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「武装神姫のリン」
第15話「無垢なる刃」

====

「ッ、ここは…」
ファムは周囲を見渡す。ゴーストタウンに見えなくも無いがなにか雰囲気が違う。
ふと目を背後に移すとベルゼビュートの顔が真近にあった。ふと"顔"と思われる部分が開く。
その闇の底に見えるのは己と同じ赤い瞳。

「今回も陵辱し甲斐のあるカワユイ娘がきたわぁ~~ もう犯して犯して犯し尽くしちゃうんだからぁ」

いかにも下品な声が聞こえる、しかしこの声は紛れもなく神姫のモノだ。

「中身は同じ悪魔型ですか…しかし礼儀がなってませんね」
「そんな涼しい顔してられるのも今の内なんだからぁ さあ、暴食しなさい、ベルゼビュート!!!」
「貴女なんか、きゃあ」
ファムは大鎌を振りかぶろうとした、しかしベルゼビュートから発せられる霧によって力が抜ける。
「さあ私の作ったワインのお味はいかが? もう動けないでしょ…フフフ」
「そ、そんな…」
「ファム、しっかりしなさい!!」
静菜の声が聞こえた。
まだ自分は負けるわけは行かない。
「まだ、まだやられない!!」
ファムは燐に教わった隼でベルゼビュートから離れた。

「…よくも私の顔に蹴りを入れてくれたわね、怨霊呪弾で本物の恐怖っていうのを教えてあげる」
「負けるわけには行かないんです。 必ず貴女を倒す。」
同じ顔の"赤"と"黒"が対峙する。


====

「速い!!」
「ヒャハハハ、遅い遅い!! ボクに追いつけるとでも思ってるの? バカじゃないw」

エイナは決して速度が遅いというわけではない、むしろSSFメンバーの中で速いほうだ。
しかし敵はソレより速く、鋭い。
緑の風が通り過ぎる度にエイナのアーマーには傷が出来る。もう右腕は防御するたびにひびが入りボロボロだ。
これでは吼莱壱式を撃つことが叶わない。なんとか吼莱壱式は左腕に接続し直したが右腕でしっかり構えない限りフルパワーでの砲撃は出来ない…それ以前に当たる可能性も無いに等しかった。

「…しかたがありません」
エイナは思い切って右腕を切り離す。強制排除なので少し痛みが走った。
そしてソレを足蹴にする。これはただ近くにあると足を取られてジャマになるからだったのだが…

「ギャ!!」
超高速で向かってくる敵はほぼ直線的な起動を描いて突進してくる。
そのため足蹴にした腕に"正面衝突"したらしい。

「あら、予想外の事態には弱いの? ちゃんと頭使ってる?」
エイナの挑発に敵のロボ、ロードビヤーキーとなったハウリンは思い切り乗ってきた。

「ハ、ハハハハ…もう殺す!!!! スクリーミングバードでバラバラにしてやるよ!!」
「やれるものなら!!」

ロードビヤーキーは1度天高く舞い上がる。たぶん先ほどよりもさらに速い、最高速で突っ込んでくるだろう。

「一、私がいなくなっても泣かない自身はありますか?」
エイナは一に聞く。

「無い……だから全力で決めて来い。」
「わかりました。 1撃で決めます。」

エイナは覚悟を決めて吼莱壱式を構え、出力を120%に設定した。
そして緑色の風が迫るのを待つ。

「死ね、ムシケラぁ!!!!!!!!」
「……死なない。私はぁ!!!」

死を運ぶ緑色の風にエイナは物怖じせず向かっていく。
生きるために、主人の下へ帰るために。

====

「ハ!!」
「セイ!!」
「シッ!!」
「ク!!」

闇に光が差す。
それは2つの刃が交わったために飛び散る火花。 1呼吸の内に5回。
お互いの顔はほとんど見えない。しかし刃の軌道だけは見える。
互いに1対1が得意、そのために一歩も引けない。
もう切り結んだのは何回だろうか?
キャルはふと考える。しかし余裕は無い。
1度でもミスを犯せば次の瞬間に自分の首が飛んでいるだろう。
敵は2刀流。なのでこちらも両手にナイフを持って迎撃する。
取り回しではこちらが上、しかし単純な技量だけなら向こうの勝ちだろう。
今は何とか防御に徹しているため考え事をする暇があるだけ、どう崩す…
敵がふと刃を納めた。

「やるな、貴様」
「貴女こそ、よくやるわね。」
「私は修羅。外道の道に堕ち侍を捨てたのだ。だがお前はミスからの力だけでよくぞそこまで。 私の最高の技でお相手しよう」
「そう、次で終わりなのね。 良かった」
「??」
「もう限界なのよね、コレが…あのまま切り結んでたら今頃私死んでたわ」
見るとナイフは刃の形をしていなかった。
キャルはそれを捨てて1振のハグタンド・アーミーブレードを取り出した。

