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    <title>栄光への軌跡　補完所</title>
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    <description>栄光への軌跡　補完所</description>

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    <title>その他</title>
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    <description>
      [[登場人物&gt;登場人物（ネタバレ有）]]&gt;[[その他&gt;陸鶯大学附属陸鶯学園高等部]]                                              
＊＊その他
----
・戎遍　（えびす　あまね）
成美高校から遠く離れた中部地方の福士高校野球部に所属する女性捕手。
夏合宿にやってきた成美野球部の面々と同じ宿に泊まった縁からか知り合い、親しくなる。
その際同じポジションでもある秋人と練習を共にし、彼に惹かれてゆく。
右投げ左打ちの捕手、打撃能力は並で、足は遅い。
だが捕球技術は成美一の守備職人、宇城と肩を並べるほど。
第二部より登場。
----    </description>
    <dc:date>2009-10-24T11:48:06+09:00</dc:date>
  </item>
    <item rdf:about="http://www19.atwiki.jp/narumi/pages/2.html">
    <title>メニュー</title>
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    <description>
      **メニュー
-[[トップページ]]
#search()

＊＊栄光への軌跡
・[[本編]]
・[[短編・ミニストーリー]]
・[[登場人物（ネタバレ有）]]
・・[[成美高校&gt;成美高校]]
・・[[一葉高校]]
・・城章学園
・・[[その他]]
・[[ただの妄想]]
----
＊＊その他
・[[感想等々]]

**リンク
-[[自己満足のページ&gt;http://noradara.blog.shinobi.jp/]]    </description>
    <dc:date>2009-10-24T11:47:19+09:00</dc:date>
  </item>
    <item rdf:about="http://www19.atwiki.jp/narumi/pages/13.html">
    <title>成美高校</title>
    <link>http://www19.atwiki.jp/narumi/pages/13.html</link>
    <description>
      [[登場人物&gt;登場人物（ネタバレ有）]]&gt;成美高校
**成美高校野球部
----
・一条叶　（いちじょう　かなえ）
物語の主人公。
無名の弱小校から甲子園に出場することを夢見て、元女子校である成美高校に入学した。
入学式当日に城崎秋人と出会い、無理矢理彼を引っ張って野球部を創設する。
テンションが高くあまり落ち着きがない。だが、時折見せる冷たい表情は同じ野球部員を震え上がらせることも。
ポジションは投手で、左のスリークォーター。左投左打。
ワインドアップモーションが特徴で、その球威はそこらの野球部員とは比べものにならない。
扱える変化球はカットボール、フォーク、シュートの三つだが、緩い変化球がないために投球が単調になりがち。
加えて制球力も悪く、ランナーをスコアリングポジションに背負うと本来の投球が出来なくなる癖もある。
打撃能力は貧弱。だが、その肩を活かし物語中盤以降は右翼手として先発出場することも。
----
・城崎秋人　（きのさき　あきひと）
物語のもう一人の主人公。どちらかというと彼が真の主人公かもしれない。
入学式当日に叶と出会い、無理矢理参加させられる形で野球部を創設。気付けば副部長の座に座っていた。
冷めた性格で、基本スタンスは受け身。その観察眼はなかなかのもので、彼が野球部の真の部長と言っても過言ではない。
ポジションは捕手で、叶、加賀美、物語中盤以降からは駒田ともバッテリーを組むようになる。
曲者ばかりの投手陣が力を発揮できるのは、彼の力に寄るところが大きい。
捕球技術は宇城には劣るが野球部の中でもトップクラスで、地肩もなかなかのもの。さらに50mを6.4秒で駆け抜ける足も持っている。
が、打撃はあまり得意でないらしく、内野の後ろ、外野の前に落ちるラッキーなヒットが多い。
右投右打。
----
・姫島桜　（ひめじま　さくら）
名前だけ聞けば可憐な女性だが、その実金髪ツンツン頭のヤンキー。
野球部を設立した叶に一打席勝負を挑まれ、敗北。仕方なしに野球部に入部する。
双子の姉に姫島梓がいるが、彼女が唯一の肉親である彼は彼女に危害を加えようとするものには容赦をしない。
彼が不良ぶっているのも悪い虫を梓に近づけさせないためで、根は善良、なおかつ成績優秀な少年である。
女っぽい名前に若干のコンプレックスを持っており、名前で呼ばれるのを嫌う。
野球部内でのあだ名は姉・梓の呼び方より「さっちゃん」
高い身長と左利きであることを活かすため、秋人により一塁手に任命される。
野球には二年ほどのブランクがあるため、勘を取り戻すのに苦労する。
守備、送球に若干の不安は残るものの、爆発力・長打力はあり、成美野球部において貴重な長距離打者である。
左投左打。
----
・宇城恵　（うしろ　めぐみ）
黒髪ロングが映える美少女――ではなく、れっきとした男。
何があったのか女装しており、制服も女子用のものである。
屋上でのんびりと昼食を取っていた秋人の前に現れ、なし崩し的に野球部に入部する。
明るい性格で、何故か秋人に懐いている。当の秋人も彼女――ではなく彼には丁寧に接するため、秋人に恋慕の情を抱く者たちからはライバル認定される。
ポジションは二塁手。捕球技術は成美高校随一であり、『守備能力だけなら』全国区の選手と同じレベル。
だがそういう選手の宿命なのか打撃はからっきしで、なおかつ足も言うほど早くない。
穏和な性格であるが、彼を怒らせた場合には突如乱暴な言葉遣いになり、目つきも悪くなる。
その際（通称、覚醒宇城）怒りに任せたバッティングをするため、普段よりも三振が多くなるが、その分長打力が増す。
右投右打。
----
・加賀美和輝　（かがみ　かずき）
関西の名門校から突如転入してきた野球センスの固まり。
自信満々の言動を裏付けする実力を持っており、おそらく成美野球部で一番頼りになる男。
二学期に転入してくるが、その時点で既に夏の甲子園に一年生ながら出場している。
「無名校から甲子園出場――そういう展開が俺は好きなんや」とは彼の談。
本来は右投右打の投手だが既に叶がエースとなっていたため背番号１を譲り、自身は穴の開いていた三塁手となる。
先発、又は叶のリリーフとして登板することもある。
扱える変化球はスライダー、カーブ、シュート、シンカー、チェンジアップの五種類。
通称『七色の変化球』で、制球力、変化球共に一級品だが如何せん球威がない。
自信に溢れた言動を繰り返すが、甲子園出場におごり高ぶらない姿勢には成美野球部全員から好感を持たれている。
----
・神ヶ谷優介　（かみがや　ゆうすけ）
実家が神ヶ谷コンツェルンという、日本でも有数の巨大企業であるため、幼い頃から何一つ不自由ない生活を送ってきた。それ故に他の野球部員を見下したような態度を取るナルシスト。
あまりにも協調性がないために練習試合開始前に桜と殴り合いの喧嘩にまで発展。
そして練習試合が始まり、成美野球部が敗北を喫したところで自らの間違いを知り桜と和解、自分がどうするべきかに気付く。
ナルシスト故なのかどうなのか、身体能力は非常に高く、野球部に入部したのもそれまでプレイしていたテニスに飽きてきたところだったからである。
ポジションは機敏さが要求される遊撃手。頭も切れ、身体能力も非常に高いことから秋人に強制的に任命された。
走・攻・守と三拍子揃った選手。右投左打。
----
・村上武志　（むらかみ　たけし）
入学して二日で桜のパシリとなり、野球部に入部した桜に連れてこられる形で入部。
野球初心者であるが、自分にも何かを任されることの喜びを知り精力的に練習に取り組む。
気弱ではあるが真面目で実直、芯が通った男で、秋人の過酷な練習に唯一音を上げずに着いてきた。
ポジションは左翼手。よく球が飛んでくる位置であるが、練習により劇的なまでに成長、フライはおろか、フェンスぎりぎりの球を三角跳びでキャッチすることまで出来るようになる。
右投右打で、物語序盤では全部ダメダメ。
----
・東屋龍太郎　（あずまやりゅうたろう）
超絶無口、何を考えているか不明の謎多き少年。
駒田と共に幼稚園に突入しようとしたり、恵と渡り合ったりと、その行動原理はよくわからない。
やることはしっかりこなすのでチームメイトからの信頼は篤い。
ポジションは中堅手。50mが5.9秒の俊足を活かし、外野の広範囲をカバーする。
捕球技術も平均的であり、守備能力はそれなりに高いが非力。打撃はからっきしである。
右投げのスイッチヒッター。
----
・駒田俊明　（こまだ　としあき）
ロリコン。
幼女を何よりも愛するバカ。
だが入学試験の成績は学年一である。つまり変態と秀才は紙一重。
ポジションは右投左打の右翼手。物語中盤以降から投手もこなすようになる。
肩がやけに強く、それ以外は平均的、もしくは平均以下であるが、ギャラリーに幼女がおり、なおかつその幼女の声援を受けることで覚醒する。
覚醒した際の駒田はプロ野球選手に勝るとも劣らないほどの力を発揮する。
----
・成美高校基本オーダー
|１番|中|東屋|右投両打|
|２番|遊|神ヶ谷|右投左打|
|３番|右|駒田|右投左打|
|４番|三|加賀美|右投右打|
|５番|一|姫島|左投左打|
|６番|捕|城崎|右投右打|
|７番|左|村上|右投右打|
|８番|二|宇城|右投右打|
|９番|投|一条|左投左打|

