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幻肢」(2010/09/09 (木) 01:18:36) の最新版変更点

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本スレには未投稿です。 うみねこ本スレのウィル×理御トークにぐぐっときて一念発起して書いてみました。 (…さないでください) 記憶が混濁している。何も思い出せない。 ここがどこなのか、自分が何者なのか。 何かに追われていたような焦燥感が鈍る記憶の後を追いかけようとするが、すぐにふっ、と霧散してしまう。 ただ、何がわからないかすらわからないのに、それが大事なことなのだというおかしな実感があった。 こんなにもすべてがあいまいなのに、なぜか不安を感じない。この、体を包むぬくもりのせいだろうか。 どろりとした重い眠気のような眩暈を振り払い目を開いたが、視界は光で白く塗りつぶされて何も見えなない。 その白い霧の中に、黒いシルエットが浮かんだ。 (…さないでください) また聞こえた。さっきと同じ声。 記憶がつながらないけど、それだけはわかった。 そしてそれは先ほどから何度もリフレインし、頭の芯にぼんやりと、残滓のようにこびりついた言葉だった。 わずかずつであるが、ゆっくりと体の感覚がよみがえる。手にぬるりと絡みつく、妙な感触。鉄のにおい。 ざらっとした布の端切れのようなものが、腕をすべった。 頬にあたたかな何かが触れた。気配を捉え、意識がぎゅうっとまとめられる。 その感覚に推されて、衝動が全身に駆け抜け、気づけば叫びだしていた。 「離さないで、ください」 そうか、これは私の叫びだったのか。 それが背中を撫ぜる手と気がついたのは、唇をふさがれた後だった。 耳朶を打つ優しい声は、たぶん自分の名前。 背中を抱いたまま、肌に張り付いたシャツをそっとはだけられ、大きな「手のひら」が胸に触れた。 手? (ソレガソンザイスルハズガナイ) 頭の奥がびりっと、ノイズのように違和感を捕らえた。 暖かな手の感触を味わって居たいのに、髪を梳く感触を心地よく感じるのに (ソレハウシナワレテシマッタハズ) そう思った瞬間、それがなかったかのような空虚を感じる。 意識で追いかけなければ、行ってしまう、消えてしまう。追いかけないと…と、焦っる気持ち。 混乱して、ふらふらと心が揺れているのがわかる。 「待って、ください…」 きゅっと胸の内を締める感覚に思わず声を上げると、触れてくる手が止まった。 止めて欲しくない、触れられたい、離れたくない。ぬくもりに包まれたい。 そう、もどかしさを頭の中で言葉にした瞬間、羞恥がじわりと胸に広がる。 快楽が欲しいなんて、そんな事、思っただけでも頭に血が上る。 物心ついたときからずっと、頼るより、助ける強さを持ちたい、公平で、広く見識をもち、理解し、自分を律して、常に正しく。そうでいなさい、そうでありたいと。 強く、かたくなに、必死に、祈るように。そうなるために、日々自分を鍛え続けてきた。 一本の刀のように強固に己を鍛えてきた。それなのに、こんな縋る様な不安感は初めてで。 手はすでに愛撫をやめ、やさしく、慈しむように背中を撫でる。 「そうじゃ、なく、て…」 言わなくては、だめなのだ、態度を示さなくては。 勇気を出したのか、胸の切なさをこらえきれなくなったのか、ぎゅっと目をつぶって、彼に、飛びつくように抱きついた。 合わさった裸の胸から体温が流れ、うろたえたように跳ねる自分の鼓動が聞こえる。伝わってしまう。 のどの奥で言葉がからまって、息を求めるように口を開く。慣れない猫のように体を伸ばし腕を回し、噛み付くように唇を重ねて舌を捕まえた。 おそるおそる焦点を合わせると、金色の目がこちらを射すくめた。 ぞくりと、心が震えた。 顔は熱くて、なのに指先は死者のように冷えて、言うことを聞かない。 また、頬に手が触れた。  男の…ウィルの、口が動いた。 音は聞こえなかったが、深く考えるな、と言っているような気がした。 そして、 右代宮理御は、一瞬で忘れていた感覚に追いつかれた。 防波堤を崩すように勢いよく、飲み込まれる。 「う、…っ、うぁ、うぁぁぁぁぁぁぁぁ…っ!」 殺される、消えてしまう、飲み込まれる。 黒い猫が、たくさんの瞳が、金色に包まれて、無数の爪に引き裂かれる。 ちがう、もういない。怖い猫はもういない。 頭の中では理解している。なのに、 ー 黒い獣がのしかかる。 ちがう、これは、この「人」は、違う。 ベルンとの戦いの中で湧き上がった恐怖が強い刺激と混ざり合って、妙な興奮を呼び起こしていた。 びくりとも、体が動かない。舌の根が凍って、言葉が紡げない。 ー 服ごと、皮膚が引き裂かれたような気がした。 冷えた外気に鳥肌が立つ、そう思った次の瞬間には胸のうちから全身にじわりと、熱が広がっていく。 ー 柔肌を鋭利な爪がなぞり、きりきりと皮膚を引っ張られる。 歪む現実。幻想に侵される。 ー 意識の遠いところ、自分でない自分が抓られて悲鳴のような声を上げた。 「はっ…はぁ……あ、は…く………」 舌で唇を開かれ、喉に熱い唾液が流し込まれる。意識がなくなるまで、思考がかき混ぜられて、呼吸をすることさえ許されない。 次第に身体を支えることもできず、ただぼんやりとその熱さに溺れ、痩せたからだが力なく地を這った。 少しずつ感覚がよみがえる。しかし、体の方はそれどころではなかった。 「息、でき、な…………んっ!!!」 腕を掴まれて、背中にのしかかる重み。 ぎりぎりと体幹がねじられ。意図しない方向に足が曲げられる。 つま先からからぞわぞわと這い上がる感触。ぐったりとしたはずの身体の内側が意思に逆らいびくびくと蠢き、太股に、何かがつたった。 下腹部に何かがからみつくと、ぎちぎちと身体の内側がきしみをあげた。 「……………い…いた…」 その痛みに、今まで散々曖昧に散らされた感覚が急にはっきりとし、凝縮されて脳髄にたたきつれられる。 「ふあ、あ、あ…っ、熱い…のが…はいっ…て」 弱い内側に、熱い、ごつっとしたものが押し付けられる。鈍痛もあったが、それ以上にとにかく熱かった。 丹念に、悪く言えばしつこく攻めあげられた全身は濡れてひくつき、散々焦らされた媚肉がきゅう、っと異物を締め付ける。 その反応に気づいたのか、同じ箇所を執拗に擦り上げられる。 強すぎる刺激に身体をよじってもがくと、痩せた胸の先はぴくりと勃ち上がり、抽送のたびに地面に擦られて小さな背中をぞわぞわと震わせる。 柔肌に大きな男の手が噛み付き、太股が歪に形を変える。 決して乱暴なわけではない。ただがむしゃらに動いているだけ。 自らも、それに答えるかのように体内がうねる。 