「もうこれしかないわ、これを飛ばせば貴女の勝ちね。まあ負ける気がしないけど。」
「ふん、いざ、尋常に勝負!!」
2つの光が交差する。

====

「さあ、私を楽しませて!!」
「…しつこいのキライ」

サイクラノーシュが空に浮かんだまま触手を飛ばして地を穿つ。
その地点は数秒前にメイが存在したであろう座標。しかしメイは其処にいない。
「またジャマー? いい加減にそういうお遊びは終わりにしたらどう? 」
サイクラノーシュはいとも簡単にメイの居場所を突き止める。
そしてメイを触手で捉えた。

「つ・か・ま・え・た」
「……」
「なんか反応しなさいよ!!」
しかしメイは一切反応しない。

「ふうん、もう諦めた? じゃあ終わりにしてあげるわ」
そうしてメイの身体を締め上げ、捻じりきろうとした。
サイクラノーシュは体組織が千切れていく感覚を心地よく感じた。しかし…次の瞬間メイの体が爆発した。
「…引っかかった。」
サイクラノーシュが混乱しているうちにメイは背後へと回りジャンプ。
構えた研爪で装甲を切り裂く。
「 痛かったそうよ、この子が…で何倍返しがいい?」
そうして彼女、サイクラノーシュにどうかしているマオチャオは顔をゆがめ、己の手に出現した「人面姐」の頭をなでる様にさすりながら睨んでくる。

「知らない。お釣も要らない。」
「フン、じゃあ100倍返しね!!!」
2体の命を賭けた化かし合いは続く…

====

セリナはクラーケンと化したアーンヴァルと戦っている。
すでの手持ちの大型火器は大方弾切れをおこし、頼れるのはアルヴォLP4ハンドガン2丁とあと少しで弾の切れるシュラム・リボルビンググレネードランチャーのみ。
何とか狙いを本体から縦横無尽に伸縮して攻撃してくるアームに絞り、結果発射した最後の1発で右腕を破壊することに成功した。
1度動きを止めたクラーケンだったが、次第に暴れだすようになった。

「あ、あだしの腕を……許さないい!!」

残った左腕を天に掲げて集中する。
クラーケンの頭上には巨大な氷塊が現れる。

「つぶれろぉぉ!!」
そしてその氷塊を投げつけて来た。

「あんなの避けられない、じゃあ…」
セリナはSRGRを氷塊に投げつける、そしてハンドガンの弾を当て残り少ないグレネードの弾に誘爆させた。
そうして氷塊の飛ぶ勢いを弱め,後はひたすらに走って逃げる。
なんとかつぶされないで済み、氷塊の破片や崩れた壁などがバリケードの役目を果たして敵は自分の居場所を特定できていないらしく、まだ暴れまわっている。
しかし自分の方も、もう動けない。
砕けた氷塊の破片が両足に見事に突き刺さっている。
次におなじ攻撃を受ければひとたまりも無いだろう。

「でも、諦めない。」
ふと両脚部につけたホルダーが目に入る。
そういえばマスターから「お守り」をもらってたと気が付く。
それは2丁拳銃。1丁は赤と黒のコントラストが目立つオートマチック、もう1丁は銀に輝くリボルバーだ。

「そっか、コレがあったんだ……コレならもしかしたら。」
2丁拳銃を構えてみる。多少ぎこちないが問題は無いだろう。
あるとすればコレを撃つチャンスが巡ってくるまで足が持つか、それだけだった。
「樹、私がんばるから。見ててね」
希望を胸にセリナはバリケードから飛び出していく、先に待つのは生か死か…だれにも分からない。

====
燐とティアは互いにFT(フェイト・テスタロッサ)フォーム、WS(ヴォルケンリッターの将、シグナム)フォームで必死にネームレス・ワンおよびクトゥルーを攻撃する。
それでも小技では瞬時に修復されるため、1度に大ダメージを与える作戦に変更した。
しかしこれも2人だけでは完全消滅は望めない、それでも引くわけには行かなかった。

「お姉さま、アレを使ってよろしいかしら?」
「ええ、もちろん。手加減ナシでお願い」
「分かりましたわ、ボーゲンフォーム!!」
先ほどまで刀剣の形をしていたレヴァンティンはさやを接続し、変形させることで弓形態になり光の弦と矢が出現する。
ティアはそれを構え、狙いをつける。
敵は高速で飛行する燐を追っている。燐からの合図を待たなければ彼女を巻き添えにしてしまう危険があった。

「ティア、今よ!!」
「翔けろ、隼!! ですわ!!!!」
ティアが放った矢は音速を超える速度で文字通り空を翔る。
そしてネームレス・ワンの頭部を貫き、そのままクトゥルーにも風穴を開けた。

「お姉さま、今ですわ!!」
「ええ、 雷光、一閃。」
燐を中心に"魔法陣"が展開し、どこからとも無く雲が発生して燐の周りに雷を落とす。
そうして燐の持つバルディッシュには先ほどの斬撃の寸前よりもさらに高密度のエネルギーが溜め込まれた。