長打を期待できるのが４番加賀美と５番姫島だけであり、その他は皆貧弱。
覚醒さえすれば駒田や宇城も爆発を期待できるが確率は低い。
----
＊マネージャー
----
・桂木吉野　（かつらぎ　よしの）
秋人が居候している桂木家の長女。
秋人とは幼馴染で、彼に想いを寄せているが鈍感な秋人は気付かない。
それなりに過激なことを口走る時もある。
中学時代は秋人が主将、吉野がマネージャーとして野球部を関東大会決勝まで引っ張った。
野球センスはある。
----
・姫島梓　（ひめじま　あずさ）
桜の双子の姉。
病弱で大人しい『深窓の姫君』タイプ。
だが言うことははっきり言う。駒田が苦手。
弟の桜が心配で野球部のマネージャーを務めることに。
----
・梅園紫苑　（うめぞの　しおん）
正確にはマネージャーではない。
成美高校の理事長の孫娘。
幼い頃出会った秋人に一途に恋しており、その想いを暴走させ、文化祭時に野球部存続を賭けたエキシビションマッチへと発展させてしまう。
基本無口だが、一度口を開けば飛び出すのは罵詈雑言。
----
・クラス編成
|Ａ組|秋人・叶・吉野|
|Ｂ組|駒田・東屋|
|Ｃ組|宇城・紫苑|
|Ｄ組|桜・村上|
|Ｅ組|神ヶ谷・梓・後に加賀美|
----
＊＊その他成美高校関係者
----
・館山葉月　（たてやま　はづき）
巨乳・眼鏡・白衣と三拍子揃ったオトナのフェロモン漂う妙齢の女性教師。教えるのは物理。
秋人の従姉妹で、同時に彼が最も苦手とする人物。
野球部の顧問に就任。とはいえ野球のことはあまり知らない。
----
・如月ゆか　（きさらぎ　ゆか）
時折校内で見かけられる小学生らしき少女。
その正体は知る人ぞ知る成美高校の校長である。ロリっ校長。
無邪気で甘えん坊で子供っぽい。実は本当に小学生ではないのかという噂もちらほらと。
----
・如月ユイ　（きさらぎ　ゆい）
クールで理知的な、成美高校の教頭。
その正体は如月ゆかの妹である。
少々抜けている姉のことを全力でサポートしつつ、野球部のことも密かに応援している。
----    </description>
    <dc:date>2009-10-23T22:52:56+09:00</dc:date>
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    <item rdf:about="http://www19.atwiki.jp/narumi/pages/31.html">
    <title>城章学園</title>
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    <description>
      [[登場人物]]&gt;城章学園
*城章学園野球部
----
・烏丸栄一（からすま　えいいち）
----
・新村光司（にいむら　こうじ）
秋人の中学時代の親友。バッテリーを組んでいた仲でもある。
名門城章学園に推薦で入学。一年生では二人だけ、烏丸と共に一軍に控える（烏丸はエース）
烏丸の圧倒的な実力の前に、彼はバランスの高いその野手能力を買われショートへコンバートする。
一年生ながらも公式戦で代打起用されるなど、将来は烏丸と共に城章の柱になることを嘱望されているようだ。
秋の文化祭、理事長の孫である梅園紫苑がふっかけた成美高校対一葉高校の招待試合に助っ人として参加する。
----    </description>
    <dc:date>2009-10-23T22:35:07+09:00</dc:date>
  </item>
    <item rdf:about="http://www19.atwiki.jp/narumi/pages/14.html">
    <title>登場人物（ネタバレ有）</title>
    <link>http://www19.atwiki.jp/narumi/pages/14.html</link>
    <description>
      ＊＊登場人物