「どうして…私、こんな、中、動く…」 びくびくと収縮を続けるなかの動きに、慄きながら、自分の中がすでに満たされてしまったことを感じた。 息ができなくて、喉の奥が痙攣している。 口の中に指を差し込まれた。肺に滑り込む空気に息をつくが、今度は指の動きに意識がいってしまう。 請われるまま指を吸うと、べたべたにかき混ぜられる。 「だめ………そこ……ひっ……あ………っ………あ」 喉に空気が通り、無意識のうちにこらえていた声が嬌声にかわる。 体内をかきまわす動きと唾液が立てる音、それにわずかに理音の呻きが絡まって、理性を揺さぶり、感覚をにぶらせていった。 いつのまにか指が口から引き抜かれていたが、それにすら気づかない。 もはや理御の意識がそこにしか行ってないのを理解したのか、全身を撫でていた手が、腰をがしっと掴み、大きく奥を追い詰め始めた。 「あっ、あ…あ、だめ、だ…や…もう…」 肉の壁でぎゅうっと圧迫される。中でうごくモノがふくらんで、びくびくと動くのがわかった。 観念したように、理御は男の名を呼んだ。 「う…ウィ…ル…ッ」 首筋に顔を摺り寄せられ、首に噛み付かれた。同時に熱いものが、ひときわ強く奥にたたきつけられた。 びくっと、中が震えて、熱いものが流し込まれる。 細い背中を震わせて、そのすべてを受け止めると理御はぐったりと地に伏せた。 「あ…」 ぼんやりする頭の中で最後の一滴まで搾り出そうと、中が蠢くのがわかる。 答えるようにゆるゆると抽送を続けられ、あふれた粘液がぼたぼたと内腿にこぼれ落ちた。 ー 大きな黒い獣に抱きしめられる。 まただ。すうっと、体中の感覚が遠のいていく。ゆるい安堵感。 ー そして、意識が真っ黒に、塗りつぶされていった。 【幻肢】 事故や病気で手や足を失ったにもかかわらず、存在しない手足がそこに存在するかのように感じること。 あの日、魔女ベルンカステルに追われ追い詰められた理御は、最期に彼の元に駆けつけたウィルとともに、意識を手放す最後の瞬間まで最期まで運命に抗い続けた。 猫たちに囲まれて、本気で死ぬのだと思った。 なのに、最後どうなったのかは、混濁した記憶の空白があるだけで、いまでも思い出せない。 気づいたときには右代宮の屋敷のベッドに眠っていた。 殺されたはずの縁者たちも欠けることなく、魔女の劇場で見た惨劇が幻だったかのように何もかもが元通りだった。 最初のうちはあまりの状況の変化に混乱しつつあった理御だったが、次第に落ち着き、 よく考えてみれば、あちらこそが夢、文字通り魔女幻想であったのだということを次第に「思い出して」いった。 そして右代宮次期当主としての務めをこなす日々にもどっていく。 金蔵の話し相手をし、高校に通い、帝王学を学び、父や祖父の仕事に同伴する忙しい日々に戻っていく。 それでもあれが夢でないという証拠がある、体に残るわずかな鈍痛と、気がつけば視界の隅にウィルがいるという事実だった。 金蔵に客人として請われ、右代宮家に残ったウィルは、蔵書を読んだり、屋敷の者の話し相手をしながら、 たまに難しい書き物をしたりしながら静かに暮らしている。 変わらず館に滞在してくれているという事は、少なくとも嫌われてはいないのだろう。 そして体中に残った傷。最初は起き上がれないほどだったが、次第に動けるようになっている。 それでも気になってついついあれこれと世話を焼いてしまう理御だった。 その日も理音はウィルに声をかけた。 ボロボロになってしまったSSVDの制服は処分したのか、制服を思い出させる青いジーンズと、白いシャツを好んで身に着けていた。 彼曰く「運命を違え様相がまるで変わった。これこそが奇跡だな」と呼ばれている書庫が今の彼のお気に入りのようだ。手にしたペーパーバッグを伏せて、こっちをじっと見る。 「どうした」 「あの、…不便はありませんか?」 「いや、特に無いが?今日だけで3回は聞いた気がするぞ、その台詞」 片袖が風に揺れた。 「いや、なんでもないのなら、それなら…いいんです」 自分を、暗闇から連れ出してくれた彼の腕。 自分がウィルに触れないように、彼もまた理御に触れることはない。 許されるのであれば、もう一度彼に触れたい、触れられたい。 (ワタシナンカホオッテニゲテクダサイッテオイイナサイヨ) 胸からこみ上げる高揚と思慕を魔女の声が、絡めとる。 彼の傷を痛ましく思うと共に、心の奥に、よくない記憶がよみがえる、 そもそも、あの時、本当に彼は自分を抱いたのか。あれは、現実だったのか。 片腕で自分の背中を抱いて、「もう一つの腕」で私に---------- かっ、と顔が熱くなるのがわかる。 失われたはずの腕の感触を自分は感じたとでもいうのか。 もしかしたら、クレルが見せた幻想のような、ただの幻だったのか。幸せな。 しかし確認したくとも、そんなこと、聞けるわけが無い。 そうして悶々とているから、こんな風にウィルの周囲をうろうろとして、要領を得ない呼びかけをして黙り込んでしまうのだ。 そんなことを考えていたその時だった。 「え……………」 幻かと思った。 何かが、唇に触れた。 やわらかいものではない、指、なのだろうか。思考が止まる。 あわてて周囲を見回すと、ウィルの後姿が遠ざかっていく。取り残されたような袖が歩みとともに揺れ、彼の後を追いかける。 「ウィル!」 ウィルが振り返る。廊下から差し込む逆光で表情が見えない。 どうやって声をかけたらいいのかわからない。 緊張と混乱で言葉がでてこない。 「すみません…、あ、あの…なんでも、ありません」 ぼやけたウィルの輪郭がゆらっと、ゆれた。 「…あんまり気に病むな、頭痛にならァ」 再び振り返り廊下の反対側に消えた瞬間、理御はその場にへたり込んでしまった。 その夜。 「ウィル、いますか…?」 自分でもわけがわからなかった。 こんな夜遅くに、一人で、ウィルの部屋を訪れるなんて。 自分自身何を考えているのか信じられない。 しかし、寝ぼけているわけでもうなされているわけでもなんでもない。 こんなに気がかりでは、きっと今夜は眠れない。そう思うと、いても立ってもいられなくなったのだ。 「あァ、どうしたんだ、こんな遅くに」 ベッドに入って小説を読んでいたウィルはサイドボードに本を伏せると部屋の明かりをつけた。 理御はきょろきょろと周囲をうかがって、ベッドサイドに立つ。ここに来たばかりのウィルは大怪我をしていたので、そのために看護用の椅子が置いてあった。 「す、座って、いいですか」 「あァ」 明らかに理御の様子がおかしいとは思っているが、なにか思い詰めたような表情が不憫に思えて、下手につつくと自爆しそうな気がして、それ以上は詮索しないことにした。 「何かあったのか?」 