「プラズマザンバー ブレイカー!!!!!」
前方に移動した"魔法陣"にバルディッシュを叩きつける。
ソレと同時に"魔法陣"から膨大な熱量が発生、強烈な熱量の奔流と化す。
その奔流はネームレス・ワンを完全に包み込み、クトゥルーさえも飲み込んだ。
元々最高の出力を持つ砲撃ではあったが、プラグインによる威力増加は相当なものだった。
そして力の奔流が収まった頃にはそこにはまだ存在しているはずだったネームレス・ワンさらにはクトゥルーさえも存在していなかった。

「嘘…終った? 」
「そんな、コレで終わりですの?」
あっけに取られた燐、ティアは何度も目を凝らすが其処には何もない。

「はははははは…こいつは驚いた、予想以上だよ!!」
どこからとも無く拍手が聞こえる。

「誰?誰なの!!」
「姿を現しなさい!!」
「そんなに急かさないでよ、ちゃんと姿は見せるからさぁ」

そうして姿を現したのは、通常の神姫では無かった。
目を見張るほど魅惑的なボディーラインを誇り、艶の中に闇をはらんだような美貌。
この世のモノとは思えない美しさといえば良いのだろうか?元のモデルも不明。しいて言えば発売中の全ての神姫の特徴を一つにまとめたような顔。
それが燐、ティアの目の前に降り立った。

「まさかまさか、たった2人にこいつがやられるとは思わなかったよ。
ネームレス・ワンは術者無しだから十八番の"デリート"を使えないとはいえ、最後の2撃の威力は予想外だねぇ」
「その前に名を名乗りなさい!!」
「そうね、貴女は??」

その神姫ともいえない美貌を持つ"何か"は少し考えるような顔つきをした後、これ以上内という笑顔で

「ボクの名はナイア。このべーオウルフを束ねる影の支配者。もう分かってると思うけどボクは人間じゃない…神姫だからねぇ、この"世界"を作ったのもボクなんだ。
ここではボクの思うがままさ、だから今回はもう少しレベルを上げるね。」

そうしてナイアが手を天に掲げる。
次の瞬間、闇がこの空間を支配した…と思ったがすぐに世界は先ほどと同じ姿で2人の瞳に映っている。
しかし1つだけ違っていた。2人の目の前に存在するのは漆黒の鬼戒神。

「さあ、これが最後のボス。 大導師マスターテリオンが操るは、デモンベイン最後の敵でもある最強の鬼械神、その名もリベルレギス。
コレに勝てれば正真正銘君たちの勝ちだよ。 さあ、はじめよう。終焉の鐘が鳴る前に。」

俺は"ナイア"が出てくるとは思いもよらなかったが、こいつが最後のボスというのはあながち間違いではないだろう、と考えた。
なぜならナイア…ナイアルラトホテップは千の貌を持つ邪神。
彼女をモチーフに作られたならあの神姫のナイアもこのべーオウルフという"世界"で自分が仮に死んでもほかにも"自分"は無数に存在すると考えて行動しているはずだからだ。
俺は燐とティアに告げる。

「あいつの言ってることは間違いない。存分に叩き潰してやれ燐、ティア。」
「ハイ、マスター」
「分かってますわ」
「じゃあ最終兵器の登場と行こうか、まさかここまでお誂え向けなシチュエーションだとは夢にも思わなかった。」

俺は1度インカムをはずし村上静菜に聞く。

「じゃあ、使わせてもらいますね。」
「ええ、現時点であれに対抗できるのはそれしか無いのでしょう?」
「はい、コイツじゃないと勝てない。いやこいつだからこそ勝てるんです。」
「そうだったわね、最強最弱の鬼械神の力。見せてもらうわ。」
「ファムを含めた5人も、御武運を」
「ええ、そっちも。」
そうして俺はキーボードにパスワードを打ち込む。
パスワードは…「DEMONBANE」

「虚数展開カタパルト作動 燐、ティア。祝詞を。」
そうしてフォームを解いた燐、ティアがあの聖なる祝詞を紡ぐ。
「憎悪の空より来たりて」
「正しき怒りを胸に」
ソレと同時にコンテナが形状を変え、大きな五亡星を模した"魔法陣"となった。

「「我等は魔を断つ剣を執る! 汝、無垢なる刃。デモンベイン!!」」

2人が最後の祝詞を紡ぎ終わると共に五亡星を中心に神殺しの刃が出現した。
燐とティアはデモンベインのコックピットに着く。
燐は実際に機体の制御を行う九郎のポジションだ。
ティアはアル・アジフのポジションで呪術兵装の管制を行う。

「燐、ティア。レムリアインパクトはいつでも撃てる。蹴散らしてやれ!!」
「ハイ、マスター!!!」
「これで終わりにしてあげますわ!!!」

そうして最後の決戦の幕が上がる。






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