|[[成美高校]]|[[一葉高校]]|
|[[城章学園]]|[[その他]]|    </description>
    <dc:date>2009-10-23T22:32:27+09:00</dc:date>
  </item>
    <item rdf:about="http://www19.atwiki.jp/narumi/pages/30.html">
    <title>第五話</title>
    <link>http://www19.atwiki.jp/narumi/pages/30.html</link>
    <description>
      [[本編]]&gt;[[第一章]]&gt;第五話
*第五話
----
　大きな鉄製の扉を開けると、そこにはどこまでも続く青空が広がっている。
　少し冷たい、だが緩やかに流れる風が、自分の体をするりと通り抜けてゆく。
　瞳を閉じ、深呼吸。すっきりとした空気を胸一杯に吸い込み、城崎秋人は屋上へと足を踏み入れた。
　入学初日、一条叶と共にやってきた校舎の屋上。ベンチやパラソルテーブルが並ぶ、テラスカフェと見間違うかのようなこの場所で昼食を摂るのは、秋人の日課になっていた。叶と野球部を立ち上げて二週間が経過している。部員は野球勝負の結果入部した姫島桜と、その桜が連れてきた彼のパシリ、村上武志の計四人。野球が出来る人数まではまだ足りない。
　昼食を終えたら勧誘に走ってみようか。
　パラソルテーブルの一つに座った秋人は一人頷き、弁当箱の蓋を開けた。
「……」
　野菜炒めと、おにぎりが二つ。おまけにごま和え。シンプルだがそれが良い。
　まだ勉強中ではあるものの、今日の弁当は秋人の手作りであった。
　桂木家に居候の身である秋人は、せめて自分にも何か出来ないかと考え、自分だけでなく吉野や、その妹飛鳥の分の弁当を作ることにしている。
　とはいえ、「私だってアキくんにお料理作ってあげるんだもん！」と言って聞かない吉野と、一日交替のローテーションであるが。
　少しでも桂木家の役に立てているのなら良いのだが。そう考え、秋人は小さく頂きますと呟いた。
「……」
　おにぎりの中には鮭をつめている。口いっぱいに広がる塩気が美味しかった。
　静かに、だが夢中で頬張り、秋人はおにぎりを一つ消費する。そしてその手を止めた。
「結構、空しいものがあるな」
　広い屋上に、男一人。流れ、空へ向かう冷たい風は、秋人を哀れんでいるように思えた。
　繰り返すが、成美高校は元女子校である。そして同時に地元のお嬢様学校でもある。
　言葉が悪いが、少し勇気を出し、「一緒にランチでもどうでしょう」などと囁いてみれば、男性と触れあう機会の少ない女生徒達はまず簡単に釣れると言っても良い。
　かと言って、秋人は何も女子とベタベタ触れあいたいわけでもない。
「……高校生らしく、友人と昼食という選択肢はないのか……」
　地味に、高校生、そして青春というものに憧れていた秋人なのであった。
「友達とお昼が食べたいの？」
　突如横合いからかかった声に、秋人は一瞬体を強ばらせた。その姿を見てか、けらけらと楽しそうに笑う人影。
　少しむっとした顔の秋人は、すぐ隣の椅子にいつのまにか女子生徒が座っていることを知った。
　長いストレートの黒髪を、腰辺りまで伸ばしているその生徒は、間違いなく成美の制服を着ていた。薄緑色のブレザーの胸元につけられている名札に引かれたラインは赤。秋人と同じ一年生だ。
　背は低めで、薄い体型をしている。また、彼女はそれに見合うように、幼い顔立ちであった。だが長い睫毛や瑞々しい唇が、幼さとはギャップの色気を醸し出している。言うなれば、大人の階段を上り始めている。
「……あんたは？」
「僕は宇城恵。君は……うん、言わなくても知ってる。城崎秋人君、でしょ」
　自己紹介を始めようとした秋人を目で止め、恵はにこっと笑った。その純粋な笑顔に、秋人はどうにもくらくらする。
　思えば、あまり秋人は女性の笑顔に慣れていなかった。吉野の笑顔は小さい頃からこれでもかと言うほど見ているので目が慣れた。ちなみに妹の飛鳥は、中学に上がってから秋人に少し冷たくなっている。
「友達が欲しいんでしょ？　だったら、なろうよ。友達に」
「あ、ああ……」
　差し出された右手。透き通るようなその手に触れて良いのか、秋人は少し逡巡した。
　だが恵は無理矢理に秋人の右手を取り、静かに握りしめる。その柔らかい感触と、手から伝わる恵の熱に、秋人の頭は熱暴走を起こしかけていた。何か言わなくちゃいけないとわかっているのに、何も言えない。
「ふふっ……可愛いんだね、秋人」
「かわっ……」
「そんなところが可愛いんだよ」
　この人生で一度も言われたことのない評価に少し戸惑う。というか、可愛いという評価は自分よりもむしろ目の前で無邪気に笑うこの女生徒の方が似合うだろうと秋人は思う。
　出会って五分と経っていないのに、秋人は既に恵のペースに巻き込まれていた。
「僕さ、見てたんだ。君たちが野球してるの」
「知ってる、のか」
「うん」
　知らない内に、野球部の活動を恵に見られていたという。
　何とも言えないが、恥ずかしさが込み上げてくるようだ。
「それでね、言いたかったんだけど……」
「なんだ？」
「……僕も野球部に入れてくれないかな」
「ああ、構わない。…………ん？」
　恥ずかしそうに俯いた恵の口から飛び出した言葉に秋人は頷き、そしてその意味を理解するのに数秒を要した。
　恵は、野球部に、入りたい。らしい。
「……野球部に入ってくれるのか？」
「うん。僕、野球はしたことないけど……、部員が足りないんでしょ？　秋人の役に立ちたいし」
「宇城……」
　ありがとうと呟こうとしたところで、秋人は恵の背後、屋上の扉が開くのを確認した。顔を覗かせるのは秋人の幼馴染み、桂木吉野。吉野は辺りを見回し、秋人を見つけてその顔に喜色を湛えたが――。
「アキくん？」
　秋人と手を繋ぐ恵の姿を発見し、すぐに冷たい笑みを浮かべた。
　秋人はその視線にどうにも、不倫現場を取り押さえられた夫のような気持ちを抱いてしまう。
「吉野、これは違うぞ」
　自分で言っていて、何が違うのかがわからない。自分は何を弁明しようとしているんだ。秋人は少し情けなくなった。
「その子は？」
「僕、宇城恵。君も、秋人の友達？」
「ええ……、同棲してる仲です」
　恵の自己紹介に、どうも挑戦的な目線で、誤解を招くような発言をしてみせる吉野。恵と吉野、二人の視線がぶつかり合い、同時に火花が散っているように秋人には思われた。今すぐにでも逃げ出したい気分である。
「同棲……」
「ええ、そうですよ」
　内心、吉野は勝ったと飛び跳ねた。何に勝ったのかは、吉野だけの秘密である。
　いい加減気づいてくれても良いじゃないかと思うのだが。
「でも、僕ももっと秋人と深い仲になるもん」
「むっ」
「おい何の話を……」
　なんだか話が妙な展開に進んでいると気づいた秋人が、二人に問いかける。
「アキくんは黙ってて。これは女と女の戦いだよ」
「そう――女と女……じゃないよ」
「へっ？」
　真剣な眼差しで、その瞳に闘志の炎を燃え上がらせた吉野の言葉に、恵が小さく反論した。思わず吉野は間抜けな声を出す。
　そんな反応に満足したのか、少し嬉しそうな声で恵は言葉を続けた。
「僕、男だし」
「ええええええっ！？」
「……なに……」
　吉野が叫び、秋人が呆然とした顔で呟いた。
　宇城恵は、黒髪ロングストレートが映えるこの美少女は、まさかの男子生徒であったのだ。
　そのショック、いかばかりか……。
「って待て、宇城、お前が男子だとして、その制服は何だ」
「え、これ？」
　ひら、と恵がスカートの裾を掴んだ。成美高校では、男子生徒のスカート着用を認めてはいない。当然の話とも言えるが。
「これね、校長が着てても良いって」
「あのロリッ校長……」
　えへへー、とだらしなく笑う幼い校長の姿を脳裏に浮かべ、秋人は嘆息した。楽しそうだからおっけーおっけーとでも言っていそうだ。

