下がる音に、ルシファーは怯える。
右腕が完全に解放され、自分の胴を抱える戦人の左腕を外そうとするが……悪魔とはいえ単純な力では無力だった。
「…………ひっ!?」
ルシファーの体が震える。
戦人の男性器の先が彼女の入り口に当てられる。
涙を零しながら、恐る恐る彼女は後ろを振り返る。いかにも哀れっぽく……弱々しく。
だがそこには無表情で……青白い氷を瞳に宿した“人間”がいた。
「あ……ああ……」
その瞳を見た瞬間、彼女は悟る。無駄だ……何を言っても無駄だ。何をどう懇願しようと祈ろうとそれが届くことはない。悪夢のような光景に、彼女は恐怖に戦く。
“人間”がルシファーの中へと打ち込まれる。熱く堅い塊がずぶずぶと彼女を抉っていく……。
今自分が抉られているというその感触が……じわじわと波のように押し寄せてきて……その意味をルシファーはゆっくりと認めていく。
「嫌……あ…………嫌……あ、ああ……」
決して認めてはいけないと思いつつも、認めざるを得ない。
そしてそれが、彼女の理性の限界だった。
「嫌あああぁぁぁぁ~~っ!! 嫌っ!! 嫌ああぁぁぁ~~っ!! 人間なんかに犯されるなんて嫌ああぁぁ~~っ!! 抜いてっ!! 抜きなさいよおおぉぉ~~っ!!」
今度こそ、体面もプライドも投げ出して彼女は泣き叫んだ。
部屋に彼女の泣き声が響き渡る。
無駄だと理解したはずなのに、言わずにはいられない。
「嫌っ!! 嫌あああぁぁぁ~~~~っ!! 痛い…………痛いいいぃぃ~~っ!!」
だが、泣き喚くルシファーに容赦なく戦人は腰を打ち据え続ける。いくら彼女の秘部が湿っていたとはいえ、所詮は強引に掻き出したに過ぎない。男のものを受け入れるには、まだ準備が足りていなかった。
窮屈な膣を戦人のものが出入りするたび、ルシファーはまさしく抉られているような痛みを感じる。
「抜きなさい……。抜きなさいよ…………嫌………嫌あっ……」
掠れるようなルシファーのそれはもはや譫言に近かった。
その一方で、戦人は鬱屈した思いを彼女に叩き付けながらも、それがかえって更なる鬱屈を溜めてくるような矛盾を味わっていた。
そしてその鬱屈は戦人のものを更に膨れ上がらせ、益々苛烈にルシファーを抉っていく。
ルシファーの体は戦人のものをがっちりと締め上げ、強く刺激を伝えてくる。その快感は、凍った戦人の感情の中でも、青白く昏い恍惚として特に輝いていた。
「い……や……。あぁっ……はぁっ……抜い…………んっ……。嫌ああああぁぁぁ~~~~~っ!!」
ぐちゅりと粘っこい音が結合部から聞こえ始めてくる。
それに従って、より滑らかに戦人は彼女を抉る。
熱い打ち込みが、ルシファーの理性を暴力的に……いや、事実暴力か……苛烈にかき回す。
「助けて…………助けてよ……………もう嫌…………嫌ああ」
もう訳が分からない。彼女の頭の中はもうぐちゃぐちゃになっていた。抵抗する気力も、何もかもが喪われた。
結合部から聞こえる淫靡な水音が、まるで永遠に続くかのような錯覚に陥る。
「抜いて…………抜いて……えぇ……。んぐっ……んんっ……んぁっ……。嫌……許して…………助けて……えっ!」
ルシファーから涙が止まらない。
そして戦人からの責め苦も止まらない。
痛みと快感が入り交じった熱い疼きが収まってくれない。
激しく何度も腰を打ち据えながら、戦人は貪欲に快感を貪り続ける。生暖かい肉の感触が、芳醇なワインを熟成させるかのように、戦人の射精感を高めていった。
“そろそろ……だな”
果てしない陵辱の渦の中で、残り少ない理性で……ルシファーはそんな声を聞いた気がした。
何が? 何が『そろそろ』だというのだ?