「い、いや…なんでも」 下を向いて両手の指をもそもそさせる理御。 「何でもないのに来たのか?」 記憶の中の熱が、理御の中でよみがえる。 執拗に探られた部分がきゅっと動き全身が硬直した。しばらく口の中でごにょごにょつぶやいて、 「…いけませんか」 「ん?」 思わず裾を引いてしまったが、「会いたかったから」などと言える訳もなく、うつむいて黙り込んでしまう。 きっ、と顔をこわばらせ、まっすぐ顔を上げる理御。 「そ、それはそうと貴方は怪我人なのですから、あんまりうろうろしないでください」 ぶっきらぼうに言った。 「…ふむ、おかしなヤツ。体のほうは、まあ、別に動く分には問題ねェけどな」 すい、と袖の通った方の手を伸ばす。 理御のあごに触れる。猫をかわいがるような手つきだ。 「何もないなら、そ、それは、よかった。…あと、その、変な触り方をしないように、困ります。」 むずがる理御が面白いのか、笑っている。 「嫌か?」 「嫌では…ありません」 自分は卑怯だ。こんな、くだらないプライドと羞恥心で、相手を試している。 「わ…わた、しは、その、貴方に…」 言い終わらないうちに、片手で腕を引かれた、理御もまた彼に体重をかけることがないよう気遣いながらゆっくりと力を抜いて引き寄せられる。 「キスをしてもいいか?」 胸に両腕を付いて、ウィルの隻腕を見た。 「す…、少し待っていてください」 ジャケットのボタンに手を伸ばすと、ためらいがちに袖を腕に滑らせる。 「………………」 しばらく考えこむように手が止まり、やがて諦めたようにばさっと乱暴にベッドサイドに置いた。 タイをほどくと華奢な鎖骨が、カフスボタンをはずす手首は片手で掴めそうに細い。 糊の利いたシャツが背中を滑り降りると、もぞもぞコルセットのようなものを解く。窮屈な戒めを解かれ、白い柔らかそうな胸が露出した。 「そう、じっと見ないでください」 自分で脱いでおいてなんだ、と言えなくもないが、今度はライトのシャツに手をかけて、一つ一つボタンを外し始めた。あくまで顔を見ないように、顔をうつむいたまま。 戦いのために鍛えられた体は想像通り堅く引き締まっており、赤銅のような肌には無数の傷跡が見えた。ベルンから自分を守ってくれた時についた傷跡もある 。肋骨のあたりと、わき腹に一閃、血が固まって赤黒い筋を引いていた。 「自分で脱げるぞ」 「い…いいから、じっとしていてください」 ぷい、と顔をそらしてしまった。 「警戒心を持った猫みたいにぴりぴりしながら言われても、説得力がねェな」 「無理してませんってば、その…」 そぞろにウィルの腕を見ながらごにょごにょと言葉を探す。 「私も、当主ですからね、人の上に立つ威厳をですね、見せないとですね…」 ばたばたしながら訳の分からない事を言い出した。 「20点」 口角がひきつった。 「わたしは、貴方を誘惑しているのです。怪我人の貴方を押し倒して、悪いことをしようとしているのですよ」 ウィルはそれ以上何も言わずに頭をぽんぽんとなでてやった。 考え込むふりをして、すっと背中に手を伸ばす。肉付き薄い尻に触れると、理御が「ひゃっ」と声を上げた。 「ひ、卑怯です。不意打ちだなんて」 「なんでお前に触られるまで待ってなきゃいけないンだよ」 さわさわと撫でられる。 「ですが、私はっ、貴方の体を思って…」 だんだん語尾が小さくなっていく。 「?」 ウィルは手を止める。肩をぎゅっと縮らせた理御が、ぶんぶんと頭を振る 「な、なんでも、ありません、続けて…ください」 「続けて、欲しいのか?」 ごまかしているうちに、どんどん追い詰められている気がする。 あきらかに様子のおかしい理御に、心配そうに声をかけただけなのだが。 「あ、あう…、き、気にしないでください」 「うわッ」 股間の膨らみをぎゅっと掴まれて、ウィルが声を上げる。 「いきなり、なんつうことしやがる…」 「ここに触れれば気持ちいいのですよね、わ、わかりますから」 真っ赤に頬を高潮させて、理御。 「それにしては扱いがなっちゃいないぜ、ったく…」 そのまま、触っていろよ、と耳元で囁かれた。背筋を逆に撫ぜられる感触とかさなり、ぞくっと背中が総毛立った。 尻に触れた手をすすす、と腰に上げて細い体を引き寄せた。あっ、と声が漏れそうになったが、唇でそれをふさがれた。 「んっ…んんぅ…んっ、ふ……んく…っ」 思わず目を閉じてしまう。視角で感じられないだけに余計に触覚に集中してしまうのであろう、すっかり大人しくなってしまった理御の口腔を舌で丁寧にほぐしてゆく。 丁寧に歯茎をなぞりあげ、わななく舌の根をつつき、溢れた唾液を交換する。 「ふぁ、はふ…」 じゅぶ、じゅるるっと湿った音が、不器用に息を求める吐息と混ざり合い、くらくらと感覚を鈍らせる。 長い睫が小刻みに震え、困ったように潜められた眉が時々ぎゅっと寄せられる。 「んっ-------ん--------」 舌を弄ぶのを止めると、理御にも余裕ができたのか、膨らんだ股間をゆっくりと撫でてくる。 情欲というよりは、此方に快楽をもたらそうとしているのか、こわごわ、そろそろとした動き。 必死な姿を可愛く思えて、再び手を内ももに滑らせた。薄く柔らかく付いた腿の肉を手のひらでそっと掴むと、きゅっと筋がこわばる感触を捕らえる。 柔らかくて、暖かい足の感触。もっとぬくもりに触れたくなり、ベルトのバックルを探すが、すでに外されており、片手でズボンのファスナーに手をかけた。 手の動きを察して、理御が、少し腰を浮かせた。 ひたり、と触れる手の感触にふるる、と肩をわななかせる。 「んぅ……ふ……」 すべすべとした肌の感触を手のひらで味わっていると、いつの間にか自身を掴まれていた。 「く…っ、こら」 思わず口を離す。唾液が糸を引いた。と息をついて理御がこちらを見ている。 とろんとしたうつろな表情ではあるが、何か追い詰められているかのよう。憂いを秘めて瞼が震える。 「腕にしがみついてろよ。そのほうが楽だろう?」 隻腕にしがみつくこともできず、ウィルの膝に細腕をつっぱり、頭をふるふると震わせる。 「……………」 その腕をつつっとつついた。 「わ、きゃっ」 バランスを崩し理御が胸に倒れこむ。 ウィルは、自分の腕と理御を交互に見、 「なるほど。やっぱりな。道理で可笑しいと思った」 「あ…」 ばつが悪そうに理御が視線をそらす。 「…貴方の腕を見るたびに思ってしまうのです」 「ん?」 「その腕は私のせいなんだと、私を守ってくれたせいだって…それを申し訳なく思うと共に、どこかで、うれしく思ってしまう自分が、恥ずかしい。だからと言って…こんなことをしても、償えない事なのに」 「だから、何度もおかしなごまかし方をしてきたのか。」 理御は顔を上げて、すみません。と言い、頭を下た。 