◆

「くしゅんっ」
「お姉様、鼻水が……」
「うぇへへ……、ゆか人気者だからぁ……みんなが噂を……くしゅんっ」
「今拭きますから、静かにしていて下さいね……」
「くちゅんっ」

◆

「で、秋人」
「なんだ……」
　一歩引き、秋人が答える。恵が男である以上、彼は女装趣味のある男子生徒と言うことであり、そしてそれを少しだけ可愛いと感じてしまった自分自身が少し悲しかった。
「野球部、入れてくれるでしょ？」
「あ、ああ……。それは構わない」
「後。引かれると僕も少し悲しいな」
「う……、すまん」
　しゅんと落ち込んだ顔を見せる恵に、秋人の心に罪悪感が芽生えた。
「友達でいてくれるよね？」
「ああ……、もちろんだ」
「嬉しいっ」
　そう言って、恵は秋人に抱きついた。これはまさに、男だから出来る芸当とも言える。女子がいきなり男子に抱きつく事なんて出来やしない。秋人に見えないところ、吉野に見えるような位置で、恵が悪戯っぽく笑った。
「アキくんッ！」
「あ、な、なんだ……？」
「私も、野球部に入るよ！　マネージャーで！」
「ほ、本当か？　吉野お前……、ソフト部に……」
「負けてられないからね！」
　鼻息荒く語る吉野に、秋人は若干たじろぎつつも、素直に彼女の参入を喜んだ。
　かくして、野球部は着実にその人数を増やしつつあるのであった……。