嫌な予感がする。
いや……『予感』なんかじゃなくて……この後に残されたものといえば……。
「止めろ…………それだけは止めろ。うっく…………止めて…………下さい……うぅ。お願い……だからぁ……ふぁっ……止めて……よぉ。ねぇ? っく……はぁっ……あぁっ。ねぇ?」
悪魔として生まれて、彼女は初めて人間相手にはっきりと懇願を口にした。命令口調ではなく……。
だが……何度も繰り返すが今の戦人には慈悲は無い。
「…………悪いな。もう遅えよ」
「………………え? あ? 嘘…………嫌……。嫌よ…………こんなの……。あ……あぁっ……」
ルシファーの下腹の奥で、じわっと生暖かい感触が満ちていく。
自分は……人間の手でここまで堕とされ汚されたのだと……絶望に目の前が暗くなる。いっそのこと死んでしまいたいくらいだ。いや……もはや死ぬ気力すら喪ってしまった。
ルシファーの瞳から光が抜け落ち、彼女は脱力する。戦人の腕の中で、彼女は崩れ落ちた。
テーブルへとルシファーが倒れ込む。
戦人と彼女の結合部からは、精液と血の混じったピンク色の液体が溢れ、それは彼女の太股を伝って流れ落ちていった。
「それじゃあ。……第二ラウンドと洒落込もうか」
一度射精したにも拘わらず、萎えようとしない剛直。
それが打ち込まれる感触をルシファーは遠い意識で受け止めた。
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彼が部屋を訪れたのは、ちょっとした思い付きのようなものだった。次の盤の準備にはまだ時間が掛かる。戦人にはクッキーと紅茶を用意して待って貰っていたが、それまでに菓子が保つかどうかは少々不安なところだ。
彼は執事だ。主人のゲームの相手である戦人を持て成すのも彼の仕事だ。それにあの客人は何だかんだ言いながら、自分のクッキーが気に入ったようだ。ひょっとしたら本当にクッキーが足りなくなっているかも知れない。
恐らく彼は暇を持て余していることだろう。ならばベアトリーチェに対する愚痴を共に吐くのも悪くない。それで彼の気力が少しでも回復するなら、次の盤面もまた面白いことになるかも知れない。
ゲームが面白いのは、あくまでも互いに打ち負かさんとする相手がいるからだ。その相手にやる気がなければ、それはもうゲームとして成立しない。手段としては相手の気力を折るのも戦略の内だろうが、それでは観戦者としても面白くない。
「失礼します」
ロノウェは戦人のいる部屋……そのテーブル脇に顕現した。
「よお。あんたか。丁度よかった。紅茶のお代わりを頼む。色々と遊んだら喉が渇いたんだが、切らしてしまって参ってたんだ」
椅子に座って戦人が笑いながらロノウェを出迎える。
「それは失礼致しました。すぐにお代わりを用意して――」
ロノウェもにこやかに笑い返したが、すぐに部屋の異様に気付く。部屋に立ちこめる濃密な雄と雌の匂いに気付かないわけがない。
「……なっ!?」
そしてその正体にもすぐに気付く。
彼の足下で、長髪の少女が無惨な姿で転がっていた。服は原型を思い出すのも難しいくらいに千切られ、もはや服とは呼べない。肌を隠すことも出来ないそれは、ただの布きれだ。
ほとんど全裸の状態で、ルシファーは気を失っていた。その秘部からは戦人の精液が溢れ出ている。どれほどの陵辱を彼女に与えたのか……。
「一体何を……なされたのですか?」
呆然としたロノウェの呟きに対し、戦人は軽く肩を竦める。
「その姉ちゃんが退屈だって言ってたから、遊んで貰ったのさ」
その答えを理解するのに、流石のロノウェといえども数秒の時間を要した。
「……なるほど。ぷっくっくっく……。そういうわけですか」
右代宮戦人が油断のならない存在だというのは理解していたが、まさかここまで力を付けるとは、ロノウェにしても驚きだった。
おそらく、この傲慢なる長女はいつまでも戦人が以前の彼と同じだと思い、油断していらぬちょっかいを出したのだろう。そして、彼に返り討ちに遭った。ロノウェはそう理解した。
「その様子だと、随分とお楽しみだったようですね」
「ああ、楽しかったぜ。気が付いたらまた相手して貰いたいくらいだ」
そして戦人は不敵に笑みを浮かべる。それに対し、ロノウェも軽く肩を竦めて笑みを返した。
「それは何よりです。では、私はそろそろ失礼します。すぐに紅茶のお代わりをお持ちいたしますので」
「ああ、ついでに菓子の方も頼む。それとその姉ちゃんも連れて行ってくれ」
「畏まりました」
恭しくロノウェは頭を下げた。
「ああそれとだ」
「……はい、何でございましょう?」
ロノウェが立ち去ろうとすると、不意に戦人に呼び止められた。
「ベアトリーチェの奴に伝えておいてくれ。『俺は絶対お前らなんかに屈しない』ってな。どうせ向こうも承知してると思うけどよ」
ロノウェはしばし戦人の瞳を見詰める。青白い氷を宿したその瞳は冷たく輝いていた。それを砕くのは……流石のベアトリーチェといえどもどうなることやら?
どうやら次のゲームも面白くなりそうだ。
「ぷっくっくっくっ。……はい。確かに伝えさせて頂きます。それではまた後ほど」
思わず笑みを漏らし、そしてロノウェは部屋を立ち去った。彼の姿とルシファーの姿が同時に掻き消える。
戦人は一人、残り少ないクッキーを摘みながら、深く息を吐く。
いきり立った思いは、まるで萎えようとしなかった。
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