「ベルンカステルとやりあったのは俺の意思だ、お前が気にする事じゃネェ。あの場にいたのがお前じゃなくても、俺はあいつと戦った。俺の気持ちを、蔑ろにするんじゃねェよ」 謝罪の姿勢で下げたままの頭上に、淡々とした言葉が降り注ぐ。 「そうですよね…恥知らずの上に、…自惚れて。自分が恥ずかしくて、消えてしまいそうだ」 視線をそらすこともできずに、つぶやいた。 沈黙が場を満たした。 最初に口を開いたのは、ウィルだった。 「…いいか、よく聞け、俺はあいつと戦った。だけど、俺の未熟で、腕を落として、ずたぼろでみっともない姿を引きずってまでお前を追いかけたのは」 理御の頬に両手を添え、ゆっくりと上を向かせた。 「お前を 護りたかったからだ」 「う…ウィ…ル…ッ」 理御が口をぎゅっと引き結ぶ。何と声をかけたら言いかわからず、こみ上げる感情を、ゆっくりとかみころしていく。涙をこらえるようにぎゅっと瞑った目の端に、雫が浮かんだ。 「どうしよう、私は…、どうしてこんなに申し訳ないことが、嬉しく思ってしまうのだろう」 ウィルがふっ、と笑って理御の手を取り頬の手にふれさせる。 「あれ…」 「第2則、作中の人物が仕掛けるトリック以外に、作者が読者を惑わせる記述をすることを禁ず」 両手をつつむ。それが。 ふわりと唇に触れた暖かい手の感触。 背中を優しくなでる大きな手の感触。 意識を手放す瞬間、幻だと思っていた記憶と、現実がぴったり重なった。 「あ…」 視界の、霧が晴れる。 繋がった。 「私は、まぼろしを、見ていたんですね」 「そうだ、俺の手が「無い」と思い込む幻をな」 抱く「両腕」に、そっと力をこめて。 いつだって触れてくれていた。その手を、現実へと立ち直れない自分を、不安を捨てられない自分をごまかしていたのかもしれない。 「そもそも「無い」と思い込んでいたら、真実も虚実も立ち入れない。気に病む事じゃねェ」 「でも、どうやって、治したんですか?」 「気がついたら両腕があった。それだけだ。余計な事を気にしても精々無くなるくらいで、「有る」ままにしておいた方が便利だしな」 両手でウィルその手を握る。手の中にぴくっと、脈がつたわってくる。 「現実に戻ってきたから、「なかったこと」になったのかもしれないですね」 「それとも、「腕のことなんか無くても俺に愛されている」と気づいたからかも知れないな」 理御がきょとんとする。 「…ま、好きなほうに解釈しろィ。で、どうするんだ?」 両手で顔をおさえる理御。 「困りました。言葉が出てこないんです、あのときは、あなたにちゃんと、言えたのに…」 「何を?」 理御はうっ、と息を呑んだ後、観念して口を開いた 「はなさないでほしい、と」 そして困ったように微笑むと、ライトの目をまっすぐに見た。 「私は、あなたと一緒に、生きたいです…」 「それでいいじゃねェのか。お前は、あたまがかたいなァ」 ぎゅっと、抱きしめられた。 理御も嬉しそうに。胸に頬ずりする。 「ん……ちょ、まってください……っ」 「さっきまでお手手で可愛がってくれてたじゃねェか」 脈打つモノで股間を擦り上げる。 「きゃっ…」 硬くなった芯をきゅっと摘まれ、身体の奥が疼いた。 「可愛い声だな?次期当主さま」 ウィルの身体を気遣って取った体勢ではあったが、今思えば、過激なことこの上ない。 がっちりと腰を押さえられて、身動きもできない。 一度こじ開けられた身体は熱を覚えており、透明な雫が下着を濡らした。 下着をずらされて、ぐりっと欲望を押し付けられた。 「ん……んっ、ん………すこしは黙って、…できないんですか」 尻を抓ろうと手を伸ばした瞬間、ぞくりと下腹が震えた。 「う……ウィル、……わたしは…また…おかしくなって……」 「それでいいんだ」 いいか、と耳元で囁かれる。黙ってうなづくと、硬い熱が身体の内側に滑り込んだ。 「ふぁっ…あ、…んんっ!」 どろどろの内側はウィルを奥まで受け止める。しかし、なれない身体は軋みをあげ、わずかな痛みを伝えた。 体を縮こませて下を向く。 「まだ、きついな…………」 「痛くは…ないです、大丈夫です…!」 腿を掴んで高く上げさせ、つながりを深くさせた。 傷つけないようにゆっくりとした抽送。ゆっくりとその形を伝え、過去の記憶がそれを知ったものだと訴える。 「ん…っ!あ、これ…」 「へぇ、おつむとおなじくこっちも覚えがいいんだな…っ」 あの時は聞こえなかったウィルの声が、余計に興奮をあおる。 「そうは言っても、病み上がりなもんで、こっちもあんまり保たないんだが…なっ」 腕はあるものの、傷だらけの体だ、動くたびにうっすらと汗が浮かぶ。 「あっ、はぁっ、傷、痛いのですか……?」 「痛くはないが…ちょっと、体力が心もとない…ん?」 胸に手を置いて理御がゆっくりと腰を上げる。 控えめな胸がふるふると震えた。 「じっと、していてください…わたし…が、動きますから…っ」 「おい、いいって、そういうのは…」 手首を掴んでいさめる。 「今回は貴方の顔が、見えますからね」 ふふ、と愉しげに笑う振りをする。 「ったく…この馬鹿が…、そこまで、しなくていいんだ、お前、慣れないだろう?」 「そんなこと…」ありません、とは言えなかった。何かを言うたびに墓穴を掘ってしまいそうだった。 ただ、たどたどしく腰を揺らす。 「確かに…男性経験などありませんが」 「女性経験は?」 びくっと、腰の動きがとまる。 「からかわないでください、…それと、貴方に触れるのが嫌なわけではないのです。むしろ…私が感じたように気持ちよくなって欲しいと思っているだけ…です」 「気持ち良かったのか?」 「ん…、は、はい…」 下を向いたまま、耳まで赤くなっている。 大人しくなった理御の腰を抱き寄せて、探り当てた場所を再びなぞりあげた。 「…っ…あ…同じところ…やぁぁ…っ」 「あァ、そのまま、つかまってろ…よっ」 語尾に重ねて下から突き上げる。理御が胸板にしがみついた。 「ふぁ……ウィル…、はなさ……ないで……」 答えの代わりに唇をあわせる。 抽送の音は次第に派手になり、無言の室内が水音で満たされた。 汗を浮かべたウィルが、名残惜しげに唇を離す。 「っは………出るぞ…いいか…」 「はい、……全部受け止めますから…」 びくびくと、下腹部が揺らされる。 「ああっ…あ、あ、あーーーーーーーーーーっ」 精を受け止めて、締め上げて、内へと導く。 「はあ、はあ、は、はぁ…」 全身を弛緩させて、理御がウィルの胸へ倒れこんだ。 「わたしは…幸せです。まぼろしでは、ないのかと、ちょっと心配になるくらい」 「そうか」 頭を撫でる。 「まったく、お前は、心配性だなァ」 理御の尻の肉をぐっと掴みあげた 「なっ……何をするんです…!」 「いつもの仕返しだよ」 ほら、幻じゃないだろ、と言ってウィルは笑った。 頬を膨らませた理御は、目を瞑って猫のように頬ずりした。