◆

「というわけで、宇城恵と……、マネージャー希望の桂木吉野だ」
「よろしく～」
「よろしくね、みんな」
　放課後、葉月以外が集まった部室で、秋人が二人を紹介する。思いがけないスピードでの新入部員参加に、叶が嬉しそうに飛び跳ねた。
「よっしゃっ！　よろしくな宇城！　マネジも！」
「ふーん……。なかなか良い感じじゃねえか」
「え、えっと……そ、そうですね」
「お前、とろいというかなんというか」
「すみませ……ん」
　この二人も、たかだか三日ほどの練習では変わらないようだ。
　ちなみに練習とは、グラウンドで延々キャッチボールを続けるというものであった。
　四人という人数ではノックなぞ満足に出来やしないし、球拾いやグラウンド整備なども人数の都合上難しい。しかしその点キャッチボールは相手さえいれば簡単に行える。
　簡単とはいえ、数年のブランクを抱えた桜と初心者である村上がグラブの扱いに慣れるためにも、叶のコントロール向上、秋人の更なるキャッチング技術向上のためにも、決して馬鹿には出来ない重要な練習である。
　このおかげで、村上はキャッチボールだけなら多少は出来るようになってきた。あくまでキャッチボールだけなら、である。
　彼のポジションはレフトに決定したのだが、外野を守る以上はフライの捕球技術をどうにかして磨かねばならない。そう、課題はまだまだ多いのだ。
「宇城に野球経験はない……んだな？」
「うん。でも、球を捕るのは大の得意だよ」
「ほぅ、大した自信じゃねえかよ」
　桜がニヤリと笑った。ちなみに彼は左利きとその長身を生かし、一塁を守ることになっている。
「キャプテン、ちょいと実力を見てみるのも悪くねえと思うぜ」
「ああ。……だがキャプテンは俺じゃなくて一条だ」
「ええっ！？　アキくんがキャプテンじゃないの！？」
「俺がキャプテンだぞマネジ！　あと桜、ふざけんな！」
「名前で呼ぶんじゃねえっつってんだよ！」
　叶が喚き、桜もそれに便乗する。この二人は基本相容れないのかも知れない。嘆息し、秋人は二人を宥めにかかった。

◆

「……宇城、とりあえずノックを」
「オッケー任せてっ」
　秋人たちは、恵の実力を測るためにグラウンドへ出ていた。秋人が簡易バッターボックスに、その正面、１５メートルほど先に恵が位置する。ファーストには桜がついていた。
　秋人の言葉に、制服姿で左手にグローブを嵌めた恵が、片目を閉じウインクする。すぐ側にいる吉野の眉が吊り上がったのは見ないことにして、秋人は小さく頷いた。
「まずは、正面にゴロ」
　秋人は軽くバットを振り抜いた。平凡なゴロが、恵の足下へと転がる。
「よゆーよゆーってね」
　腰を落とし、軽くキャッチ。何の問題もなく恵は桜へボールを送った。
　守備に自信があるというのだ、これくらいは当然だろう。
「次。正面にゴロ。少し強くだ」
　先ほどより三割り増し程度の力でバットを振り抜く。鋭いゴロが恵の足下へ迫るが、これも難なく捕球。側で見ていた村上が感嘆のため息を漏らした。
　これぐらいは出来るようになってもらわなくちゃ困るんだけどな、と秋人は小さく呟いた。
　ノックはまだまだ続く。


◆


「それじゃ、そろそろ終わりにするか」
「はぁっ……、うんっ……！」
　かれこれ三十分ほど、秋人はノックを続けている。ゴロ、フライ、ライナー、バウンドボール、様々なコースに打球を送ったが、恵はそのどれもを軽快に捌いていた。なるほど、守備に関しては文句なしだ。
　だが、ここまでやられると逆に鼻を明かしてみたくなるのが人の性。秋人は恵の手足の長さから見てギリギリのコースに鋭いライナーを送って、このノックの締めにすることを決めた。
「……次は少し厳しいぞ」
「ばっちこい！」
「その意気だ」
　球を軽く放り投げ、鋭く振り抜く。打球は矢のように、恵から少し離れた位置へと向かっていった。捕れるか捕れないか、本当にギリギリのコースだ。恵が秋人の真意に気づいたのか、困ったように笑い、打球の飛来するコースへ向かう。
　しかし、打球の方がわずかに早い。
「意地悪だなぁっ……！」
　軽く舌打ちし、恵が横っ飛びした。
　その手足を限界まで伸ばす恵。長い黒髪が宙に広がり、額から流れ落ちた汗が地面に小さく染みを作る。
「いっけぇぇぇぇっ！」
　パシッと小気味良い音が響き、白球はその姿を恵のグラブの中へと消した。


「お疲れ」
「ひどいよ秋人……。もぅ」
「う……」
　ぺたんと地面に座り込み、瞳を少し潤ませながら恵が口を尖らせた。その姿に秋人は少し言葉が詰まる。昔から、秋人は女性に弱いところがあった。恵は女性でないのだが。
「すまん……、が、お前の実力はわかった。改めてよろしくな」
「うん……。よろしくっ」
　秋人と恵は、共に笑いあいながら手を取り合った。

　成美高校野球部、五人目の部員の誕生である。


　試合可能人数まで、残り四人。

----    </description>
    <dc:date>2009-10-23T22:19:33+09:00</dc:date>
  </item>
    <item rdf:about="http://www19.atwiki.jp/narumi/pages/19.html">
    <title>第一章</title>
    <link>http://www19.atwiki.jp/narumi/pages/19.html</link>
    <description>
      ＊＊第一章　始動！　成美野球部
[[本編]]&gt;[[第一章&gt;始動！　成美野球部]]　
----
|話数|タイトル|
|[[第一話]]|一条叶|
|[[第二話]]|城崎秋人|
|[[第三話]]|姫島桜|
|[[第四話]]|村上武志|
|[[第五話]]|宇城恵|
|第六話|駒田俊明|
|第七話|東屋龍太郎|
|第八話|神ヶ谷優介|
|第九話|姫島梓|    </description>
    <dc:date>2009-10-23T22:16:32+09:00</dc:date>
  </item>
    <item rdf:about="http://www19.atwiki.jp/narumi/pages/29.html">
    <title>第四話</title>
    <link>http://www19.atwiki.jp/narumi/pages/29.html</link>
    <description>
      [[本編]]&gt;[[第一章]]&gt;第四話
*第四話
----
「時は放課後、一条叶と城崎秋人の計二人しかいない野球部に、入部希望者が現れた。
　姫島桜と名乗る金髪ツンツン頭の彼は、入部する代わりに部長の座を寄越せと叶に迫る。
　だが、負けん気の強い叶がその提案を了承しようはずもなかった。
　一触即発の雰囲気になりかける二人。我関せずのスタンスを貫く秋人。
　そんな中、彼らに一筋の光明を見出させたのは、野球部顧問、館山葉月であった。
　彼女は言う。『野球で勝負をつけなさい』と……。
　かくして、部長の座を賭けた実に下らない争いが、幕を開けようとしているのであった！」
「あれ、お母さん、何してるの？」
「あら、吉野。私がやってるのは前回のあらすじよ」
「何で？　そんなの地の文で良いじゃない」
「……良いわよね、レギュラーは」
「え？」
「出番が……私だって出番が欲しいのよ！」