本スレには未投稿です。 うみねこ本スレのウィル×理御トークにぐぐっときて一念発起して書いてみました。 (…さないでください) 記憶が混濁している。何も思い出せない。 ここがどこなのか、自分が何者なのか。 何かに追われていたような焦燥感が鈍る記憶の後を追いかけようとするが、すぐにふっ、と霧散してしまう。 ただ、何がわからないかすらわからないのに、それが大事なことなのだというおかしな実感があった。 こんなにもすべてがあいまいなのに、なぜか不安を感じない。この、体を包むぬくもりのせいだろうか。 どろりとした重い眠気のような眩暈を振り払い目を開いたが、視界は光で白く塗りつぶされて何も見えなない。 その白い霧の中に、黒いシルエットが浮かんだ。 (…さないでください) また聞こえた。さっきと同じ声。 記憶がつながらないけど、それだけはわかった。 そしてそれは先ほどから何度もリフレインし、頭の芯にぼんやりと、残滓のようにこびりついた言葉だった。 わずかずつであるが、ゆっくりと体の感覚がよみがえる。手にぬるりと絡みつく、妙な感触。鉄のにおい。 ざらっとした布の端切れのようなものが、腕をすべった。 頬にあたたかな何かが触れた。気配を捉え、意識がぎゅうっとまとめられる。 その感覚に推されて、衝動が全身に駆け抜け、気づけば叫びだしていた。 「離さないで、ください」 そうか、これは私の叫びだったのか。 それが背中を撫ぜる手と気がついたのは、唇をふさがれた後だった。 耳朶を打つ優しい声は、たぶん自分の名前。 背中を抱いたまま、肌に張り付いたシャツをそっとはだけられ、大きな「手のひら」が胸に触れた。 手? (ソレガソンザイスルハズガナイ) 頭の奥がびりっと、ノイズのように違和感を捕らえた。 暖かな手の感触を味わって居たいのに、髪を梳く感触を心地よく感じるのに (ソレハウシナワレテシマッタハズ) そう思った瞬間、それがなかったかのような空虚を感じる。 意識で追いかけなければ、行ってしまう、消えてしまう。追いかけないと…と、焦る気持ち。 混乱して、ふらふらと心が揺れているのがわかる。 「待って、ください…」 きゅっと胸の内を締める感覚に思わず声を上げると、触れてくる手が止まった。 止めて欲しくない、触れられたい、離れたくない。ぬくもりに包まれたい。 そう、もどかしさを頭の中で言葉にした瞬間、羞恥がじわりと胸に広がる。 快楽が欲しいなんて、そんな事、思っただけでも頭に血が上る。 物心ついたときからずっと、頼るより、助ける強さを持ちたい、公平で、広く見識をもち、理解し、自分を律して、常に正しく。そうでいなさい、そうでありたいと。 強く、かたくなに、必死に、祈るように。そうなるために、日々自分を鍛え続けてきた。 一本の刀のように強固に己を鍛えてきた。それなのに、こんな縋る様な不安感は初めてで。 手はすでに愛撫をやめ、やさしく、慈しむように背中を撫でる。 「そうじゃ、なく、て…」 言わなくては、だめなのだ、態度を示さなくては。 勇気を出したのか、胸の切なさをこらえきれなくなったのか、ぎゅっと目をつぶって、彼に、飛びつくように抱きついた。 合わさった裸の胸から体温が流れ、うろたえたように跳ねる自分の鼓動が聞こえる。伝わってしまう。 のどの奥で言葉がからまって、息を求めるように口を開く。慣れない猫のように体を伸ばし腕を回し、噛み付くように唇を重ねて舌を捕まえた。 おそるおそる焦点を合わせると、金色の目がこちらを射すくめた。 ぞくりと、心が震えた。 顔は熱くて、なのに指先は死者のように冷えて、言うことを聞かない。 また、頬に手が触れた。 男の…ウィルの、口が動いた。 音は聞こえなかったが、深く考えるな、と言っているような気がした。 そして、 右代宮理御は、一瞬で忘れていた感覚に追いつかれた。 防波堤を崩すように勢いよく、飲み込まれる。 「う、…っ、うぁ、うぁぁぁぁぁぁぁぁ…っ!」 殺される、消えてしまう、飲み込まれる。 黒い猫が、たくさんの瞳が、金色に包まれて、無数の爪に引き裂かれる。 ちがう、もういない。怖い猫はもういない。 頭の中では理解している。なのに、 ー 黒い獣がのしかかる。 ちがう、これは、この「人」は、違う。 ベルンとの戦いの中で湧き上がった恐怖が強い刺激と混ざり合って、妙な興奮を呼び起こしていた。 びくりとも、体が動かない。舌の根が凍って、言葉が紡げない。 ー 服ごと、皮膚が引き裂かれたような気がした。 冷えた外気に鳥肌が立つ、そう思った次の瞬間には胸のうちから全身にじわりと、熱が広がっていく。 ー 柔肌を鋭利な爪がなぞり、きりきりと皮膚を引っ張られる。 歪む現実。幻想に侵される。 ー 意識の遠いところ、自分でない自分が抓られて悲鳴のような声を上げた。 「はっ…はぁ……あ、は…く………」 舌で唇を開かれ、喉に熱い唾液が流し込まれる。意識がなくなるまで、思考がかき混ぜられて、呼吸をすることさえ許されない。 次第に身体を支えることもできず、ただぼんやりとその熱さに溺れ、痩せたからだが力なく地を這った。 少しずつ感覚がよみがえる。しかし、体の方はそれどころではなかった。 「息、でき、な…………んっ!!!」 腕を掴まれて、背中にのしかかる重み。 ぎりぎりと体幹がねじられ。意図しない方向に足が曲げられる。 つま先からからぞわぞわと這い上がる感触。ぐったりとしたはずの身体の内側が意思に逆らいびくびくと蠢き、太股に、何かがつたった。 下腹部に何かがからみつくと、ぎちぎちと身体の内側がきしみをあげた。 「……………い…いた…」 その痛みに、今まで散々曖昧に散らされた感覚が急にはっきりとし、凝縮されて脳髄にたたきつれられる。 「ふあ、あ、あ…っ、熱い…のが…はいっ…て」 弱い内側に、熱い、ごつっとしたものが押し付けられる。鈍痛もあったが、それ以上にとにかく熱かった。 丹念に、悪く言えばしつこく攻めあげられた全身は濡れてひくつき、散々焦らされた媚肉がきゅう、っと異物を締め付ける。 その反応に気づいたのか、同じ箇所を執拗に擦り上げられる。 強すぎる刺激に身体をよじってもがくと、痩せた胸の先はぴくりと勃ち上がり、抽送のたびに地面に擦られて小さな背中をぞわぞわと震わせる。 柔肌に大きな男の手が噛み付き、太股が歪に形を変える。 決して乱暴なわけではない。ただがむしゃらに動いているだけ。 自らも、それに答えるかのように体内がうねる。 「どうして…私、こんな、中、動く…」 びくびくと収縮を続けるなかの動きに、慄きながら、自分の中がすでに満たされてしまったことを感じた。 息ができなくて、喉の奥が痙攣している。 口の中に指を差し込まれた。肺に滑り込む空気に息をつくが、今度は指の動きに意識がいってしまう。 請われるまま指を吸うと、べたべたにかき混ぜられる。 「だめ………そこ……ひっ……あ………っ………あ」 喉に空気が通り、無意識のうちにこらえていた声が嬌声にかわる。 体内をかきまわす動きと唾液が立てる音、それにわずかに理御の呻きが絡まって、理性を揺さぶり、感覚をにぶらせていった。 いつのまにか指が口から引き抜かれていたが、それにすら気づかない。 もはや理御の意識がそこにしか行ってないのを理解したのか、全身を撫でていた手が、腰をがしっと掴み、大きく奥を追い詰め始めた。 「あっ、あ…あ、だめ、だ…や…もう…」 肉の壁でぎゅうっと圧迫される。中でうごくモノがふくらんで、びくびくと動くのがわかった。 観念したように、理御は男の名を呼んだ。 「う…ウィ…ル…ッ」 首筋に顔を摺り寄せられ、首に噛み付かれた。同時に熱いものが、ひときわ強く奥にたたきつけられた。 びくっと、中が震えて、熱いものが流し込まれる。 細い背中を震わせて、そのすべてを受け止めると理御はぐったりと地に伏せた。 「あ…」 ぼんやりする頭の中で最後の一滴まで搾り出そうと、中が蠢くのがわかる。 答えるようにゆるゆると抽送を続けられ、あふれた粘液がぼたぼたと内腿にこぼれ落ちた。 ー 大きな黒い獣に抱きしめられる。 まただ。すうっと、体中の感覚が遠のいていく。ゆるい安堵感。 ー そして、意識が真っ黒に、塗りつぶされていった。 【幻肢】 事故や病気で手や足を失ったにもかかわらず、存在しない手足がそこに存在するかのように感じること。 あの日、魔女ベルンカステルに追われ追い詰められた理御は、最期に彼の元に駆けつけたウィルとともに、意識を手放す最後の瞬間まで最期まで運命に抗い続けた。 猫たちに囲まれて、本気で死ぬのだと思った。 なのに、最後どうなったのかは、混濁した記憶の空白があるだけで、いまでも思い出せない。 気づいたときには右代宮の屋敷のベッドに眠っていた。 殺されたはずの縁者たちも欠けることなく、魔女の劇場で見た惨劇が幻だったかのように何もかもが元通りだった。 最初のうちはあまりの状況の変化に混乱しつつあった理御だったが、次第に落ち着き、 よく考えてみれば、あちらこそが夢、文字通り魔女幻想であったのだということを次第に「思い出して」いった。 そして右代宮次期当主としての務めをこなす日々にもどっていく。 金蔵の話し相手をし、高校に通い、帝王学を学び、父や祖父の仕事に同伴する忙しい日々に戻っていく。 それでもあれが夢でないという証拠がある、体に残るわずかな鈍痛と、気がつけば視界の隅にウィルがいるという事実だった。 金蔵に客人として請われ、右代宮家に残ったウィルは、蔵書を読んだり、屋敷の者の話し相手をしながら、 たまに難しい書き物をしたりしながら静かに暮らしている。 変わらず館に滞在してくれているという事は、少なくとも嫌われてはいないのだろう。 そして体中に残った傷。最初は起き上がれないほどだったが、次第に動けるようになっている。 それでも気になってついついあれこれと世話を焼いてしまう理御だった。 その日も理御はウィルに声をかけた。 ボロボロになってしまったSSVDの制服は処分したのか、制服を思い出させる青いジーンズと、白いシャツを好んで身に着けていた。 彼曰く「運命を違え様相がまるで変わった。これこそが奇跡だな」と呼ばれている書庫が今の彼のお気に入りのようだ。手にしたペーパーバッグを伏せて、こっちをじっと見る。 「どうした」 「あの、…不便はありませんか?」 「いや、特に無いが?今日だけで3回は聞いた気がするぞ、その台詞」 片袖が風に揺れた。 「いや、なんでもないのなら、それなら…いいんです」 自分を、暗闇から連れ出してくれた彼の腕。 自分がウィルに触れないように、彼もまた理御に触れることはない。 許されるのであれば、もう一度彼に触れたい、触れられたい。 (ワタシナンカホオッテニゲテクダサイッテオイイナサイヨ) 胸からこみ上げる高揚と思慕を魔女の声が、絡めとる。 彼の傷を痛ましく思うと共に、心の奥に、よくない記憶がよみがえる、 そもそも、あの時、本当に彼は自分を抱いたのか。あれは、現実だったのか。 片腕で自分の背中を抱いて、「もう一つの腕」で私に---------- かっ、と顔が熱くなるのがわかる。 失われたはずの腕の感触を自分は感じたとでもいうのか。 もしかしたら、クレルが見せた幻想のような、ただの幻だったのか。幸せな。 しかし確認したくとも、そんなこと、聞けるわけが無い。 そうして悶々とているから、こんな風にウィルの周囲をうろうろとして、要領を得ない呼びかけをして黙り込んでしまうのだ。 そんなことを考えていたその時だった。 「え……………」 幻かと思った。 何かが、唇に触れた。 やわらかいものではない、指、なのだろうか。思考が止まる。 あわてて周囲を見回すと、ウィルの後姿が遠ざかっていく。取り残されたような袖が歩みとともに揺れ、彼の後を追いかける。 「ウィル!」 ウィルが振り返る。廊下から差し込む逆光で表情が見えない。 どうやって声をかけたらいいのかわからない。 緊張と混乱で言葉がでてこない。 「すみません…、あ、あの…なんでも、ありません」 ぼやけたウィルの輪郭がゆらっと、ゆれた。 「…あんまり気に病むな、頭痛にならァ」 再び振り返り廊下の反対側に消えた瞬間、理御はその場にへたり込んでしまった。 その夜。 「ウィル、いますか…?」 自分でもわけがわからなかった。 こんな夜遅くに、一人で、ウィルの部屋を訪れるなんて。 自分自身何を考えているのか信じられない。 しかし、寝ぼけているわけでもうなされているわけでもなんでもない。 こんなに気がかりでは、きっと今夜は眠れない。そう思うと、いても立ってもいられなくなったのだ。 「あァ、どうしたんだ、こんな遅くに」 ベッドに入って小説を読んでいたウィルはサイドボードに本を伏せると部屋の明かりをつけた。 理御はきょろきょろと周囲をうかがって、ベッドサイドに立つ。ここに来たばかりのウィルは大怪我をしていたので、そのために看護用の椅子が置いてあった。 「す、座って、いいですか」 「あァ」 明らかに理御の様子がおかしいとは思っているが、なにか思い詰めたような表情が不憫に思えて、下手につつくと自爆しそうな気がして、それ以上は詮索しないことにした。 「何かあったのか?」 「い、いや…なんでも」 下を向いて両手の指をもそもそさせる理御。 「何でもないのに来たのか?」 記憶の中の熱が、理御の中でよみがえる。 執拗に探られた部分がきゅっと動き全身が硬直した。