　キャッチャーマスク越しに叶を見ながら、秋人は桜への対策を考えていた。
　桜は左打者、対する叶も左投手である。一般論で言えば叶の方が有利だ。投手の聖域とも言われる外角低めを有利に使えるというのは、非常に大きい。
　だがしかし、こちらには桜の情報が全くないのが痛い。先ほどのホームラン宣言及び、『四番を打っていた』という言葉からパワーヒッターであることを想像するのは難くないのだが、果たしてそれが正しいかどうかもわからない。
　とはいえ。
（……俺としてはどちらか部長でも構わないんだがな……）
　叶が部長になろうと、桜が部長になろうと秋人は別にどうでもよかった。
　真面目にやらないのであれば、即刻蹴落とせば良いだけの話だからだ。
　この城崎秋人という人物、案外考えることがえげつない。
「よーっし！　城崎、準備は良いかー！」
「ああ」
「よし、行くぜ姫島！」
「きやがれチビ助」
　叶が不敵に笑い、桜を挑発する。桜もまた、獰猛な笑みで返すのだった。
（……ま、投手の力を引き出すのが俺の仕事だしな）
　桜の後ろ姿を見つつ、秋人は頭の中で浮かんでは消える投球コースを吟味する。
　内角、外角、高め、低め。様々なコース、球種が浮かんでは消えてゆく。
　最終的に秋人が要求したのは、内角高めのボール球だった。まずは様子見から始めることにしたのだ。
　ボール球に手を出すならそれでよし、あの小柄な体から繰り出されるファストボールでビビってくれるならそれもよし。
（さて、どう出るか……）
　叶は秋人のサインに頷き、振りかぶった。右足を上げ、左腕を勢いよく振り下ろす。
　その手から放たれるのは百六十センチ足らずの体から繰り出されるとは思えない速球である。
「……っと」
　パシッと小気味よい音を響かせ、秋人が捕球した。彼の後ろにいる葉月が、ボールを宣告する。
　首筋から拳三個分ほどのところを掠めるような球を避けた桜は、体勢を整えた後に感嘆の溜息を漏らした。
「ほぉ……チビ助、見直したぜ。まさかそんなちまっこい体からこんな球投げるとはよぉ」
「へっ、驚くのはまだ早いんだな、これが」
（……頭近くに速球が来ても大して怖がってない、か。肝っ玉が座ってるな）
　少しは怖がってくれるかと思っていたのだが、特に効果はないようだ。
　やれやれ、と心の中で嘆息しつつ、秋人はもう一度コースを考えた。現在のカウントは０－１。
　カウントが０－２になるのだけは避けたい。
　これは、打者にとっては色々出来る素晴らしい状況だが、バッテリーにとって見ればかなり嫌な状況であるからだ。
　しかし、叶のコントロールを考えてみると……、
（……十中八九、ボールだろうな……）
　先ほどの投球も、秋人の要求したコースからかなり外れている。
　一度内角に投げているので、次は外角を攻めておきたいところだが、叶のコントロールでは外角に投げさせても上手く入る確率は低いと言えるだろう。
　いくつかの結果を予測し、結局秋人が決めたコースは内角、桜の胸元を抉るようなシュートだった。
（シュートねぇ……了解）
　先ほどと同じモーションの後、叶の手から、白球が放たれる。

「やべっ！」

　同時に叶の焦ったような声。そして、秋人の呻き声。
「逆玉――！」
「もらった……！」
　叶が投げた球は秋人の要求したコースとは逆の、外角高めへと向かう。
　それも、力の抜けた、いわゆる棒玉である。
　マウンドにいる叶の視界には、先ほどとは比べものにならないほど獰猛な笑みを浮かべた桜の貌が映る。そして、叶は自身の敗北を決意した。
「どっせぇぇぇい！」
　桜が大きく踏み込み、そして豪快にバットを振るう。彼のバットが辺りの空気を切り裂き、彼の後ろに座る秋人は思わず片目を瞑った。
　
　ブゥン、と風を大きく切る音。

「ストライク」
「あれ？」
「え？」
「……あ」
　葉月の宣告に、三者三様の反応を見せる。
　大きな当たりを確信した桜は手に握られているバットを凝視し、叶は青空の向こうまで飛んでいくと予想していた白球が見当たらないことに首を傾げ、白球が自身のミットに収まるとは到底予想もしていなかった秋人は、視界に映る叶の間抜けな顔に目を奪われていた。
　全員の予想を大きく裏切って、桜は空振り。
　叶がストライクのカウントを一つ取ったのだ。
「運が良いというか何というか……」
「何だと城崎！　これも俺の実力だ！」
「そうだな、運も実力の内だな」
「おいこら姫島ぁぁ！」
「仲が良いのは結構だけど、とっととやりなさいな」
　葉月の言葉に、三人は対決モードへと移行した。

（……さて、１－１だ。もう一度、ストレートで攻める。外角低めに、直球だ）
（任せろ）
　サインを出して、頷きあう。
　三度目、叶が振りかぶって、ボールをリリースする。
「ちっ、くそっ……！」
　左投手の投げる外角低めは、左打者にとってかなり打ちにくいコースである。それに加え、地方大会レベルで考えればかなり早い部類に入る叶の速球が組み合わされば、桜には少々分が悪い。
　見逃し、ギリギリのラインを通って「ストライク」の宣告。
　秋人は思わず溜息を吐いた。
「……後一本だけど、心臓に悪いな……」
「何でだよ！」
「制球力がな……」
　先ほどの投球は叶のコントロールを考え、コーナーからは余裕を持ってミットを構えていたのだが、その結果ストライクかボールか非常にギリギリなラインなのだ。
「いつの間にか追い込まれてんなぁ……」
「どうだ？　俺が部長で良いだろ？」
　バッターボックスの外で大きく欠伸をしながら、桜がのんびりと口を開く。
　ツーストライクの状況で気を良くしたのか、胸を張りつつ叶は桜に応じるが、彼はさして気にした様子もなく、バットを構えた。
「とりあえずわかったのは、お前がノーコンだってことだ」
「うるせー！」
「だから、まだチャンスはある」
（……その通り）
　桜の言葉に、秋人は心の内で首を縦に振った。

「ボール」
「ぐ……」

「ボール」
「んぐぐぐぐぐぐぐぐぐ……！」

「というわけで、ツーストライクスリーボールなフルカウントだが」
　マウンドの上で顔を真っ赤にして歯ぎしりする叶を宥めつつ、秋人はゆっくりと言葉を紡いだ。２－１の状況から一転して、二連続ボール。２－３のフルカウント、ボールが出れば叶の負け、ストライクに入ったとして、空振りに切って取らねばやはり叶の負けとなる。
　何でこんなアホな条件にしたんだと瞳が微妙に潤んでいるような叶を見て、秋人は溜息を吐く。
「……おい、一応言っておくが、泣くなよ」
「泣くかっ！」
「それなら良いが……、どうする？」
　秋人は、視線をバッターボックスで素振り中の桜にやった。
　マウンドに秋人がやってきたのは、何も叶を慰めるためではない。
　この後、どう桜に対するかを相談しに来たのだ。
「……お前考えろ」
「一条、これはお前の勝負なんだが」
「だって、わかるわけないだろ！　どうせ俺はノーコンなんだからさ！」
　秋人から少し距離を取り、叶は彼を睨み付けた。
「ガキか」
「うるさいうるさいうるさぁぁぁい！　どうせ俺はガキだよちくしょー！」
「まあ、ホントのガキだったら魔球とかに頼るんだろうけどな……。ん？」
「なんだよ」
　急に首を傾げた秋人を、叶は胡乱げな瞳で見つめる。
「お前、確か俺に一つだけ持ち玉を見せてないよな」
「……あ」
　間抜けな声で、叶は頷く。自分の持ち玉を把握できないほどにショックだったかコイツはと、秋人は本日何度目かすらわからない溜息を吐いた。
「それ投げろ。もうどうしようもない」
「え、ちょっと……」
「勝ちたいか、勝ちたくないかだ。勝ちたいなら投げろ」
「…………うん」
「よし。で、球種は？」
「……ふふふ、必殺技の名前は味方にも秘密なんだぜ！」
「そういうもんかね」
　先ほどとは打って変わり笑顔を見せる叶に、秋人は微笑んだ。

「作戦会議は終了か？」
「ああ。終わった」
　キャッチャーボックスに戻った秋人に、桜が声を掛ける。
　彼の言葉に頷き返し、秋人はマスク越しに叶を見据えた。
　先ほどの弱々しげな雰囲気はどこかへ飛び去り、その瞳は闘志の炎に燃え上がっている。
（良い感じだな。投手はこうでないと）
「それじゃ、とっとと始めちゃいなさい」
　審判である葉月の声に、秋人と叶の二人は頷き、桜はバットを握りしめる。
「行くぞ、一条」
「任せろ」
　球種は、秋人も知らない、叶の決め球。
　叶が大きく振りかぶり、右足を踏み込み……そして――

「はぁッ！」

　――腕を振るった。
　叶の手を離れ、白球がミットに吸い寄せられるようにやって来る。
　その速さは、ほぼファストボールと同じ。まだ、違いは見受けられない。
　が。
（なるほど、確かに決め球には持ってこいだ……！）
　秋人には、その球種が何なのかがわかっていた。
　彼の瞳には、叶の球の軌道が映っている。そう、それは昔、何度も受けた決め球――。
「また直球か……流石に、目は慣れてるぜっ！」
　桜が、引いたバットを振るう。
　横から見れば、直球のやって来るコースちょうどを、上手く叩いているように見えるだろう。
　しかし、それは違う。球は、バットに当たらない。
「な……！？」
（振った！　バットの軌道はボールの上……一条の決め球、それは……）
「フォークボールだよ、ざまあみろ！」
　球は、桜の手元で鋭く落ちた。
　そしてそれを、秋人がキャッチして。



　判定はストライク。
　この瞬間、秋人と叶の勝利が決定した。



「というわけで姫島。お前には入部してもらうぞ。ヒラで」
「わぁったよ。別に入らないなんて言わねぇよ」
「まあ、言った瞬間お前を廊下で見かける度に桜って呼ぶから良いけどな」
「やめろ。ぶち殺すぞ」
　本当に不機嫌そうな顔で、桜が顔を背けた。
　こいつなりの照れ隠しなんだろうなと、秋人は思う。
「……で？　他の部員は？」
　桜は辺りを見回し、叶に尋ねる。
　ああ、こいつは野球部の現状を知らないんだっけと一人納得し、叶が得意げに説明を始めた。
「部員は、俺とお前、そして城崎の三人だけだ」
「……」
「……なんだよ、黙って」
「このクソチビがああああ！　野球どころかバスケすらできねぇじゃねえか！」
　桜が激昂した。
　ただでさえ逆立っているような髪の毛はさらに逆立っているようで、叶は小さく、「ひっ」と声を漏らしてしまう。
「まあ待て、落ち着け桜」
「おい城崎テメエ！　誰が名前で呼んで良いっつった！」
「……ああ、悪いな姫島。とりあえず落ち着け」
　秋人が、グラウンドで暴れかねない桜を宥めるために声をかける。
「三人ってテメエ、野球できねえじゃねえか」
「出来ないよ。だからこそ、勧誘するんだ」
　静かな声で、秋人は桜を諭すように言った。
　その態度に思うところがあったのか、桜も少しおとなしくなる。
「……ん、だが、勧誘っつってもな……、ウチは元女子校だぞ」
「それでも男子はいるだろ。馬鹿か桜」
「その名前で呼ぶんじゃねえよクソチビが！」
「チビじゃない！　ちゃんと平均すれすれだよ！」
「それがチビなんだよチビ！」
「むぅぅぅ！」
　この二人はどうやっても反りが合わないらしい。
　秋人は短くため息を吐いて、ゆっくりと口を開いた。
「はいはい……、とりあえず、これで三人になったんだが、どうする気だ、部長」
「勧誘！」
「で、それぞれが勧誘するって事で良いのか」
「そうだな……。とりあえず今いるウチの男子生徒全員を野球部に加えるぞ」
　無茶があるだろと内心突っ込んだが、秋人は口に出すのはやめにした。
「桜、やれるな！？」
「俺を誰だと思ってんだ？　だがその前に名前で呼ぶな」
「……桜桜桜桜桜」
「クソチビぃぃぃぃぃ！」
（ダメだこいつら）