しばらく口の中でごにょごにょつぶやいて、 「…いけませんか」 「ん?」 思わず裾を引いてしまったが、「会いたかったから」などと言える訳もなく、うつむいて黙り込んでしまう。 きっ、と顔をこわばらせ、まっすぐ顔を上げる理御。 「そ、それはそうと貴方は怪我人なのですから、あんまりうろうろしないでください」 ぶっきらぼうに言った。 「…ふむ、おかしなヤツ。体のほうは、まあ、別に動く分には問題ねェけどな」 すい、と袖の通った方の手を伸ばす。 理御のあごに触れる。猫をかわいがるような手つきだ。 「何もないなら、そ、それは、よかった。…あと、その、変な触り方をしないように、困ります。」 むずがる理御が面白いのか、笑っている。 「嫌か?」 「嫌では…ありません」 自分は卑怯だ。こんな、くだらないプライドと羞恥心で、相手を試している。 「わ…わた、しは、その、貴方に…」 言い終わらないうちに、片手で腕を引かれた、理御もまた彼に体重をかけることがないよう気遣いながらゆっくりと力を抜いて引き寄せられる。 「キスをしてもいいか?」 胸に両腕を付いて、ウィルの隻腕を見た。 「す…、少し待っていてください」 ジャケットのボタンに手を伸ばすと、ためらいがちに袖を腕に滑らせる。 「………………」 しばらく考えこむように手が止まり、やがて諦めたようにばさっと乱暴にベッドサイドに置いた。 タイをほどくと華奢な鎖骨が、カフスボタンをはずす手首は片手で掴めそうに細い。 糊の利いたシャツが背中を滑り降りると、もぞもぞコルセットのようなものを解く。窮屈な戒めを解かれ、白い柔らかそうな胸が露出した。 「そう、じっと見ないでください」 自分で脱いでおいてなんだ、と言えなくもないが、今度はウィルのシャツに手をかけて、一つ一つボタンを外し始めた。あくまで顔を見ないように、顔をうつむいたまま。 戦いのために鍛えられた体は想像通り堅く引き締まっており、赤銅のような肌には無数の傷跡が見えた。ベルンから自分を守ってくれた時についた傷跡もある 。肋骨のあたりと、わき腹に一閃、血が固まって赤黒い筋を引いていた。 「自分で脱げるぞ」 「い…いいから、じっとしていてください」 ぷい、と顔をそらしてしまった。 「警戒心を持った猫みたいにぴりぴりしながら言われても、説得力がねェな」 「無理してませんってば、その…」 そぞろにウィルの腕を見ながらごにょごにょと言葉を探す。 「私も、当主ですからね、人の上に立つ威厳をですね、見せないとですね…」 ばたばたしながら訳の分からない事を言い出した。 「20点」 口角がひきつった。 「わたしは、貴方を誘惑しているのです。怪我人の貴方を押し倒して、悪いことをしようとしているのですよ」 ウィルはそれ以上何も言わずに頭をぽんぽんとなでてやった。 考え込むふりをして、すっと背中に手を伸ばす。肉付き薄い尻に触れると、理御が「ひゃっ」と声を上げた。 「ひ、卑怯です。不意打ちだなんて」 「なんでお前に触られるまで待ってなきゃいけないンだよ」 さわさわと撫でられる。 「ですが、私はっ、貴方の体を思って…」 だんだん語尾が小さくなっていく。 「?」 ウィルは手を止める。肩をぎゅっと縮らせた理御が、ぶんぶんと頭を振る 「な、なんでも、ありません、続けて…ください」 「続けて、欲しいのか?」 ごまかしているうちに、どんどん追い詰められている気がする。 あきらかに様子のおかしい理御に、心配そうに声をかけただけなのだが。 「あ、あう…、き、気にしないでください」 「うわッ」 股間の膨らみをぎゅっと掴まれて、ウィルが声を上げる。 「いきなり、なんつうことしやがる…」 「ここに触れれば気持ちいいのですよね、わ、わかりますから」 真っ赤に頬を高潮させて、理御。 「それにしては扱いがなっちゃいないぜ、ったく…」 そのまま、触っていろよ、と耳元で囁かれた。背筋を逆に撫ぜられる感触とかさなり、ぞくっと背中が総毛立った。 尻に触れた手をすすす、と腰に上げて細い体を引き寄せた。あっ、と声が漏れそうになったが、唇でそれをふさがれた。 「んっ…んんぅ…んっ、ふ……んく…っ」 思わず目を閉じてしまう。視角で感じられないだけに余計に触覚に集中してしまうのであろう、すっかり大人しくなってしまった理御の口腔を舌で丁寧にほぐしてゆく。 丁寧に歯茎をなぞりあげ、わななく舌の根をつつき、溢れた唾液を交換する。 「ふぁ、はふ…」 じゅぶ、じゅるるっと湿った音が、不器用に息を求める吐息と混ざり合い、くらくらと感覚を鈍らせる。 長い睫が小刻みに震え、困ったように潜められた眉が時々ぎゅっと寄せられる。 「んっ-------ん--------」 舌を弄ぶのを止めると、理御にも余裕ができたのか、膨らんだ股間をゆっくりと撫でてくる。 情欲というよりは、此方に快楽をもたらそうとしているのか、こわごわ、そろそろとした動き。 必死な姿を可愛く思えて、再び手を内ももに滑らせた。薄く柔らかく付いた腿の肉を手のひらでそっと掴むと、きゅっと筋がこわばる感触を捕らえる。 柔らかくて、暖かい足の感触。もっとぬくもりに触れたくなり、ベルトのバックルを探すが、すでに外されており、片手でズボンのファスナーに手をかけた。 手の動きを察して、理御が、少し腰を浮かせた。 ひたり、と触れる手の感触にふるる、と肩をわななかせる。 「んぅ……ふ……」 すべすべとした肌の感触を手のひらで味わっていると、いつの間にか自身を掴まれていた。 「く…っ、こら」 思わず口を離す。唾液が糸を引いた。と息をついて理御がこちらを見ている。 とろんとしたうつろな表情ではあるが、何か追い詰められているかのよう。憂いを秘めて瞼が震える。 「腕にしがみついてろよ。そのほうが楽だろう?」 隻腕にしがみつくこともできず、ウィルの膝に細腕をつっぱり、頭をふるふると震わせる。 「……………」 その腕をつつっとつついた。 「わ、きゃっ」 バランスを崩し理御が胸に倒れこむ。 ウィルは、自分の腕と理御を交互に見、 「なるほど。やっぱりな。道理で可笑しいと思った」 「あ…」 ばつが悪そうに理御が視線をそらす。 「…貴方の腕を見るたびに思ってしまうのです」 「ん?」 「その腕は私のせいなんだと、私を守ってくれたせいだって…それを申し訳なく思うと共に、どこかで、うれしく思ってしまう自分が、恥ずかしい。だからと言って…こんなことをしても、償えない事なのに」 「だから、何度もおかしなごまかし方をしてきたのか。」 理御は顔を上げて、すみません。と言い、頭を下た。 「ベルンカステルとやりあったのは俺の意思だ、お前が気にする事じゃネェ。あの場にいたのがお前じゃなくても、俺はあいつと戦った。俺の気持ちを、蔑ろにするんじゃねェよ」 謝罪の姿勢で下げたままの頭上に、淡々とした言葉が降り注ぐ。 