　自分が頑張るしかないか、と秋人は一人頷いた。


「一人捕獲したぜー」
「早いな……」
　翌日、部室（という名の体育倉庫）でジャージに着替えていた秋人は、満面の笑みでドアを開けた桜の言葉に動きを止めた。
「ほれ、挨拶しろ」
「は、はははは、はいっ」
「どもってんじゃねえよアホ」
　バシッ、と乾いた音が倉庫に響く。桜が、連れてきた男子生徒の背中を叩いたのだ。
　本人としては軽い力で叩いたのだろうが、不幸な男子生徒は涙目になっている。
「ぼ、僕……、村上武志です……」
「一年Ｄ組、俺のパシリだ」
「パシリって……。まだ入学して一週間も経ってないぞ……」
「は、はい……。仕方ないんです、僕は所詮パシリパシリパシリ……」
「うじうじしてんじゃねえよドアホ」
「うわあっ！」
　桜の拳骨が飛ぶ。
　ひどすぎる。秋人は内心で村上に同情した。　
「……と、その前にだ。村上は、野球経験者か？」
「や、やったことないです……」
「そうか。……さて、どうしたものか」
「なに、俺がビシバシ鍛えてやるよ」
　秋人の言葉に、桜が胸を張って答えた。
　すぐ隣の村上の顔がもの凄く沈んでいるのはこの際気にしないことにしよう。
　秋人は良くも悪くもドライな人間であった。
「遅れたーっ」
　部室のドアが開き、叶が顔を覗かせる。
　秋人、桜の順に目をやり、その視線は村上で止まった。
　可哀想に、村上はこれ以上ないほどに怯えている。
「ひぃ……」
「お前。入部希望？」
「は、はひ……」
　強制入部である。
「よしきたっ！　俺、一条叶！　よろしくな！」
「え、あ、は、うん……」
「はっきりしろっての」
　ズビシッと、桜が村上の背中をはたく。
　あうっと情けない声を出し、村上はおずおずと自己紹介した。
「村上ね。野球経験は無し……。まあ、贅沢言ってられないし。頑張ろうな！」
　ニコニコと眩しいほどの笑顔を見せる叶に、村上の心は少し救われたという。
----    </description>
    <dc:date>2009-10-23T22:13:09+09:00</dc:date>
  </item>
    <item rdf:about="http://www19.atwiki.jp/narumi/pages/28.html">
    <title>ただの妄想</title>
    <link>http://www19.atwiki.jp/narumi/pages/28.html</link>
    <description>
      ＊妄想
----
どこか人をくったような態度の主人公。
助っ人として様々な商店街野球チームの試合を動かしてきた彼は、ある試合で同じく助っ人を務める少女に出会う。
何故か主人公を目の敵にする少女。
「かっ飛ばしてあげるから、早く来なさい！」
主人公が投げた球は川の向こう岸まで届く大ホーマーになってしまう。
沸き立つ相手ベンチ、消沈する味方ベンチ。
悪びれもせずに球場を後にした主人公を待ち構えていたのは先ほど自分からホームランを打った少女だった。
「どう？　ざっとこんなもんだけど」
「何がどうなんだい？」
「甲子園に行けるかどうか、よ」
少女は不敵に笑い返すのだった、まる

あれ、よくわからないお話だな
----
・登場人物

・瀬倉恭一　（せくら　きょういち）　二十四歳
元は甲子園を経験したこともある凄腕のピッチャー。
とある球団に指名されるはずだったがドラフト会議当日にその球団がいきなり翻意、違う選手を指名したために普通に大学へ。
プロの世界に入る手段はいくらでもあったし、彼の実力なら可能性がないわけではなかったが彼曰く『面倒だしいいや』らしく、商店街の喫茶店でのんびりと働いている。

・皆川亜矢子　（みながわ　あやこ）　十七歳
地元の名門成美高校に通う高校二年生。セカンド。
かつて創部二年目にして春のセンバツ優勝を成し遂げた先輩達に憧れており、既にレギュラーの座を勝ち取っている。
恭一のことも知っており、彼にコーチして貰うためにわざわざ勝負を挑んだ。
熱血タイプ。気付けば恭一に惹かれていたとかそういうオチ。    </description>
    <dc:date>2009-01-12T19:10:00+09:00</dc:date>
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    <item rdf:about="http://www19.atwiki.jp/narumi/pages/15.html">
    <title>短編・ミニストーリー</title>
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    <description>
      ＊サイドストーリー
----
|題名|備考|
|福士野球部奮闘記|福士高校メイン・不定期更新|
|偽りの左腕|本編の過去話・不定期更新|
----

＊短編
----
|題名|備考|
----


＊楽屋ネタ
----
|題名|備考|
|[[光跡劇場～城崎と駒田がズバッとやります～]]|楽屋ネタ|
|光跡劇場～秋人と遍の今宵はアバンチュール～|楽屋ネタ|    </description>
    <dc:date>2009-01-12T01:10:39+09:00</dc:date>
  </item>
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