「そうですよね…恥知らずの上に、…自惚れて。自分が恥ずかしくて、消えてしまいそうだ」 視線をそらすこともできずに、つぶやいた。 沈黙が場を満たした。 最初に口を開いたのは、ウィルだった。 「…いいか、よく聞け、俺はあいつと戦った。だけど、俺の未熟で、腕を落として、ずたぼろでみっともない姿を引きずってまでお前を追いかけたのは」 理御の頬に両手を添え、ゆっくりと上を向かせた。 「お前を 護りたかったからだ」 「う…ウィ…ル…ッ」 理御が口をぎゅっと引き結ぶ。何と声をかけたら言いかわからず、こみ上げる感情を、ゆっくりとかみころしていく。涙をこらえるようにぎゅっと瞑った目の端に、雫が浮かんだ。 「どうしよう、私は…、どうしてこんなに申し訳ないことが、嬉しく思ってしまうのだろう」 ウィルがふっ、と笑って理御の手を取り頬の手にふれさせる。 「あれ…」 「第2則、作中の人物が仕掛けるトリック以外に、作者が読者を惑わせる記述をすることを禁ず」 両手をつつむ。それが。 ふわりと唇に触れた暖かい手の感触。 背中を優しくなでる大きな手の感触。 意識を手放す瞬間、幻だと思っていた記憶と、現実がぴったり重なった。 「あ…」 視界の、霧が晴れる。 繋がった。 「私は、まぼろしを、見ていたんですね」 「そうだ、俺の手が「無い」と思い込む幻をな」 抱く「両腕」に、そっと力をこめて。 いつだって触れてくれていた。その手を、現実へと立ち直れない自分を、不安を捨てられない自分をごまかしていたのかもしれない。 「そもそも「無い」と思い込んでいたら、真実も虚実も立ち入れない。気に病む事じゃねェ」 「でも、どうやって、治したんですか?」 「気がついたら両腕があった。それだけだ。余計な事を気にしても精々無くなるくらいで、「有る」ままにしておいた方が便利だしな」 両手でウィルその手を握る。手の中にぴくっと、脈がつたわってくる。 「現実に戻ってきたから、「なかったこと」になったのかもしれないですね」 「それとも、「腕のことなんか無くても俺に愛されている」と気づいたからかも知れないな」 理御がきょとんとする。 「…ま、好きなほうに解釈しろィ。で、どうするんだ?」 両手で顔をおさえる理御。 「困りました。言葉が出てこないんです、あのときは、あなたにちゃんと、言えたのに…」 「何を?」 理御はうっ、と息を呑んだ後、観念して口を開いた 「はなさないでほしい、と」 そして困ったように微笑むと、ウィルの目をまっすぐに見た。 「私は、あなたと一緒に、生きたいです…」 「それでいいじゃねェのか。お前は、あたまがかたいなァ」 ぎゅっと、抱きしめられた。 理御も嬉しそうに。胸に頬ずりする。 「ん……ちょ、まってください……っ」 「さっきまでお手手で可愛がってくれてたじゃねェか」 脈打つモノで股間を擦り上げる。 「きゃっ…」 硬くなった芯をきゅっと摘まれ、身体の奥が疼いた。 「可愛い声だな?次期当主さま」 ウィルの身体を気遣って取った体勢ではあったが、今思えば、過激なことこの上ない。 がっちりと腰を押さえられて、身動きもできない。 一度こじ開けられた身体は熱を覚えており、透明な雫が下着を濡らした。 下着をずらされて、ぐりっと欲望を押し付けられた。 「ん……んっ、ん………すこしは黙って、…できないんですか」 尻を抓ろうと手を伸ばした瞬間、ぞくりと下腹が震えた。 「う……ウィル、……わたしは…また…おかしくなって……」 「それでいいんだ」 いいか、と耳元で囁かれる。黙ってうなづくと、硬い熱が身体の内側に滑り込んだ。 「ふぁっ…あ、…んんっ!」 どろどろの内側はウィルを奥まで受け止める。しかし、なれない身体は軋みをあげ、わずかな痛みを伝えた。 体を縮こませて下を向く。 「まだ、きついな…………」 「痛くは…ないです、大丈夫です…!」 腿を掴んで高く上げさせ、つながりを深くさせた。 傷つけないようにゆっくりとした抽送。ゆっくりとその形を伝え、過去の記憶がそれを知ったものだと訴える。 「ん…っ!あ、これ…」 「へぇ、おつむとおなじくこっちも覚えがいいんだな…っ」 あの時は聞こえなかったウィルの声が、余計に興奮をあおる。 「そうは言っても、病み上がりなもんで、こっちもあんまり保たないんだが…なっ」 腕はあるものの、傷だらけの体だ、動くたびにうっすらと汗が浮かぶ。 「あっ、はぁっ、傷、痛いのですか……?」 「痛くはないが…ちょっと、体力が心もとない…ん?」 胸に手を置いて理御がゆっくりと腰を上げる。 控えめな胸がふるふると震えた。 「じっと、していてください…わたし…が、動きますから…っ」 「おい、いいって、そういうのは…」 手首を掴んでいさめる。 「今回は貴方の顔が、見えますからね」 ふふ、と愉しげに笑う振りをする。 「ったく…この馬鹿が…、そこまで、しなくていいんだ、お前、慣れないだろう?」 「そんなこと…」ありません、とは言えなかった。何かを言うたびに墓穴を掘ってしまいそうだった。 ただ、たどたどしく腰を揺らす。 「確かに…男性経験などありませんが」 「女性経験は?」 びくっと、腰の動きがとまる。 「からかわないでください、…それと、貴方に触れるのが嫌なわけではないのです。むしろ…私が感じたように気持ちよくなって欲しいと思っているだけ…です」 「気持ち良かったのか?」 「ん…、は、はい…」 下を向いたまま、耳まで赤くなっている。 大人しくなった理御の腰を抱き寄せて、探り当てた場所を再びなぞりあげた。 「…っ…あ…同じところ…やぁぁ…っ」 「あァ、そのまま、つかまってろ…よっ」 語尾に重ねて下から突き上げる。理御が胸板にしがみついた。 「ふぁ……ウィル…、はなさ……ないで……」 答えの代わりに唇をあわせる。 抽送の音は次第に派手になり、無言の室内が水音で満たされた。 汗を浮かべたウィルが、名残惜しげに唇を離す。 「っは………出るぞ…いいか…」 「はい、……全部受け止めますから…」 びくびくと、下腹部が揺らされる。 「ああっ…あ、あ、あーーーーーーーーーーっ」 精を受け止めて、締め上げて、内へと導く。 「はあ、はあ、は、はぁ…」 全身を弛緩させて、理御がウィルの胸へ倒れこんだ。 「わたしは…幸せです。まぼろしでは、ないのかと、ちょっと心配になるくらい」 「そうか」 頭を撫でる。 「まったく、お前は、心配性だなァ」 理御の尻の肉をぐっと掴みあげた 「なっ……何をするんです…!」 「いつもの仕返しだよ」 ほら、幻じゃないだろ、と言ってウィルは笑った。 頬を膨らませた理御は、目を瞑って猫のように頬ずりした。

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